山羊の診療note11 山羊の食餌と栄養

様々な野草と、手差し給与が有効です。
という記事を書きました。

そこで登場した島野草とお芋の茎の栄養成分をのせておきます。

*オオバギ
TDN 65.5
CP 16.4
NR 3.0
タンパクが多めです

*ガジュマル
TDN 56.0
CP 9.6
NR 4.8

タンパクと炭水化物のバランスがとれています

*バナナの葉っぱ
TDN 59.0
CP 15.7
NR 2.7

タンパクが多めです

*センネンボク
TDN 68.9
CP 8.6
NR 6.9

炭水化物が多めです

*センダングサ
TDN 57.7
CP 12.6
NR 3.4

タンパクが多めです

*サツマイモの茎と葉っぱ
TDN 64.0
CP 13.0
NR 3.9
タンパクが多めです。

 

*草の栄養で使われる略号

・CP=粗タンパク    (主にタンパク質の指標)
・TDN=可消化養分総量 (主に炭水化物の指標、CPと炭水化物が混ざっている)
・NR=栄養比 (TDN-CP)/CP

→ヤギでは4.5前後がバランスが良い

値が低いと・・・タンパクが多い

値が高いと・・・炭水化物が多い

栄養学は、英語の略語も多く、少し頭がこんがらがると思います。
まずはじめは、難しく考えず、草を2種類以上あげてみてください。

お家のヤギさんの好きな草を見つけてみましょう。

1種類の草だけで栄養バランスをとるのは難しいけれど、
配合飼料やいくつかの草を組み合わせると

ヤギさんのごはんのバランスが取れますよ。

院長追記>>

飼料設計のガイドになると思うので、ヤギの栄養について詳しい説明のあるページを載せておきます。

ノースカロライナ州立大学のページです。
https://content.ces.ncsu.edu/nutritional-feeding-management-of-meat-goats

ヤギは牛ほど効率よく細胞壁を分解できません。なぜなら食物がルーメンに滞在する時間が短いからです。加えて、消化管のサイズが要求量に対して小さいので、牛より高栄養の飼料を必要とします。牛と比べて体重当たり約2倍の栄養を必要とします。

ヤギは低木類の枝を避けて葉のみを選ぶことができるので、比較的高タンパクの部分のみ食べることができます。また味はあまり気にせず、タンニンを含むものも解毒して食べることができます。

ヤギの栄養要求量自体は他の反芻獣に比べても非常に高いものですが、ヤギはその中から高品質の部分を選びとることができるので、低品質の飼料が多い場合でもよく耐えることができます。

とのことでした。

山羊の診療note10 山羊の島野草セット

山羊の診療note10 ヤギの島野草セット

ここ最近、分娩前のゆりるちゃんがが下痢と食欲不振で治療を続けていました。

基本の治療を行ったもののなかなか改善されず、食欲が日に日に落ちてきて飼い主さんもとても心配されていました。

どうにかゆりるちゃんにごはんを食べてもらおうと、私たちの住む島に生えている野草でヤギさんが好きなものを集めて診療の時に持っていきました。

ヤギの島野草セットです。

今回用意した島野草は

がじゅまる

バナナの葉っぱ

センダングサ

センネンボク

オオバギ

ハイビスカス

食欲がない動物にごはんを食べてもらいたいときは、与え方に小さなコツがあります。

食べやすいように小さく切ってあげて、手でお口の前までそっと差し出してあげると、
ただ目の前のお皿に置いておくだけより食べてくれることがあります。

手の平に乗せる、手でお口の前に持って行ってあげる・・・
手であげるのがポイントです。

この手であげるごはんの上げ方は、犬と猫の病院で働いているときに先輩の女性の獣医さんから教えていただきました。
そして、特に飼い主さんにお願いすると動物も安心して食べるようです。
(犬や猫のごはんの場合はさらに温めて匂いをたててあげると良いです)

ある時、入院したヤギさんに思い出してやってみたら、特にガジュマルの新芽の小さい葉っぱを手であげると1枚づつ食べていました。。
やはり元気がないときは大きい葉っぱは食べにくいようでした。
またある時は、1枚食べ始めるとそこから食欲が出てくるヤギさんもいました。

この経験から犬猫だけでなくヤギさんにも効果がありそうなので、食欲のない場合、診療中に私がやってみて飼い主さんにお願いしています。

ヤギさんによってそれぞれ好みの葉っぱが違ったり、昨日までは好きだったのにの急に違うものが食べたいヤギさんもいるので、食欲がないときには何種類かの草を試してみると良いと思います。

今回もゆりるちゃんに一つずつお口の前に持っていってあげてみました。

どの葉っぱが好きかな?

人気の小さなガジュマルの葉っぱはどうですか?

「食べたくない」

センダングサのお花はどうですか?葉っぱもおいしいけど
病気の時はお花ばっかり食べる子がいましたよ。

「食べたくない」

せんねんぼくはどうですか?
しゃきしゃきのはごたえですよー。

「はじめて食べるからちょっとだけ。
でもそんなにいらない。

少しだけたべてみる。

ハイビスカスは全然食べたくない。」

では、最後にオオバギは?

葉っぱが大きいから小さくすると、少しずつ食べはじめました。
なぜか、葉っぱよりも茎が好きな様子。

点滴の治療が終わると、少し気分がよくなったようで、茎と今度は乾草を少し食べてくれました。

わたしが帰った後、近所の方がお芋のつると葉っぱをもってきてくれて、
ゆりるちゃんは少し食べはじめたとのうれしい知らせが届きました。

基本の下痢の治療、輸血・輸液の治療の効果、そして好きな草もみつかり食欲が戻って本当に良かった。

ゆりるちゃんは今回、茎を好んで食べてくれました。

この後、ゆりるちゃんは出産に挑むことになりますが、このお話はまた改めて。次回はヤギの栄養の話をします。

〉〉ゆりるちゃんは島の民宿のヤギさんです。

あがりの宿さんさーら公式ホームページ

 

山羊の診療Diary症例28 難産 (頭位屈曲位)

山羊の診療Diary28 難産 (頭位屈曲位)

今回の症例は…
ゆうきさんから、山羊のメリーちゃんが
「はじめの子山羊が生まれた後、風船のようなものが出てから2時間経っても状態が変わらず
2頭目がいるかもしれないがでてこない」という連絡が来ました。
第1子目は順調に生まれたとのことです。
すぐに、牧場に向かいました。
到着後、まずメリーちゃんの様子を確認しました。


はじめに、乳房の付け根を持ち上げて、子山羊がもう1頭お腹にいるか確認しました。
お腹に子山羊が入っていることが確認出来ました。
(詳しくは妊娠鑑定を参照にしてください)
引き続き、陰部の汚れをお水で洗い流し、直腸検査用の手袋をはめて陰部から内診を行いました。手を入れてはじめに子山羊さんの「あし」が触れました。この時にこの「あし」が前肢なのか後肢なのかを確認します。確認の仕方は関節を触って確認します。
後肢のときは飛節が触れます。

注意
蹄の向きだけで判断すると診断を誤るので、必ず関節を確認するようにしてください。

下胎向の場合(上向きで万歳している状態)前足を後足と間違えてしまう事があります。

メリーちゃんの場合、触診で前肢であることが確認出来ました。しかし、頭が、頚が曲がって横向きになっていることがわかりました。この体位を「頭位屈曲位」といいます。

頭位屈曲位とは・・・
頚が曲がって横を向いて、前肢だけが出てきている状態をいいます。
通常だと、子山羊さんは前肢と前肢の間に頭が挟まれて、前肢と連動して頭も出てきます。
しかし、前肢だけでてきてしまい頭が横向きになっていると、頭が引っかかって生まれることができない状態になります。
そのため、頭を前肢の間に戻す必要があります。

内診で、頭位屈曲位であることがわかったので、子山羊さんの頭の位置を戻すために分娩介助の準備をしました。
消毒液に頭や肢を引っ張るロープを浸しました。牛ですと産科チェーンを使いますが、山羊では洗濯用のロープを使用しています。

そして、準備が出来たので、分娩介助をはじめました。
前肢2本はすでに陰部から出ていますが、このままでは一番狭いところに。横に曲がった頭があるため頭の向きを直すことが出来ません。
一度、前肢と頭を奥へ戻す必要があります。
奥のスペースのあるところに、肢と頭を押し戻したら、そこで頭の位置を直します。
頭を前肢と前肢の間にのせます。ここまできたら、頭の上に手を添えながら両前肢をお母さん山羊のいきみに合わせてゆっくりひきます。(産道が狭くて頭の上に手を添えられないときは、頭の位置を整復できた時点で頭の後ろから口にロープをかけます)

この症例では、子山羊さんの頭がなかなか前肢の間に戻せず苦労しました。
なんとか、位置を正常に戻せ、両前肢を頭の上に手を添えながらひいて、
無事に生まれました。

1頭目の子山羊さんは男の子で2頭目の子山羊さんは女の子でした。
お母さん山羊さんが疲れていてので、初乳を絞って、元気な男の子にはほ乳瓶で、
後から生まれた女の子ははじめに人工呼吸をおこない、吸う力が弱く飲まなかったので経鼻チューブで初乳をあげました。


また、頚が生まれた後も、曲がっていてうまく立てなかったので、ゆうきさんが
頚にサポーターを巻いたところ次の日には自分で経って、おっぱいも飲めていたとのことでした。

難産は、時間との勝負でとても緊張する診療です。
山羊は安産が多いといわれていますが、このように難産のケースがあります。
お産が通常どうり進まない場合はすぐに獣医さんに連絡してくださいね。
(あらためて正常なお産について記事にしたいと思います)
無事に生まれた2頭の子山羊ちゃんをみて、
ほっとするとともにとても幸せな気持ちになりました。
ふたりとも元気におおきくなってね!!

山羊の診療Diary症例27 乳頭損傷②

山羊の診療Diary症例27 乳頭損傷②

今回の症例は…
飼い主さんから「子山羊の鼻におっぱいを飲んだ後、血がついている。母山羊のおっぱいに傷があるかもしれないからみて欲しい」と連絡がありました。
山羊舎に伺うと、子山羊さんが元気におっぱいを飲んでいました。
そして、おっぱいを飲み終わった子山羊さんの顔を見ると・・・

お口が血で真っ赤に!!
これは大変です。すぐに子山羊さんを捕まえて、離れたところに縛って診療の間、待っていてもらうことにしました。
そして、母山羊さんを繋いで診療をはじめました。
飼い主さんにお話を伺うと、
この母山羊さんはセリで導入して、年齢や産歴は不明とのことでした。セリの時におそらく妊娠しているだろうと元の飼い主の方に言われたそうです。
そして、2ヶ月前に一度、飼い主さんから「おっぱいが異常に大きくなって心配」と連絡をいただき診療に伺いました。その時は、確かにおっぱいは大きくなっていましたが乳房や
乳頭に異常がなく「出産前でおっぱいが大きくなっている」というお話をしました。そして、その次の日、出産して1頭の子山羊さんが生まれたとのことでした。
母山羊さんを繋いで診察してみると・・・

全身状態は良好、体温は39.2度、肺音、心音も異常はありませんでした。
そして、乳房を見てみると右側の乳房はしぼんでいましたが、左側の乳房は張っていました。
その左側の乳頭の上の皮膚に直径2cmくらいの円形の傷がありました。

今回のこの症例も乳頭損傷と診断し治療をしました。
(乳頭損傷に関しては山羊の診療Diary症例26を参照にしてください)

治療は、症例26よりも傷口が大きいので場合によっては外科処置(傷をデブリードマンをして縫合する)
も考えられましたが、まずはヨード剤でで消毒して、抗生物質の注射を行いました。


そして、子山羊さんがおっぱいを吸って傷が悪化してしまわないように、
子山羊さんを離して飼育して頂くことにしました。
子山羊さんは、もう離乳しても大丈夫な体つき、そして飼料も草も食べているようでしたが、
場合によっては、人工哺乳をお願いしました。

その後、3日間治療を続け、傷がかさぶたになり治ってきたので、消毒を続けてもらい経過を観察することになりました。

前回に引き続き今回も乳頭損傷の症例でしたが、
どちらの山羊さんもおっぱいが大きく下に垂れ下がっていました。
このような山羊さんの場合、出産前のおっぱいが大きくなってくる頃から
自分で踏んでしまったり、または他の山羊さんに踏まれないように、
山羊舎の環境を整えてあげること(狭すぎないか、頭数が多すぎないか、乳房を傷つけるような鉄線がないか等)や
場合によってはブラジャーを作って擦れて傷がつかないようにすることが予防につながると思います。

その場で処理する習慣

その場で処理する習慣。

目に止まったことを、その場で解決して、頭の中から全て消し去ってしまうように心がけている。

そして次のアクションは、その行動の結果から自分の目の前に現れる仕掛けをしておく。

例えば、必要なものがあったときに、その場でアマゾンから発注してしまう。

発注した事は忘れていても、しばらくすると荷物の到着により次の仕事がスタートするように。

例えば誰かから何かをの質問を受けたときに、その場で調べてしまう。または、その場で調べて伝えられる形にまでしてしまう。

そしてそれを、次にその人と会うタイミングの予定表に書き込んでしまう。

覚えておかなければいけないとか、次回に持っていかなければいけないものがあるときは、予定表に書き込んでしまう。

とにかく一度に覚えていられる数には限りがある。そしてその数を超えると、古い方から押し出されて忘れてしまう。

だから、次に思い出すポイントを作ってしまうか、その場でできる事を可能な限りやってしまう。

そうして、自分の頭にものがいっぱいになってしまうのを防いでいます。

どんなに気をつけてても、どうせ一度にいくつも覚えていられないんだから。

プルプルプル

「はい、あ、すみません。今日行く予定でしたっけ?

急いで行きます。」

それでも、予定に入れるのを忘れてしまうと、完全に忘れてしまうのをどうしたらいいのか考え中です。

第21回日本山羊研究会で発表しました!

2020年3月25日(水)に開催されました第21回日本山羊研究会で発表をしました。

本来は京都大学での開催でしたが、コロナウィルスの影響で「ZOOM」というシステムを使用したWEBでの開催となりました。

私たちの病院からは2題発表しました。

・小動物病院と一緒にできる山羊の診療
~日本における山羊の診療体制の確立をめざして~

山羊がいつでもどこでも安心して診療が受けられるようになるには、大動物病院だけでなく小動物病医院での受け入れが必要ではないかと考えています。そのために、診療手技やお薬、薬の薬用量、症例などを発表して山羊の診療体制の確立の一助になればという想いから発表しました。

・山羊のルーメンアシドーシスの事例報告
~沖縄県宮古島において1年間に診療した山羊の病気~

山羊のルーメンアシドーシスを3例の症例発表です。原因として飼い主さんの飼養管理の失宜により容易に発生する病気です。早期発見と牛の治療を準用した治療で回復したので治療法をご紹介しました。

山羊の研究者のみなさんや獣医さん、社会学の研究者の方のお話など「山羊」をキーワードに
様々な分野のお話が聞けて、とても楽しく勉強させていただきました。また、私たちの発表にも、いろいろなご意見やご質問をいただきありがとうございました。
今後の診療に役立てていきたいと思っています。
発表に関することでご質問がございましたら、ブログのコメント欄からお気軽にご連絡ください。

山羊の診療Diary症例26 乳頭損傷

山羊の診療Diary症例26 乳頭損傷

今回の症例は・・・

飼い主さんから「前回の出産の時、ひどい乳房炎になった山羊が朝からおっぱいを蹴って
痛そうにしている」という連絡がありました。

早速、診療に伺うと4月はじめに出産予定のボーボちゃんが、おっぱいを蹴り蹴りしながら山羊舎の中でたたずんでいました。

飼い主さんにお話を伺うと、前回の出産の時に乳房炎になったのでまだ産前だが心配になって連絡をいただいたとのことでした。
食欲と元気は変わらないとのことです。
ボーボちゃんを外に出していただき繋いで診療をはじめました。

お熱を測ると39.8℃で微熱がありました。全身状態は良く、健診での心音・肺音は異常ありませんでした。腹部触診と聴打診でも問題はありませんでした。そして、乳房の状態を診てみました。

はじめに乳房炎に感染していないか確認するために乳房の状態を確認しました。
出産後のおっぱいをあげていない時期でも、乳房炎にかかることはあります。
ボーボちゃんの場合もまだ出産前ですが、乳房炎に以前感染したことがあることから、
乳房炎の細菌がおっぱいの中に残っていた場合、産前やストレスがかかったときに乳房炎が再発する可能性がありました。また、まだ一度も赤ちゃんを産んでいない場合でも乳頭から細菌感染が起これば、乳房炎を発症する場合があります。
ボーボちゃんのおっぱいは、左右の乳房ともに熱感や硬結などの乳房炎の症状はありませんでした。次に乳頭を診てみました。

右側の乳頭は異常がありませんでしたが、左側の乳頭に傷があり、硬くなっていました。
触るととても痛がっていました。ボーボちゃんのおっぱいは大きく下に垂れている形のため、おそらく自分で乳頭を踏んでしまった可能性が考えられました。
以上のことから、乳頭損傷と診断して治療をはじめました。

はじめに傷口をヨード剤で消毒した後に抗生剤と炎症を抑えるお薬の注射をしました。
また、飼い主さんに様子を見ていただいて、乳頭が体のどこかにこすれている場合は、
乳房をおおって傷が保護できるようなブラジャーをつけてもらうように飼い主さんにお願いしました。

飼い主さん次の日ご連絡があり、だいぶ痛みが治まっているということでした。
抗生物質のお薬を処方して経過観察となりました。

*乳頭損傷について
乳頭損傷は乳牛で良く起こる病気です。しかし、山羊さんでも今回のように乳頭を自分で踏んでしまって起こることがありますし、乳用山羊さんではさらに起こりやすい可能性があるので乳牛の乳頭損傷を参考にして、山羊さん用にまとめておきます。

<乳頭損傷とは>
物理的、あるいは科学的な原因により起こる乳頭の障害をいいます。

<原因>
①物理的な損傷
・放牧地の有棘鉄線やワイヤーフェンスで傷つけてしまう
・密飼いや飼育する部屋が狭くて、自分でまたは他の山羊の乳頭を踏んでしまう
・寒冷感作により乳頭の先が傷ついてしまう
・搾乳機でおっぱいを絞りすぎてしまう
②化学的な損傷
・搾乳時の乳頭の消毒の時に消毒剤で皮膚が荒れてしまう

<症状>
皮膚が荒れているだけでも痛みがあります。痛みがあると気になり自分で蹴ってしまいさらに悪化することがあります。

また、傷の深さや場所によってはおっぱいを出すことに障害がでます。たとえば、乳頭の先端の傷では炎症から組織が厚くなり管が狭くなることで、おっぱいが出にくくなったり、乳頭管より上で乳頭が切断された場合はおっぱいが漏れてしまいます。こうした場合、搾乳や哺乳することが難しくなってしまいます。

<飼い主さんにできること>
・山羊舎にゆとりを持たせて自分で踏まないようにする
・1つのお部屋で適切な数の山羊を飼育する(他の山羊の乳頭を踏まない)
・削蹄をして蹄で傷つけないようにする
・乳頭の消毒剤は適切な濃度で使用する
・搾乳機のメンテナンスを行い、整備不良での絞り過ぎを防ぐ
・おっぱいが大きくて擦れてしまう場合は、ブラジャーを作って着せてあげる。
牛さんには牛用ブラジャーというのがあります。
私も山羊用を作ってみたいです!

<獣医さんの治療>
・傷の洗浄・消毒
・軟膏の塗布
(乳頭を保護するため、ただし殺菌作用のあるものでないと感染を広げる場合があるので注意)
・抗生剤の投与
・外科処置(乳頭管拡張、切開、縫合など)

島の「ほうき」と山羊のらぶちゃん

今日は私の住む島の「ほうき」をご紹介します。

私は、この島に来る前に雑誌の雑貨特集でこのほうきをみて一目惚れ。
まるいフォルムがかわいい。
島に住んだら是非使ってみたいと思っていたのでした。

しかし、実際町中で使っている人は見当たらず。
販売しているお店も、少し装飾のあるほうきがお土産屋さんにあるのをみかけただけでした。

いったいどこにあるのかなぁと頭の片隅にいつもありました。

牛の診療にまわりはじめると、牛舎にかかっているのを発見。

このほうきは「すすき」でできていることがわかり、昔はどのお家でも自分で作って使ってたと
お話を伺うことができました。

そしてなんと身近に作れる人がいました。

ゆうきさんもゆうきさんのお父さんも作れるとのこと。

ススキを集めてきてお願いして作っていただきました。

お散歩帰りの山羊のらぶちゃんも興味津々。


作り終わるまで、ときにお口でぱくぱくすすきを引っ張って、おじゃま虫をしながら
じーっと見学していました。

完成したのはこちら。

やっぱり、とってもかわいい。そして細かいゴミも掃くことができて実用的です。

そして、らぶちゃんをほうきで撫でてみるとなんだか喜んでいる?!
新しい使い方「山羊なでほうき」はどうでしょう。

今では、ほうき事態があまり使われなくなったり、ホームセンターに行けば安い値段で購入することができますが、
地域の知恵と伝統がつまったこのようなほうきはこれからも活躍してほしいなと思いました。
私もがんばって作れるようになろう!!

山羊の診療Diary症例25 産後の膀胱炎

山羊の診療Diary症例25 産後の膀胱炎

今回の症例は・・・

飼い主さんより「お母さん山羊が元気がなく寝てばかりいておしっこが赤い。おしっこが出にくく、苦しんでいるので診てほしい。」
という連絡がありました。
早速、伺ってみると、木の下に座り込んでいるお母さん山羊とその周りを元気いっぱいに走り回っている子山羊さんが2頭いました。

そして、少し遠くに強そうなお父さん山羊もつながれていて、こちらをじっと見ていました。体調不良のお母さん山羊がなんとか立ち上がると、子山羊さんたちが飛んできて、おっぱいを頭でぐいぐい押して飲んでいる状態でした。

まずは飼い主さんにお話を伺いました。
お母さん山羊の名前はキキちゃん。2歳。

今回2回目の出産とのことです。

1か月前に双子を出産して、ここ2~3日で元気がなくなってきたとのことです。食欲はあるが、赤いおしっこをしているようだとの事でした。

キキちゃんを診察してみると・・・
全身状態はかなり痩せていました。
眼や口の中の粘膜を見ると真っ白で貧血が疑われました。聴診で頻脈をおこしているのがわかりました。
お熱は39.1℃で平熱でした。
食欲はあるということでしたが、お腹の触診によりお腹いっぱいには食べられていないことがわかりました。

この時点ではおしっこを確認できなかったので血尿なのか、もしくは子宮に感染が起き子宮からのおりものなのかわかりません。また、尿閉といっておしっこが出ないのか、それとも頻尿で残尿感がある状態なのかわかりません。

そこで、直腸からのエコー検査を行いました。すると、膀胱は通常〜やや小さく、星空様のエコーフリー像が確認できました。つまり尿閉ではなく頻尿であり、膀胱内に浮遊物を伴う液体がある事がわかりました。

その直後、
真っ赤なおしっこが出てきました。


ここで一つ注意点があります。
赤い尿がすべて血尿とは限らず、例えばある種の中毒の時などは「血色素尿」という赤いおしっこが出るときがあります。そういった類症鑑別をするため追加で尿検査や血液検査など行う場合もあります。

今回は膀胱炎と仮診断し診断的治療を始めることにしました。

飼い主さんのお話、山羊さんの状態、検査などから総合的に診断しての治療になりますので「赤い尿=膀胱炎」ではないので獣医さんにご相談くださいね。

治療と経過
1日目
・抗生物質の投与、止血剤の投与、輸液
・子山羊さんのほ乳をストップ
(おっぱいは血液から作られるので、血尿が出て貧血状態にあるキキちゃんの状態での哺乳は身体に負担になります。
そこでキキちゃんが元気になるまでは人工哺乳をお願いしました。)
・栄養状態の改善のためにキキちゃんに配合飼料をあげてもらう。

2日目
・抗生物質の投与、止血剤の投与、輸液
・輸血
(おしっこへの出血、貧血の状態に変化なく、活力も改善されなかったので輸血をおこないました。同居の雄山羊さんから採血をして、
事前に輸血適合試験”クロスマッチテスト”を行い、問題がなかったので輸血ができました)

3日目
・抗生剤の投与、止血剤の投与、輸液
昨日まではメリーちゃんの状態がかなり悪く、最悪の事態も考えての治療だったのでお電話で元気が出てきたと飼い主さんからお話が聞けて少しほっとしました。 実際診療に伺いキキちゃんに会うと、 顔色も全身状態も昨日より明らかに良さそうで私たちもうれしく思いました。

4日目
抗生剤の飲み薬を処方
おしっこの色も改善し食欲元気も出てきたとのことで内服薬を処方し経過観察となりました。

勝脱炎の原因は確定することはできませんが、今回は、産後すぐから徐々に症状が出ていたので、出産後の陰部から排出される悪露が感染源になった可能性が高いです。

悪露は母山羊さんの勝眺炎や子宮炎などの感染の元になるだけでなく、子山羊さんの下痢の原因にもなりますので、 産後2週間を過ぎても悪露の排泄が止まらない場合は受診してください。

また、陰部から垂れ下がって落ちない胎盤は、 無理矢理引っ張らないでビニールなどで保護しながら母山羊さんの状態を経過観察します。 (症例24  胎盤停滞を参考にしてください)

産後は体力を消耗しているのでいろいろな病気にかかりやすい状態になっています。

ミルクを出すのにかなりのエネルギーが必要なので、この時期は配合飼料などを上手に使って、母山羊さんの栄養状態や体力が落ちないようにしてあげてくださいね。
牛では、出産後すぐにお味噌汁を飲ませるのも効果的なようです。ヤギにも応用可能かもしれませんね。

診療後記・・・
キキちゃんのふたごの仲良し子山羊さん。 キキちゃんの治療中、お母さんと離ればなれになると、1頭はとっても甘えん坊の子山羊さんで、
キキちゃんを呼んでずっーと、 めーめーめーめ一泣いていました。
もう 1頭の子は草をもぐもぐ食べてみたり、繋がれているロープで遊んでみたり。
子山羊さんも性格はそれぞれですね。
小さな子どもの頃、 みなさんはどちらのタイプでしたか??
ちなみにわたしは めーめータイプでした・・・強くなったのかな。
何はともあれ、キキちゃんが元気になってまたみんなでくっついて暮らせますように。

山羊サミット報告会と勉強会

地域の山羊流通生産組合さんより山羊の勉強会の講師依頼がありました。
去年の8月の勉強会に引き続き第2回目の勉強会です。
また、勉強会と合わせて、山梨の山羊サミット参加の報告会も
合わせて行いました。
ゆうきさん先生と私の3人で講師を務めさせていただきました。

勉強会の内容は以下の通りです。

①第21回 全国山羊サミット参加報告
「みなさん、山羊サミットをご存じですか?
年に1度、全国の山羊の研究者や飼い主さんなど山羊に携わる人たちが集まる会議があります。
今年度、ポスター発表という形で宮古島の山羊の診療や削蹄について発表をしましたので、報告します。」

*山羊サミットで得た全国の山羊の情報や課題をもとに今後私たちの住む地域の
山羊の生産がどのように発展できるかの提案を行いました。

②山羊の繁殖  2年3産を目指すには ~山羊の発情コントロールと妊娠鑑定~

「うちの山羊さん妊娠してると思ったら太ってるだけだった・・・
そんなことがないように山羊の繁殖について一緒に勉強しましょう!」

*山羊の繁殖の基本とさらにその先、2年3産を目指すために必要な発情コントロールのお話をさせていただきました。

③山羊の病気  山羊の胃腸の病気
「あれ?さっきまで山羊のごはんを美味しそうにいっぱい食べてたのに、
お腹がふくらんでぐったりしてる・・・大丈夫?!
さて、この山羊さんのお腹の中はどんなことになっているのでしょう?
山羊の消化と胃腸の病気についてお話しします。」

*山羊の胃と消化の仕組みの基本から、よく見られる胃腸の病気についてお話させていただきました。

たくさんの地域の山羊生産者さんたちとお会いできるので、山羊さんたちが健康に暮らす為に、このような機会に診療で得た知見を飼い主のみなさまに還元していきます。
勉強会では「わかりやすい」と「すぐ実践できる」を一番にお話させていただいています。講師の依頼はご相談ください。