*山羊の診療Diary  症例12  山羊の起立不能(初診) ~腰麻痺疑い~

*山羊の診療Diary  症例12 山羊の起立不能(初診) ~腰麻痺疑い①~

今回の症例は・・・

出産を1か月後に控えた山羊さんが立てなくなったという連絡が来ました。

みやちゃんは体重70kgくらいのおっきな山羊さんです。

まずはじめにみやちゃんのオーナーさんからお話を伺いました。
昨日から急に座り込んでしまい立てなくなってしまったそうです。
食欲と元気はあって、うんちやおしっこも問題ないということでした。
そして、一ヶ月後に出産を控えているとのことです。

診察をしてみると・・・

体温 39.5℃
咳やくしゃみなし
触診で肢に骨折やケガなどなし
右側の乳房腫脹
脱水 なし
聴診異常なし
腹部 妊娠により大きくなっている以外は膨満などなし
便確認 問題なし
陰部からの触診 外子宮口 指1本分開口

山羊さんが「立てなくなった」という症状があるときに考えられる病気は

・腰麻痺
・骨折や捻挫など後ろ脚の異状
・誇張症などの胃腸の病気
・感染症による発熱で全身症状が悪化している
・乳房炎

などがあります。

今回、みやちゃんの問診及び診察から、
腰麻痺が一番に疑われました。

腰麻痺とは指状糸状虫という寄生虫が蚊から山羊さんの脳や脊髄に入り、
神経を損傷する病気です。
感染後、2週間~1か月後に症状があらわれます。
そして症状は神経が損傷された部分によって異なります。

主な症状として・・・

・突然の腰部や後肢の麻痺
・歩様のふらつき
・起立困難
・頭が片方に傾く(斜頸)
・顔面神経麻痺により涎を垂らす、ごはんが食べられなくなる
・前足の麻痺で起立できない

などがあります。

腰麻痺は山羊さんにとって重要な病気の一つなので改めて
「山羊の診療note」でお話ししますね。

今回の治療は・・・
・イベルメクチン注射

腰麻痺の治療のため、駆虫剤のイベルメクチンの投与をおこないました。
これは症状が出ているため3日間続けます。

・抗生物質の投与

乳房に熱感・硬結があり産前の乳房炎の可能性も考えられたので
抗生物質の注射をしました。

・ブドウ糖静脈注射
食欲はあるというもののいつもより量が少ないので食欲刺激のため
ブドウ糖の投与を行いました。

最後に、
オーナーさんに、立てないみやちゃんがごはんを食べやすいように、
お顔の前にごはんを置いてあげることや体の下に乾草などを敷いて、
褥瘡ができないようにしてもらうことをお伝えし初日の診療は終わりました。

続く・・・

同じ景色、違う想い

診療の途中…

突然現れた

お花畑

そばのお花が満開でした

お花畑って夢のよう

揺れるお花を見ていたら

昔読んだ

絵本を思い出した

小さな白いお花畑で

ひとりでぽつんと

空を見ていた

迷子の子羊

同じ景色をみても

感じることは

みんな違う

ひとりひとりの

違う世界

同じ景色と違う想い

あなたにはどんな風に

みえますか?

違うからこそ

その想いを

映してみたい

でもね

わたしは信じている

その違いを超えた

ずっとずっと

奥に

普遍的な世界があって

そこでまた出会える人がいる

ことを。

山羊の人工授精チャレンジ ~精液の性状~

私の目標は凍結精液での現場でできる人工授精です。
しかし、まずは受胎率の高い液状精液での人工授精も考えはじめたので、
山羊の精液について調べてみました。
(液状精液での受胎率60~70%、凍結液精液での受胎率20~30%)

液状精液は、雄山羊から精液採取した後、はじめに精液が正常か検査をします。
そして液状保存用希釈液で薄めて、2時間程度かけて4~5℃に温度を下げます。
その後、遮光して冷蔵庫で保存して、人工授精に利用します。

1週間保存は可能ですが、3日間以内に使用すると良好な受胎率が期待できるとのことです。
実際、私は長野支場に研修に行ったときに、2頭の雄の精液を、
3日目と5日目に顕微鏡で見せてもらいました。
3日目は2つとも精子の活力が良好でしたが、
5日目は1つは良好、もう一つは活力がかなり落ちていて、
人工授精では使用できない状態でした。

精液の検査は…

*肉眼的検査

・精液量 1ml (0.5~1.5ml)
・色   白色~クリーム色
・におい 無臭
・PH   6.8(6.4~7.1)
・雲霧状態 +++
・粘稠度 濃厚で粘稠
・活力概観 渦流
・比重 1.032~1.047 (平均 1.039)

*顕微鏡検査

・活力、生存率 90+++,90%以上
・精子数 20億/ml(11~40億/ml)
・奇形率 10%以内

*不良精液

・無精子のもの
・血液(精液がピンク)や尿、膿の混入
・精子の生存率、活力が極端に悪いもの
(新鮮精液で生存率が50%以下のもの。活力++以上のものが50%以下のもの)
・奇形率が極端に高いもの(山羊の平均奇形率は22%)
・PHが著しく酸性またはアルカリ性のもの

そして、
山羊さんはは家畜の中で精液量が最も少なく(平均1ml)
逆に最も精子濃度が濃く、精液量の約1/3を精子が占めています。

山羊の診療Diary 症例11 山羊の跛行

*山羊の診療Diary  症例11 山羊の跛行

今回の症例は・・・

ゆうきさんのお家の山羊さんたちに夕方ごはんをあげにいくと、
その中の1頭の山羊さん、ゆきちゃんが右後ろ足を痛そうにしていることに気がつきました。
昨日までは元気にしていたのにどうしたのでしょう。
ゆきちゃんの様子をみていると食欲と元気はあります。

それではさっそく診察をはじめましょう。

まずは視診。歩く姿を観察してみます。

すると、ゆきちゃんは右後ろ脚をあげて歩いています。

足を挙上(上げる)する病気は

・骨折、捻挫
・背骨、股関節、膝、蹄などの異常
・神経や筋の損傷
・靱帯と腱の損傷
・蹄の間に棘が刺さる

などがあります。

次に触診をしていたい部分を確定します。
触診時気をつけるところは

「痛くないところから触る」です。

なぜかというと、
痛いところから触ると、痛みで動物が嫌がったりびっくりして
その後、どこを触っても痛がる反応や嫌がる反応をするようになり、
本当に痛いところがどこかわからなくなってしまうからです。

ゆきちゃんの肢を触診してみると、
足根骨(踵)の部分が腫れて痛みがあることがわかりました。

さらにその部位は熱感がありなにか液体が入っているような感触がありました。
そして、腫れている部分の皮膚を見るとごっそり毛が抜けていました。

また、腫れている部分の液体が何か確認するために
針を刺しました。(穿刺検査)

吸引された液体はさらさらした薄いピンク色の漿液でした。
もし、膿が出てきた場合は、細菌感染からの化膿性関節炎が疑われます。

もしかしたら、ゆきちゃんはどこかに足を挟んでしまったのかもしれません。
そこから足を外そうとしたときに挟まっていた毛がごっそり抜けてしまった可能性がありました。

以上のことから今回ゆきちゃんの治療は・・・

今後の感染を防ぎ痛みや腫れを取り除くために、
抗生物質と抗炎症剤の注射をしました。

そして、患部には鎮痛・消炎効果のあるカンメルブルーを塗布しました。
腫れが引くまで1日2回肢にスプレーを続けてもらうことにしましました。

このスプレーは名前の通り青色なので
ちゃんとお薬がついているのかわかりやすいです。

次の日はまだ足を引きずり腫れがありましたが
2日後には元気なりました。
そして、山羊さんは隙間などに足を挟んでしまうことが多いので
この後、ゆきちゃんの小屋に危ない場所がないか確認しました。
山羊さんが隙間に足を挟むとひどいときには骨折などの事故にもつながりますので、
山羊小屋の隙間など山羊さんにとって危ない場所がないか気をつけてあげてくださいね!

メリーとマリー

わたしはメリー。
毎日ここで草を食べてるの。

わたしはマリー。
毎日ここで草を食べてるの。

そこに、女の子のユリちゃんが来ました。

あ、ユリちゃんが来たー!
わーい!あそぼ〜!

ユリちゃんは言います。
メリーちゃんは、白くてきれいね!
だから、美味しいトウモロコシをあげる!

マリーちゃんは、なんか茶色くてきたない!
私はメリーちゃんが好き!
メリーちゃん、あそぼー!

わーい!あそぼー!

…。
わたしは?わたしは?
…。

向こうでメリーちゃんとユリちゃんは楽しく遊んでいます。

めーん。
わたしは…。めーん。

わたしは、ユリちゃんと仲良しのメリー!
毎日ここで、ユリちゃんと遊んでるの。

わたしは、茶色くて汚いマリー。
ユリちゃんに遊んでもらえないの。
めーん。めーん。

だれかあそぼう?だれかー。
マリーちゃんは、丘を登って、
どこまでもあるいて行ってしまいました。
めーん。めーん。と泣いていました。

ある日。今日もユリちゃんとメリーちゃんはなかよく遊んでいました。
日が暮れて帰るとき、ユリちゃんが言います。

メリーちゃん。今日でお別れなの。
わたしはずっと遠くに行くことにしたの。
メリーちゃん、大好き。
楽しかったわ!元気でね!

メリーちゃんはなにも言わず。
ただめーん。めーん。と泣きました。

大好きなユリちゃん。行っちゃったんだ。

だれかあそぼう?だれかー。
メリーちゃんは、丘を登って、
どこまでもあるいて行きました。
めーん。めーん。と泣いていました。

何日も、何日も、あっちの草を食べたり、こっちの草を食べたりして、歩きました。

メリーちゃんはそのうち、どこに向かっていたのか、なにをめーん。と泣いていたのか、忘れてしまいました。

めーん。
ああ。今日も朝日がきれいだな。
青い草のにおいも素敵だな!

めーん。
でも、ひとりはちょっと寂しいな。
だれかあそぼう?だれかー!

あそぼう!
声とともに、向こうの茂みから、何頭かのヤギが出てきました。

そのうちの一頭は、茶色くて、汚いヤギ。

はじめまして!
わたしは、マリー!
毎日ここで、みんなと遊んでるの。
あなたのおなまえは?

はじめまして!
わたしは、メリー!
毎日だれかを、探していたの。

いっしょにあそぼう!
マリーちゃんは、茶色くてかわいいね!

うん。あそぼう!
メリーちゃんは、白くてきれいだね!
あっちの草が、美味しいんだよ!
めーん。めーん。

メリーちゃんは嬉しくて、楽しくて、
めーん。めーん。となきました。

今日もみんなで、
めーん。めーん。

多分、明日もみんなで、
めーん。めーん。

毎日、遠くの山に日が沈むまで、
みんなでなかよくあそびました。

おしまい。

表現するのが苦手な人へ

たまには獣医的なことを書こうかとも思うんですけどね。

診療行為って、専門的になりすぎるので、ブログの読者さんの為にもならないかなぁと、なかなかやる気が出ないんですよね。

文を書くときって、伝えたい人が誰かによって言葉遣いも変わるし表現方法も変わります。
伝えたい人が明確にいるほど、すんなり書けます。

逆に書けない時。または書いても、なんとなく恥ずかしくて出せない時。
そういう時は、大抵、「自分が」わかってほしいと思っていること。「認めてくれよ!」とか、「カッコイイでしょ!」とか。心の叫びみたいなものを、隠してうまく書こうとしていたり、書いてしまっていたりすることが多いです。

その恥ずかしいと言う感覚は結構大事で、自分の心根に気づいちゃってるんですよね。

誰かの為になる。とか、あの人に届け。とか。
そしてその人が喜ぶに決まってる。
などと心底思ってる時は、記事を公開する事に全く躊躇がありません。

もし自分が、記事を出すことや、何かを表現する事に躊躇している時は、きっと自分の心が、自らの本当の意図に納得してない時かもしれませんよ。という話。

そして、
診療の話書こうかなと思ってブログ始めたのに、獣医と関係ない気づきや想いばっかり書いちゃってる言い訳、の巻でした。

わかってあげるとうまくいく

本当に自分が心を動いたことを、わかってもらえると、満たされた気持ちになります。

例えば、獣医の仕事内でいうと
血糖値曲線を作成するときの面倒くささ
大型犬をレントゲンの台に乗せるときの苦しさ
分からない病気に向かい合う不安

敢えてわかりにくい状況を挙げましたけど、
そういう時には心が動きます。

別に、手伝って欲しいわけじゃないんです。
ただ、そこんところの心の動きを、わかって欲しいだけなんです。
はっきりいって、これがどういうことなのかわかってくれる人に普段はほとんど出会わないんですけど、たまにいると嬉しいんですよね。

他にも、仕事についてだけじゃなくて、
何かを達成した時の充実感
叱られる悔しさ
とかでもいい。

なんでもいいんですけど、特定の状況で、喜びや悲しみ、不安や興奮、それらが混ざった複雑な気持ちなんかのことです。

そういうのを、わかってもらえる事。
たったそれだけの事が、毎日の生活で本当に重要な力を持っています。
わかってもらう事はほとんどの人にとってってかなり重要なんだと思います。
僕は自分にとって簡単な事ほど、わかってもらえないとすごく悲しいです。
期待していないような難しい事ほど、わかってもらえるとすごく嬉しいです。

仕事においてもそうなんです。
お客さん、患者さんも人ですから。

だから獣医の仕事をする時は、飼い主さんがどこに心を動かすのか、意識的に感じてみないといけません。

そこで一度は動物を飼ったり手伝いをしてみると、いろんなことが分かるので、仕事にすごく役立ちます。

牛農家さんなら例えば、
牛舎を清潔に保とうと思っていても、すぐに汚れしまう事。
牛の糞便を処分する時は、まずレーキで引っ張って集めて、一輪車に乗せて、堆肥場まで運ぶ。その時、あと少しでいいから近かったからいいなと思う。
で、ちょっとサボると量が増えて、重さで肩や腰が痛くなる。予想より遥かに時間がかかってしまって苦しい。
毎日見てても発情がわからず苦しい。
とか。

犬猫の飼い主さんなら例えば、
子犬が初めて家に来た時に、呼び鳴きが続く苦しさ。
毎日ちゃんとごはんを食べてる姿を見る幸せな気持ち。
とか。

獣医技術に優れて、本当に治せる事はもちろん重要です。
でもそれと同じくらい、
どんな時にその人が心を動かすのかをわかってあげる事が重要なんです。
それはいつでも、その人の心を満たすプレゼントになります。
そしてそこにきちんと意識が向いてないと、結局治療もうまくいきません。

つまり、
この人はどこが苦しいのかな?
この人は何が嬉しいのかな?
という事に意識が向いていないと、
飼い主さんが困ってるのは、「動物が病気である事」よりも「経営不振」である事とか。「病気を治す事」よりも「治らなくていいから痒みを取って欲しい」とかだったりするんですけど、
そういう事を勘違いしてしまうんです。

すると病気を治すために最善を尽くして医療費がかさんだり、根治を目指してかゆみ止めを使わない治療をしたりします。

結局どちらも飼い主さんを苦しめてしまう結果になります。

そうなったら、せっかくの自分の努力が報われません。喜んでもらえず、後味悪いです。

難しい事をわかってもらうと嬉しいですよね。
簡単な事をわかってもらえないと悲しいですよね。
だから、わかってあげましょう。
わかってあげる「だけ」でいいんです。

そしたらけっこう、いろんな事がうまく行くと信じています。

山羊の診療note5 ~繁殖季節について~

やぎの診療note5 ~繁殖季節について~

わたしたち人間は、毎月誰かのお誕生日がありますよね!
一年中、赤ちゃんが誕生しています。

さて山羊さんたちはどうでしょう?

山羊さんの赤ちゃんをよく見る季節があるように感じませんか?

春になると子山羊さんが生まれましたというお話を聞きませんか?

そうなんです。山羊さんは赤ちゃんを作れる季節と作れない季節があるのです。

一般に雌山羊さんの多くは秋になると(日の長さが短くなる)赤ちゃんを作る繁殖季節を迎えます。

しかし、全部の山羊さんが繁殖季節を持っているわけではありません。

品種や地域によって繁殖季節のあるもの(季節繁殖)と一年中、発情をを示すもの(周年繁殖)があります。

*品種で考えると・・・

ザーネン種は季節繁殖(9月~1月)で、
シバ山羊は周年繁殖です。

*地域で考えると・・・

高緯度の地域 季節繁殖
低緯度の地域 周年繁殖

となります。

なぜ緯度が関係するのでしょう?

山羊さんは昼の明るい時間が短くなる(短日性)と発情を開始します。

これを山羊さんの体のしくみから見てみると・・・

日が短くなり、夜が長くなると山羊さんの目の網膜が日長の減少を感知します。
すると夜の暗いときに出る「メラトニン」というホルモンが増えます。
このメラトニンがさらに発情に関連するホルモンの分泌を促して発情シーズンが始まっていきます。

高緯度の地域は日長の変化が大きいため、このようなしくみで季節繁殖を示しますが
低緯度の地域は日長の変化が小さいためはっきりとした繁殖季節を持たず周年繁殖を示す傾向になります。

面白いことに、季節繁殖型の品種の山羊さんを緯度の低い地域で飼育すると日長の変動が少なくなるため、
周年繁殖の形態になり、反対に周年繁殖の山羊さんを日長の変動が大きい高緯度の地域で飼育すると季節繁殖の形態になるそうです。

また、東南アジア等の雨期・乾期がはっきりしている地域で、粗飼料のみで飼育されると、
草が豊富な雨期に発情がくることがわかっています。

私の住んでる地域の山羊さんははザーネン種がもとの雑種が多いので季節繁殖を示す山羊が多いですが、地域の特性(緯度が低い)や雑種の品種の混ざり具合によって、
周年繁殖を示す山羊さんもいます。

このように、雌山羊さんのからだは日の長さや季節を感じて、
発情に関連するホルモンが分泌され、赤ちゃんを作る季節が決まっていきます。

一方、雄山羊さんはというと・・・

季節繁殖型の雄山羊さんも1年中交尾をすることが可能です。
しかし雌山羊さんの繁殖季節の方が性欲が高まり射精回数も増加、精子の活動能も高まります。

確かに、私が繁殖季節の11月に長野支場に伺ったとき、
ザーネンの雄山羊軍団は雌山羊さんたちを見るとふごふごいって大興奮していました。
しかし、3月に伺ったときはすっかりおとなしく、ぼーっとしていました。

それでもやっぱり、お隣のおんなのこたちが気になる雄山羊さん。

雌山羊さんたち。

なんだか雄ってシンプルですね。(ひとりごとです。。。)

(写真 家畜改良センター茨城牧場長野支場にて撮影)

山羊の人工授精チャレンジ しろちゃん自然周期人工授精③

山羊の人工授精チャレンジ しろちゃん自然周期人工授精③

前回のしろちゃん人工授精チャレンジの結果報告です。

3月4日に人工授精をしてから40日目の妊娠鑑定を行いました。

妊娠していますように!!とエコー開始。

結果は・・・

羊水に浮かぶ赤ちゃんをエコーで確認できず・・・
残念ながら、今回も妊娠していませんでした。

わたしはがっくり…自然周期で妊娠を確認したかったな。

でも!!落ち込んでいても、何もはじまらないので、

急遽、その場で院長先生とゆうきさんと作戦会議。

そして、基本を一つずつ見直していくことになりました。

・凍結精液の性状を確認する
→凍結精液の精子の活性を確認する。

・人工授精をする山羊の数を増やす
→もしかしたら、しろちゃんが妊娠しにくい山羊さんの可能性がある。
出産後60日経過して、人工授精にチャレンジが出来る山羊さんたちがいるので
しろちゃんと一緒に発情の誘起、同期化して数を増やしてチャレンジする。

・液状精液を作成してみる
液状精液は1発情あたり60~70%の受胎率があり、凍結精液は20~30%と低い。
そのため、受胎率の高い液状精液の人工授精から試してみる。

・ホルモン剤による発情の誘起・同期化を行う
わたしの住む地域の山羊は雑種が多く、緯度が低いためはっきりとした繁殖シーズンを持たない
山羊さんもいる。しかし、出産は1月~3月が多いのでザーネン種と一緒で、
9月~11月が繁殖シーズンとしている山羊さんが多い。
そのため、非繁殖シーズンである今、ホルモン剤による発情の誘起が必要になる。

まだまだはじまったばかり。
やれることはたくさんあるので、心折れずにがんばろう!!

山羊の診療Diary 症例10 尿道の異所開口

*山羊の診療Diary  症例10 尿道の異所開口

今回の症例は・・・

はっきりとした診断と治療ができなかった症例です。

この症例に出会ったのは、
牛の往診時に牛舎の隣にいた山羊さんを見たときです。
その山羊さんのお腹に何か見慣れない塊があったのに気が付きました。
オーナーさんにお話を伺うと、
しばらく前からお腹のところにこの塊はあるとのこと。
食欲・元気はあり、おしっこもでているということでした。

写真はこちらです。

陰茎の横の皮膚が大きく膨らんでいました。
この時点ではこの塊が何かわからないので一つずつ検討していくことにしました。

はじめに、包皮の入り口のところが炎症を起こしており化膿していたため洗浄をしました。

次に、膨らんでいるところが包皮なのか、皮膚なのかを確認するために
カテーテルを包皮の先端に挿入して生食を注入しました。
そして、包皮の外周を確認しましたが、水疱と包皮腔は繋がっていないようでした。

最後に塊の中のものが、液体のようだったので、針を刺して溜まっていたものを採取し確認しました。
その結果、中身は尿であることがわかりました。

この時点で、図3の状態を予測しました。

図3

・包皮の一部が炎症を起こして癒着していると予測。
・陰茎の先から出た尿が袋状の部分(A)に溜まっていると考えた。
・カテーテルを通すことを試みましたが通らず。
・針を刺して一度尿を抜いた後、どれくらいで溜まるのか経過を見ようと思った。
→すぐに溜まって元に戻った。

予測とは違う結果になったため、再度検討をおこないました。
そこで、尿が溜まったAの袋を圧迫して、尿が排出される場所を確認してみることにしました。
すると、陰茎の先から尿が出てきました。
この結果、陰茎の一部に穴が開いていてそれがAの部分に貯留していることが示唆されました。

現時点で尿道の異所開口として経過を見ています。

治療法としては、この尿道の穴を塞ぐ外科手術が検討できますが、
場所が常に尿で濡れてしまうこと、床の糞尿での汚染も考えられ、
外科手術後の経過が難しいことが予測されました。
オーナーさんと相談の上、排尿はできていることから経過観察することになりました。

このような症例が他にないのか、論文など検索してみたいと思います。