Category Archives: ヤギ人工授精チャレンジ

子ヤギが産まれました!! パンダちゃん編

子ヤギが産まれました!! パンダちゃん編

以前ヤギの人工授精チャレンジでご紹介した、
発情同期化のクリーム法での発情時に妊娠したパンダちゃん。

12月の終わりに
男の子の赤ちゃんヤギを無事出産しました。

パンダちゃんは身体が小さく、予定日の前にはお腹がぱんぱんになっていました。
その為、自然分娩で産めるか心配しており、予定日が過ぎた場合や、
自分で産めないと判断した場合は、帝王切開を考えていました。

分娩当日、陣痛が始まっているとご連絡をいただき、
かけつけてみると、あしは出ていましたが、とても苦しそうにパンダちゃんがうめいており、分娩が進まない状態になっていました。
手を入れて確認すると、胎位は正常でした。
しかし、頭が子宮の入り口をすでに通っていましたが、最後の陰部のところから自力では出せないようでした。
そこで、お産の介助をすることにしました。
両前足に、ひもをつけてから、いったん押し戻して、手を頭の上に添えて、ひっぱりました。

分娩直後の写真です。パンダちゃんお疲れさまでした。

この子ヤギさんはヤギ牧場のお隣のマンゴー園のオーナーさんのお誕生日に産まれて、
とても喜んでいただいたので、名前はオーナーさんのお名前をいただき「よし坊」になりました。

よし坊は産まれた時、小さなヤギさんでしたが、
とてもやる気があり、おっぱいをぐんぐん飲んで元気に育っています。
ぱんだちゃんもはじめ牧場に来た時、
人がいなくなるとめーめーずっと泣いているさみしがり屋のヤギさんでしたが
すっかり、子育て上手のお母さんになりました。

春になって、パンダちゃんとよし坊が牧場を元気に走っている姿を見るのが今から楽しみです!!

 

 

山羊の人工授精チャレンジ ~膣内クリーム法を現場でやってみよう! 結果~ 

山羊の人工授精チャレンジ ~膣内クリーム法を現場でやってみよう! 結果~

前回の続きです。

前回ご紹介した手作りのスポンジとホルモン入りのクリームをシリンジを使って挿入しました。


そして、論文通りに11日目にPMSGの注射を打ち12日目にスポンジを抜去しました。
スポンジが抜けないか心配でしたが、みんなしっかり入っていました。
次回改善したいなと思った点は、糸がスポンジにつながっている糸が透明だったため、
毎日抜けていなかったかチェックする際、とても見づらかったことです。
次回は色をつけておしりを確認したらすぐわかるようにしたいなと思いました。
12日目のスポンジを抜くときに中に残らないように、ジェルを塗布しました。
スポンジを抜いた日に雄山羊を一緒にしました。
発情兆候は抜いて3日目に一番よくわかりました。
5日間一緒にして、40日目にエコーで妊娠鑑定を行いました。

7月に発情同期化を行ったのは6頭です。
1.らぶ
2.かたちゃん
3.キキ
4.くにちゃん
5.こゆき
6.パンダ

結果は・・・
妊娠したのは1頭、パンダだけでした。
発情兆候はみんなきれいに見えていたのに、残念。
反省点として、この時の雄山羊のだいわくんがあまりやる気がでない感じで
女の子が近づいて行っても、のんびりしていました。
これは、だいわくんが悪いわけでなく、雄山羊は1年中発情することはできますが、
やはり繁殖シーズンの方がやる気も元気もあるから仕方のないことです。
そこで、次は別の雄山羊に変えて、さらに2頭一緒にしてみることにしました。

8月は前回妊娠しなかった5頭の発情同期化を行いました。
1.らぶ
2.かたちゃん
3.キキ
4.くにちゃん
5.こゆき

結果は・・・
今度は、かたちゃん、キキ、こゆきの3頭が妊娠しました!!

2クールで6頭中4頭が妊娠することができました。
クリーム法での発情同期化は現場でも発情兆候もわかりやす上手くいきました。

今後、2つのことを引き続きチャレンジしていきたいと思います。
1.妊娠していない2頭はこのクリーム法に合わせて、人工授精を組み合わせて
妊娠を目指す。

2.来年度は分娩後、発情同期化を早めにして2年3産を目指す。

そして、
はじめに妊娠したパンダがもうすぐ分娩です。


予定日はクリスマスです。
お腹がだいぶ大きくなりました。
元気な赤ちゃんを産んでね!!

山羊の人工授精チャレンジ ~膣内クリーム法を現場でやってみよう! 道具編〜

今回は、今年の夏に試してみた、発情同期化のお話です。

今まで、人工授精チャレンジでは、ホルモン剤の注射のみで定時人工授精ができないか試していました。しかし、発情は明瞭にわかるものの妊娠に結びつかず、ホルモンの調整などまだしばらく実用化するのに時間がかかりそうでした。

そこでまずはすでに確立されている「膣内クリーム法」での同期化を現場で活用できるかやってみることにしました。

ヒツジの発情同期化の方法の論文を参考にして行いました。
参考文献はこちらです。

「めん羊の発情誘起 ~膣内クリーム法」河野 博英 著

膣内クリーム法とは、現在牛の繁殖治療で行われているCIDERと原理は一緒です。
CIDERはシリコン製器具の中に黄体ホルモンが含まれています。
黄体ホルモンを膣の中に一定期間挿入しておくと、人工黄体として機能します。
これを除去すると、いくつかのホルモンが作用して、卵胞が発育して発情がおきます。
海外では、ヤギ用のCIDERが販売されていますが、日本では入手することができません。

膣内クリーム法は手作りでこのCIDERを作るような感じです。
クリームの中に黄体ホルモンを練りこみ、このクリームとスポンジを膣内に入れて、一定期間挿入した後にスポンジを抜きます。

今回は、使った器具の紹介をします。

1.アプリケーター
クリームとスポンジを膣に挿入する道具です。
注射のシリンジを使用しました。

2.スポンジ
クリームを膣内にとどめておくものです。

食器用のスポンジの固い部分をはがして使用しました。
スポンジの真ん中にモノフィラメントの糸を巻き付けて、膣から引き抜けるようにしました。

ヤギさんの大きさに合わせていろいろ作ってみました!

3.膣内クリーム
抗菌剤入りのクリームに。黄体ホルモンをすり潰し練りこみました。

完成してクリームを前に入れるだけのものはこちらです。

次回は、実際にヤギさんたちに使用してみたお話と結果についてです!!

山羊の人工授精チャレンジ MMNS第1クール まとめ (2019年2月~2020年3月まで)

山羊の人工授精チャレンジ MMNS第1クール まとめ (2019年2月~2020年3月まで)

しばらく間があいてしまいました、「山羊の人工授精チャレンジ」
今回は2020年3月までのまとめをご報告します。

前回の人工授精チャレンジの記事「山羊の人工授精チャレンジ MMNS第1クール③ ついに・・・山羊の人工授精チャレンジ MMNS第1クール③ ついに・・・
で妊娠鑑定(+)だった山羊のCちゃんは、分娩予定日(2020年2月23日)より3日早い2月20日に
男の子と女の子のふたごの赤ちゃんを無事出産しました。
長野の家畜改良センターのザーネンの雄山羊さんの種で生まれたので、
長野にちなんで、りんごちゃんとかりんくんと名付けました。
現在、ゆうきさんの牧場で元気に育っています。

そして、島の山羊農家さんにご協力いただいて、発情同期化で人工授精した山羊のろくちゃんも無事出産しました。
この山羊さんは、プログラム+定時人工授精で妊娠しました。
上記の山羊のCちゃんは自然周期での人工授精での妊娠でしたので、この山羊のろくちゃんは発情同期化と定時人工授精がはじめて成功してとてもうれしかったです。

*ヤギのろくちゃんの発情同期化と定時人工授精まとめ

10月18日 ホルモン剤①
10月20日 ホルモン剤②
10月21日 ホルモン剤③ 夕方人工授精1回目
10月22日 朝人工授精2回目
11月30日 妊娠鑑定(+)

先日、診療でろくちゃんのヤギ舎に伺ったので、ろくちゃん親子に会ってきました。


元気に大きくなってね!!

4月からの取り組みは、「MMNS第2クール」として、これからも発信していきたいと思っています。

山羊の人工授精チャレンジ MMNS第1クール③ ついに・・・

山羊の人工授精チャレンジ MMNS第1クール③ ついに・・・

前回の記事はこちら。山羊の人工授精チャレンジ MMNS第1クール②(発情同期化を使った人工授精プログラム)

今回は11月3日までのMMNS第1クールのまとめです。

*山羊Aちゃん
2回の発情同期化(MMNS)と人工受精をするものの残念ながら妊娠していません。
今日から3回目のMMNSをはじめました。
もしこれで妊娠しなかったら、次の方法を検討しようと思っています。

*山羊Cちゃん
1回の発情同期化(MMNS)と人工受精を実施。
今日から2回目のMMNSをはじめました。

*山羊Bちゃん
1回目の発情同期化(MMNS)と人工授精を実施。
その後、30日の妊娠鑑定(-)後に発情が見られたので、
発情同期化はしないでそのまま人工授精を実施しました。

そしてついに!!
11月3日の40日の妊娠鑑定で、妊娠を確認しました。

妊娠確認のエコー写真

人工授精チャレンジ、初妊娠!!

超音波での画像を見たとき、とてもとてもうれしかったです。

Cちゃんの分娩予定日は山羊さんの妊娠期間は5ヶ月なので、2020年の2月25日です。
このように、分娩予定日がわかるとお産の心構えができ観察ができるので、
分娩事故を減らすことに繋がります。

残念ながら、発情同期化での妊娠ではなく自然の発情での妊娠でしたが
何はともあれ、現場での凍結精液での妊娠は一歩前進。

そして、発情同期化のMMNSは、現在経過を見ながら
海外文献を調べてお薬の量を再検討したり、
他の発情同期の論文を取り寄せて新たな方法も検討しています。

全部の山羊さんが妊娠して卒業できますように。

山羊の人工授精チャレンジ MMNS第1クール②(発情同期化を使った人工授精プログラム)

山羊の人工授精チャレンジ MMNS第1クール ②

今日は山羊Aちゃんの人工授精後30日の妊娠鑑定のご報告と
山羊CちゃんのMMNSスタートのお話しです。

前回の記事: 山羊の人工授精チャレンジ MMNS第1クール(発情同期化を使った人工授精プログラム)

まず、山羊Aちゃんの30日の妊娠鑑定は・・・

残念・・・赤ちゃんを確認することができませんでした。
この後、人工授精後40日にもう一度確認して、妊娠していなかった場合には
もう一度発情同期化MMNSに入ります。

凍結精液での人工授精の受胎率は20~30%と低めです。
そのため、何度か諦めず繰り返し、チャレンジしていきたいと思います。

そして、山羊CちゃんがMMNS第1クールをスタートしました。

発情同期化MMNSの最終日のお注射と発情確認をしました。

雄山羊に近づけると、寄り添ってしっぽを振る発情行動が見られたので、
人工授精を行いました。(1回目)

また、次の日、山羊Cちゃんを観察してみると、
前日よりはっきりした発情が見られました。
柵越しに雄山羊から離れない様子が見られました。

発情行動を行うヤギ

再び人工授精を行いました。(2回目)

そして、再度夕方、人工授精を行いました。(3回目)

…..

ヤギの発情適期について。発情行動と人工授精のタイミング

ここで、山羊さんの発情適期について復習しましょう。

*雌の発情持続時間は
40時間

*排卵時期は発情末期
30~40時間ごろ

*卵子の受精能の保有時間
排卵後 8時間

*雌の生殖器内での精子の受精能保有時間
40~50時間

以上のことから、
発情適期は、発情開始20~40時間になります。

そして、ぴったり発情を合わせることは難しいので、
1発情中に10~12時間間隔で2回受精するほうが受胎の確立があがります。

発情行動と人工授精のタイミングをまとめると・・・

夕方に発情がみられた→次の日の朝、1回目の受精。夕方2回目。
朝から発情がみられた→その日の夕方に1回目の受精。次の日の朝に2回目。
昼から発情がみられた→その日の夜に1回目の受精。次の日の昼に2回目。

…..

しかし、実際の現場では、正確にいつから発情が始まったかみることは難しいと思います。
そのため、発情同期化と発情確認をうまく組み合わせて、データを集めながら、
定時人工授精ができないか研究していきたいと思っています。

今回の山羊Cちゃんの場合は、
1回目の人工授精は早かった可能性があります。
発情行動からいうと、2回目と3回目が適期であったかもしれません。

今は、まずは受胎させるのが一番なので
できることを一つずつ積み上げていこうと思います。

続き: 山羊の人工授精チャレンジ MMNS第1クール③(発情同期化を使った人工授精プログラム) ついに・・・・

山羊の人工授精チャレンジ MMNS第1クール(発情同期化を使った人工授精プログラム)

山羊の人工授精チャレンジ MMNS第1クール

しばらく時間が空いてしまった、山羊の人工授精チャレンジ。

あきらめていませんよー!!

(前回までのヤギ人工授精チャレンジ記事はこちらから。)
山羊の人工授精チャレンジ しろちゃん自然周期人工授精①

この間、前回の自然周期の人工授精がうまくいかなかった原因などを一つずつ
解決していました。

そして、あらたに
発情同期化を使った人工授精の研究をはじめました。

院長発案のこのプログラムは「MMNS」と名付けて、先月からスタートしています。

今回の研究に参加してくれる山羊さんは6頭です。

初日は妊娠鑑定をして妊娠していないかを確認しました。
6頭の山羊さんは雄山羊と一緒だった為、すでに妊娠している可能性があったからです。

妊娠鑑定の結果

3頭は妊娠鑑定(+)
1頭は確定できなかったので再鑑定
2頭は妊娠鑑定(-)

妊娠鑑定(-)だった2頭の山羊さん(山羊Aちゃん・山羊Bちゃん)はこの日から
MMNSプログラムの注射をスタートしました。

発情同期化を使った人工授精プログラムMMNSの注射

山羊Aちゃんは順調に第1クールで人工授精をしました。
山羊Bちゃんは再発情が見られたので、再度、MMNSの注射を行い人工授精をしました。

人工授精の際には、凍結精液の精子の状態を確認しました

顕微鏡で凍結精液の精子の状態を確認

人工授精の様子

ヤギに人工授精を行う

現在、山羊Aちゃんと山羊Bちゃんは妊娠鑑定待ちです。

再鑑定の山羊Cちゃんは妊娠(-)だったため、
これからMMNSの同期化の注射からはじめます。

次回、良い報告ができますように!!

続き: 山羊の人工授精チャレンジ MMNS第1クール②

山羊の人工授精チャレンジ 現場での妊娠鑑定

山羊の人工授精チャレンジ 現場での妊娠鑑定

牛の直腸検査に使用するエコーで山羊の妊娠鑑定を試みていましたが…

今まで、私たちは現場で、
牛の直腸検査に使用するエコーで妊娠鑑定を試みていました。

(妊娠鑑定の方法について、詳しくはこちらの記事をどうぞ。)
山羊の人工授精チャレンジ 妊娠鑑定方法

エコーのプローブを乳房の付け根にあてて、羊水に浮かぶ赤ちゃん山羊を探す方法です。
赤ちゃんの心臓が動くのを確認できたら、妊娠と診断していました。

エコー検査

胎児を探すこと、とくに心臓の動きを確認することが難しい

長野の家畜改良センターで勉強させていただいたときは、この方法で妊娠鑑定が容易にできました。
しかし、私たちが使用しているエコーではなかなか乳房横のアプローチでは、
胎児を探すこと、特に心臓の動きを確認することが難しい状況でした。
おそらくプローブが小さいことやエコーの機械の精度などがが関係していると思われます。

確実に妊娠しているか、していないかがわからないと妊娠鑑定をする意味がなくなってしまいます。
超音波診断法の中でも経膣プローブを用いて膣の中に挿入する方法は、高い精度で妊娠を診断することができますが、
経膣プローブはとても高価なので、購入しなくてもできる方法をまずは検討してみました。

 

経膣プローブを購入せずにできる妊娠鑑定の方法「超音波ドップラー法」を試してみたものの…?

現場での妊娠鑑定の精度を上げるために、
はじめに試して見たのは・・・

「超音波ドップラー法」です。
この方法はお腹の中の赤ちゃんの心音または血流音を確認して妊娠を判定します。。
人工授精後、60日以降で診断が可能です。
人間の赤ちゃんの心音を自宅で聞ける、ドップラーを購入しました。

ひとまず、自分の胸にあてて心音を聞いてみると・・・

どきどきどきどき・・・・

はっきり聞こえる!!
これは期待できるかもとわくわくしながら、
さっそく確実に妊娠している山羊さんにドップラーをあてて見ました。

山羊に超音波ドップラー法を試す様子

しかし・・・残念ながら全然聞こえず・・・。

 

現場での妊娠鑑定の決定版「ヤギの直腸にプローブを入れる方法(改)」

そこで、院長発案、牛の妊娠鑑定と同じように直腸にプローブを入れる方法を
試してみることになりました。

この方法の問題点は、

・山羊さんは牛のようにおしりから手が入らない。

・プローブだけでは中に入っていかないということです。

この問題を解決するために、プローブにアタッチメントをつけました。

痛くないように、ゼリーをつけておしりから優しく挿入すると・・・
羊水に浮かぶ胎児が確認でき、心臓の動きも見ることができました。

現場での妊娠鑑定の決定版!!

この方法なら、精度が高く、
山羊さんのオーナーさん達からの妊娠鑑定の依頼を受けることができるようになりました。

 

妊娠鑑定を行うことの2つのメリット

妊娠鑑定をすることにはメリットがあります。

妊娠していないヤギを発見し、妊娠へ導くことで生産性をあげる

1つ目は
妊娠していない山羊さんを見つけることができ、再度種付けや雄山羊さんと一緒にすることで
妊娠に導くことができるということです。

畜産として、山羊さんを飼養している人たちには、子山羊が生まれないというのは死活問題になります。
妊娠鑑定によって、長い間、妊娠していない山羊さんがそのままでいることがなくなる、
すなわち生産性をあげることができるのです。

分娩時期を知ることで、母ヤギの栄養状態を整え分娩事故を防止できる

2つ目は
いつ妊娠したかわからない場合、エコーで胎児の体長を測ることで、おおよそのの月齢がわかります。
まだまだ、人工授精が山羊さんで行われていることが少なく、
雄山羊さんと一緒にして、妊娠するのを待っている方が多いです。
そのため、いつ種がついたかわからない、ということは分娩がいつなのかわからないのです。
分娩時期がわかれば、分娩前に母山羊さんの栄養状態を整えたり、分娩事故の予防にもなります。

参考までに…

ザーネン種の妊娠日齢と体長の関係は以下の通りです。

妊娠日齢
12日   0.2cm
18日   0.6cm
25日   1.0cm
35日   2.0cm
42日   3.0cm *超音波での妊娠鑑定の時期
56日   5.0cm
63日   9.0cm
84日   16.0cm *ここから急速に成長
140日  50.0cm
150日  出産

今後、直腸からの妊娠鑑定の精度を高める工夫や私の住む島の山羊さん達のデーターを妊娠鑑定時に集めていきたいと思っています。

 

実際に妊娠鑑定の依頼を受けた際の記事はこちらです。
山羊の診療Diary 症例18 妊娠鑑定

山羊の人工授精チャレンジ ~精液の性状~

山羊の精液についての調査

私の目標は凍結精液での現場でできる人工授精です。
しかし、まずは受胎率の高い液状精液での人工授精も考えはじめたので、
山羊の精液について調べてみました。
(液状精液での受胎率60~70%、凍結液精液での受胎率20~30%)

まずはじめに精液が正常かどうか検査をする

液状精液は、雄山羊から精液採取した後、はじめに精液が正常か検査をします。
そして液状保存用希釈液で薄めて、2時間程度かけて4~5℃に温度を下げます。
その後、遮光して冷蔵庫で保存して、人工授精に利用します。

日数経過による状態変化

1週間保存は可能ですが、3日間以内に使用すると良好な受胎率が期待できるとのことです。
実際、私は長野支場に研修に行ったときに、2頭の雄の精液を、
3日目と5日目に顕微鏡で見せてもらいました。
3日目は2つとも精子の活力が良好でしたが、
5日目は1つは良好、もう一つは活力がかなり落ちていて、
人工授精では使用できない状態でした。

 

精液検査の方法

精液の検査は…

*肉眼的検査

・精液量 1ml (0.5~1.5ml)
・色   白色~クリーム色
・におい 無臭
・PH   6.8(6.4~7.1)
・雲霧状態 +++
・粘稠度 濃厚で粘稠
・活力概観 渦流
・比重 1.032~1.047 (平均 1.039)

*顕微鏡検査

・活力、生存率 90+++,90%以上
・精子数 20億/ml(11~40億/ml)
・奇形率 10%以内

 

*不良精液

・無精子のもの
・血液(精液がピンク)や尿、膿の混入
・精子の生存率、活力が極端に悪いもの
(新鮮精液で生存率が50%以下のもの。活力++以上のものが50%以下のもの)
・奇形率が極端に高いもの(山羊の平均奇形率は22%)
・PHが著しく酸性またはアルカリ性のもの

そして、
山羊さんはは家畜の中で精液量が最も少なく(平均1ml)
逆に最も精子濃度が濃く、精液量の約1/3を精子が占めています。

山羊の人工授精チャレンジ しろちゃん自然周期人工授精③

山羊の人工授精チャレンジ しろちゃん自然周期人工授精③

前回のしろちゃん人工授精チャレンジの結果報告です。
前回の記事: 山羊の人工授精チャレンジ しろちゃん自然周期人工授精②

3月4日に人工授精をしてから40日目の妊娠鑑定を行いました。

妊娠していますように!!とエコー開始。

エコー検査など、妊娠鑑定方法などはこちらの記事をどうぞ。
山羊の人工授精チャレンジ 妊娠鑑定方法

エコー診断

結果は・・・

羊水に浮かぶ赤ちゃんをエコーで確認できず・・・
残念ながら、今回も妊娠していませんでした。

 

わたしはがっくり…自然周期で妊娠を確認したかったな。

でも!!落ち込んでいても、何もはじまらないので、

急遽、その場で院長先生とゆうきさんと作戦会議。

そして、基本を一つずつ見直していくことになりました。

 

人工授精の基本を見直し

・凍結精液の性状を確認する

→凍結精液の精子の活性を確認する。

精液の性状について、詳しくはこちら。
山羊の人工授精チャレンジ ~精液の性状~

・人工授精をする山羊の数を増やす

→もしかしたら、しろちゃんが妊娠しにくい山羊さんの可能性がある。
出産後60日経過して、人工授精にチャレンジが出来る山羊さんたちがいるので
しろちゃんと一緒に発情の誘起、同期化して数を増やしてチャレンジする。

・液状精液を作成してみる

液状精液は1発情あたり60~70%の受胎率があり、凍結精液は20~30%と低い。
そのため、受胎率の高い液状精液の人工授精から試してみる。

・ホルモン剤による発情の誘起・同期化を行う

わたしの住む地域の山羊は雑種が多く、緯度が低いためはっきりとした繁殖シーズンを持たない
山羊さんもいる。しかし、出産は1月~3月が多いのでザーネン種と一緒で、
9月~11月が繁殖シーズンとしている山羊さんが多い。
そのため、非繁殖シーズンである今、ホルモン剤による発情の誘起が必要になる。

まだまだはじまったばかり。
やれることはたくさんあるので、心折れずにがんばろう!!