今回はヤギさんのお話ではなくウシさんのお話です。
先日、いつも診療で伺う農家さんから
「3か月の子牛が哺乳瓶からどうしてもミルクを飲んでくれなくて困っている」という相談を受けました。
お話をさらに伺ってみると、
・わけあって母牛をセリで3日前に手放した
・3日前までは、生まれた時からずっと母牛からおっぱいを飲んでいた
・まだ配合飼料で栄養が取れる量を食べれるようになっていない為、人工哺乳が必要
・3日前から毎朝と夕、それぞれ根気強く1時間くらい哺乳瓶に慣れさせるようにがんばったけど、
子牛さんはもう乳首もミルクも嫌がるようになってしまった
というお話でした。
とてもまじめな農家さんなので、相当な努力をされたことを感じました。
何とか良い方法がないかと、調べたところ、
「獣医師に直接聞きたい!繁殖管理のベストプラクティス」
という記事の中に人工の乳首を嫌がる子牛に哺乳させる方法として、「目隠しをする」
という方法が見つかりました。
https://farmnote.jp/contents/bestpractice7.html
この記事を参考に、4つの作戦を考えてみました。
さっそく農場へ行き農家さんと一緒にやってみることになりました。
いざ「おっぱい大作戦」決行!!
1.目隠し作戦
前述記事を参考に目隠しをしてみたらどうか。
やり方
・黒いマスクに最近吸っている未経産牛のにおいをこすりつける
・子牛をつなぐ
・マスクをかぶせて哺乳する
結果
目隠ししないより子牛が落ち着いている様子。
しかし、残念ながらこれだけでは飲んでくれませんでした。
2.乳首を変えてみる作戦
哺乳瓶の乳首は実際のお母さんの乳首より堅そう
→乳首をよりお母さんの乳首の感触に近づけたらどうか
やり方
・ドレッシングボトルに手袋をかぶせて柔らかい乳首を作る
・子牛に飲ませてみる
結果
お口には市販の哺乳瓶の乳首より入れやすいものの吸ってくれませんでした
3.ドレッシングボトルとホース作戦
やり方
・乳首がどうしてもだめならドレッシングボトルで口から飲ませる
結果
時間はかかりますが、少しづつ飲めました。
4.胃チューブでミルクを飲ませる作戦(緊急 最大1週間くらいまで)
チューブを入れられれば、簡単にミルクを胃に入れることはできますが、
チューブを頻回に入れることにより、食道が傷ついてしまうことや、
正常の哺乳の反射などがおこらないデメリットを考えて、こちらの作戦は緊急時のみとしました
やり方
・胃チューブでミルクを強制的にあげる
残念ながら、今回の子牛さんはどうしても乳首から吸うというのを頑なに嫌がっており、
目隠ししても、乳首を使って哺乳瓶であげることが難しいという結果になりました。
どうにか、ドレッシングボトルであげられそうなので、
農家さんのお母さまと息子さんで朝・夕、分担して頑張ることになりました。
それと同時並行で、配合飼料の量を少しづつ増やしていただき、栄養をこちらからもとれるようにしてもらうことになりました。
根気強く、牛のことをいつも一生懸命考えているお二人なので乗り切れると思います。
幸い、ここまで順調に育ってきた子牛さんなので体がしっかりしています。
無事、離乳できるまで、私たちもできるサポートはしながら見守っていきたいと思っています。
今回のことで、記事にもあった通り、和牛の子牛さんはとても頑固で、3か月からの人工哺乳はとても難しいことがわかりました。
しかし、母牛さんが突然亡くなってしまったり、様々な理由でどうしても人工哺乳が必要な場合があります。
今回の経験を今後に活かしていきたいと思いました。