Monthly Archives: June 2020

おっぱい大作戦 ウシ編

今回はヤギさんのお話ではなくウシさんのお話です。

先日、いつも診療で伺う農家さんから
「3か月の子牛が哺乳瓶からどうしてもミルクを飲んでくれなくて困っている」という相談を受けました。
お話をさらに伺ってみると、
・わけあって母牛をセリで3日前に手放した
・3日前までは、生まれた時からずっと母牛からおっぱいを飲んでいた
・まだ配合飼料で栄養が取れる量を食べれるようになっていない為、人工哺乳が必要
・3日前から毎朝と夕、それぞれ根気強く1時間くらい哺乳瓶に慣れさせるようにがんばったけど、
子牛さんはもう乳首もミルクも嫌がるようになってしまった
というお話でした。

とてもまじめな農家さんなので、相当な努力をされたことを感じました。
何とか良い方法がないかと、調べたところ、

「獣医師に直接聞きたい!繁殖管理のベストプラクティス」
という記事の中に人工の乳首を嫌がる子牛に哺乳させる方法として、「目隠しをする」
という方法が見つかりました。
https://farmnote.jp/contents/bestpractice7.html

この記事を参考に、4つの作戦を考えてみました。
さっそく農場へ行き農家さんと一緒にやってみることになりました。

いざ「おっぱい大作戦」決行!!

1.目隠し作戦
前述記事を参考に目隠しをしてみたらどうか。

やり方
・黒いマスクに最近吸っている未経産牛のにおいをこすりつける
・子牛をつなぐ
・マスクをかぶせて哺乳する

結果
目隠ししないより子牛が落ち着いている様子。
しかし、残念ながらこれだけでは飲んでくれませんでした。

2.乳首を変えてみる作戦

哺乳瓶の乳首は実際のお母さんの乳首より堅そう
→乳首をよりお母さんの乳首の感触に近づけたらどうか

やり方
・ドレッシングボトルに手袋をかぶせて柔らかい乳首を作る
・子牛に飲ませてみる

結果
お口には市販の哺乳瓶の乳首より入れやすいものの吸ってくれませんでした

3.ドレッシングボトルとホース作戦

やり方
・乳首がどうしてもだめならドレッシングボトルで口から飲ませる

 

結果
時間はかかりますが、少しづつ飲めました。

4.胃チューブでミルクを飲ませる作戦(緊急 最大1週間くらいまで)
チューブを入れられれば、簡単にミルクを胃に入れることはできますが、
チューブを頻回に入れることにより、食道が傷ついてしまうことや、
正常の哺乳の反射などがおこらないデメリットを考えて、こちらの作戦は緊急時のみとしました

やり方
・胃チューブでミルクを強制的にあげる

残念ながら、今回の子牛さんはどうしても乳首から吸うというのを頑なに嫌がっており、
目隠ししても、乳首を使って哺乳瓶であげることが難しいという結果になりました。
どうにか、ドレッシングボトルであげられそうなので、
農家さんのお母さまと息子さんで朝・夕、分担して頑張ることになりました。
それと同時並行で、配合飼料の量を少しづつ増やしていただき、栄養をこちらからもとれるようにしてもらうことになりました。
根気強く、牛のことをいつも一生懸命考えているお二人なので乗り切れると思います。
幸い、ここまで順調に育ってきた子牛さんなので体がしっかりしています。
無事、離乳できるまで、私たちもできるサポートはしながら見守っていきたいと思っています。

今回のことで、記事にもあった通り、和牛の子牛さんはとても頑固で、3か月からの人工哺乳はとても難しいことがわかりました。
しかし、母牛さんが突然亡くなってしまったり、様々な理由でどうしても人工哺乳が必要な場合があります。
今回の経験を今後に活かしていきたいと思いました。

子ヤギが生まれました(島山羊×ボア)

子ヤギが生まれました(島山羊×ボア)

ゆうきさんの牧場にいる島山羊のがんこちゃんが出産しました。
がんこちゃんは、今回が初めての出産でした。
お父さんは、昨年の削蹄講習会の時に、削蹄に協力してくれた、お隣の島からやってきた、ボア種のくになかくんです。

子ヤギさんは男の子でした。名前はくりりんに決定。
大きくなったら、種付けのお父さん山羊さんとしての活躍を期待しています。

山羊の診療Diary症例29 子ヤギの下痢(コクシジウム症)

山羊の診療Diary症例29 子ヤギの下痢(コクシジウム症)

今回の症例は・・・
「生後1か月の子ヤギが下痢をしていて元気がない」という連絡が来ました。

子ヤギさんは、1カ月齢の女の子でのどかちゃん。
先週にお母さん山羊さんが突然死してしまい、その後、下痢をしているそうです。
お母さん山羊さんが生きているときは、おっぱいを吸っていたそうですが、亡くなってからは草を食べていて人工哺乳はしていなかったという事でした。

早速、のどかちゃんを診察すると、立ってはいましたが、足がふらつき、目が落ちくぼみ脱水していました。
おしりは下痢で汚れ、のどかちゃんのいた周りには、匂いの強いタール状の水様便がいくつも落ちていました。

草は食べていたという事ですが、おなかが膨らんでいるのに痩せている状態でした。
熱はなく、聴診では異常が見られませんでした。

脱水していて、診療中も何度かタール状の下痢をして元気がなかった為、山羊舎で点滴を行った後、入院することになりました。

まどかちゃんが初めにしていた便はこちらです。

タール状でお魚が腐ったような生臭いにおいの便でした。
糞便検査では、コクシジウムが検出されました。
生臭かったのは、便に血が混ざっていた可能性があります。

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*コクシジウム症とは・・・
コクシジウムという原虫が腸管に寄生して下痢を引き起こす病気です。
コクシジウムが増えるときに腸の粘膜上皮細胞に傷害を与えるので、下痢や血便などの症状を引き起こします。
大人のヤギさんでは感染しても症状が出ることは少ないですが、子ヤギさんが感染すると下痢とそれに伴い脱水が起こり亡くなってしまうこともあります。

治療は、抗コクシジウム剤を注射や飲み薬で投与します。

コクシジウム症の症状は、感染の量に比例するといわれていますので、コクシジウムがお口に入る量が多いほど、症状がより悪化します。

その為予防は、お掃除をしてヤギさんのお口に入るコクシジウムの数を減らすことです。コクシジウムは環境や薬剤に対して抵抗性が強いため完全に除去することは難しいですが、ヤギ舎のお掃除よって、コクシジウムの数を減らすことはできます。

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のどかちゃんにも、抗コクシジウム剤を注射と飲み薬で投与しました。

さらにのどかちゃんの場合、下痢の原因としてごはんの問題もありました。
まだ、おっぱいを飲む時期なのに、母ヤギさんが亡くなってしまって、1週間くらい飲めていない状態です。
草だけでは栄養が足りず、また消化も上手にできていないことが考えられました。

そこで、点滴の後少しお休みをはさんで人工哺乳をしました。
今まで、お母さんのおっぱいしか飲んでいなかったために、哺乳瓶で飲む練習が必要でした。
(このことについては、後日、「おっぱい大作戦ヤギ編」でお伝えしようと思っています)
練習の後、無事に哺乳瓶に慣れることができました。

ミルクの量の目安は、1か月齢では、体重の20%なので(家畜改良センター 飼養管理マニュアルより)
3kg弱ののどかちゃんは600ml必要です。
200mlを1日3回に分けて哺乳しました。

コクシジウムの治療と人工哺乳によって、便はこのように改善していきました。

2日目

3日目

おっぱいも上手に飲めるようになり、便もコロコロうんちに戻ったので無事退院することができました。
オーナーさんにあと1か月は人工哺乳をがんばっていただくことになります。

 

おっぱいを飲むのどかちゃんはとてもかわいくて、
元気になって退院して本当に良かったのですが、
帰った後の入院室をみてさみしい気持ちになったのでした。
診療の合間に顔を見に行こうと思っています。

のどかちゃん、お家のヤギさんたちと仲良く元気にね!

山羊の人工授精チャレンジ MMNS第1クール まとめ (2019年2月~2020年3月まで)

山羊の人工授精チャレンジ MMNS第1クール まとめ (2019年2月~2020年3月まで)

しばらく間があいてしまいました、「山羊の人工授精チャレンジ」
今回は2020年3月までのまとめをご報告します。

前回の人工授精チャレンジの記事「山羊の人工授精チャレンジ MMNS第1クール③ ついに・・・山羊の人工授精チャレンジ MMNS第1クール③ ついに・・・
で妊娠鑑定(+)だった山羊のCちゃんは、分娩予定日(2020年2月23日)より3日早い2月20日に
男の子と女の子のふたごの赤ちゃんを無事出産しました。
長野の家畜改良センターのザーネンの雄山羊さんの種で生まれたので、
長野にちなんで、りんごちゃんとかりんくんと名付けました。
現在、ゆうきさんの牧場で元気に育っています。

そして、島の山羊農家さんにご協力いただいて、発情同期化で人工授精した山羊のろくちゃんも無事出産しました。
この山羊さんは、プログラム+定時人工授精で妊娠しました。
上記の山羊のCちゃんは自然周期での人工授精での妊娠でしたので、この山羊のろくちゃんは発情同期化と定時人工授精がはじめて成功してとてもうれしかったです。

*ヤギのろくちゃんの発情同期化と定時人工授精まとめ

10月18日 ホルモン剤①
10月20日 ホルモン剤②
10月21日 ホルモン剤③ 夕方人工授精1回目
10月22日 朝人工授精2回目
11月30日 妊娠鑑定(+)

先日、診療でろくちゃんのヤギ舎に伺ったので、ろくちゃん親子に会ってきました。


元気に大きくなってね!!

4月からの取り組みは、「MMNS第2クール」として、これからも発信していきたいと思っています。