Monthly Archives: September 2021

ひとりぼっちのりんりん~自分の居場所~

今回のお話は、獣医としてではなく、いちヤギの飼い主としてのお話です。

ヤギを群れで飼育していると、そこに人間関係ならずヤギ関係が生まれていると感じます。
学術的にも、
「ヤギは群れる習性を持つと同時に、一定の個体間隔を保とうとする習性を持っており、
それらは社会的順位に反映する。群内の敵対関係、親和関係、性的関係、母子関係および人間あるいは他の動物との関係がある」
(ヤギの科学より引用)
また、「女王様ヤギ」という群れのリーダーがいて、飼い主さんが他のヤギに優しくすると意地悪をしてしまうことがあるようです。
飼い主さんは女王様ヤギがさみしい気持ちにならないようにはじめに優しくしてあげるのが対策とのこと。

順位とかやきもち、仲良しグループを作ったり仲間外れしたりとかいじめとか、
みんなと居たいけどひとりがいいとか・・・
ヤギ関係ってまるで人間関係!!

私がヤギの飼育管理の勉強をしているゆうきさんの牧場の、ヤギのりんりんは、小さいころから、のんびりやの女の子のヤギさんです。一緒に生まれた男の子のヤギさんにミルクを飲み負けてしまい、体調を崩したため、しばらく病院で預かり治療。元気になったところでまた、もとの群れで暮らすようになりました。

ヤギ関係は人間関係のように変化しているようで・・・
はじめは、群れに戻ってみんなとごはんを一緒に食べれていましたが、新しいヤギが入ってきたり、仲良しだったヤギのパンダがお引越ししたり、子ヤギたちの誕生・・・など
何かがきっかけで、群れの順位やバランスが変わったようでりんりんが群れになじめなくなっていきました。
ごはんをあげる場所を増やすなど工夫をしてみたものの、りんりんはみるみる痩せてしまい、
どこへいっても頭突きされ、食べる場所が見つけられないでひとりぼっちでたたずんでいることが多くなりました。
そこで、1頭で別に飼育してまずはとにかくりんりんの元気を取り戻すことにしました。

りんりんを元気なふくふくのヤギにするぞー!!
と、私は心に誓いました。

気合十分、毎朝、栄養たっぷりのネピアグラスを刈って、りんりんのところに通いました。
おいしそうに食べる姿をみてほっとしたものの、
しかし!!
タンパク質が多すぎで下痢・・・。そして自分で治療・・・。
バカバカバカー!!なんていうバカな事。初歩的な失敗。
反省し、気持ちを落ち着けて、
今度は、午前中、配合飼料と草地で自由に草を食べれるようにして、
午後は小屋で乾草と配合飼料を食べるようにしました。

そして、朝は私と一緒に牛舎の周りをお散歩。
野草(バナナの葉っぱ、おおばぎ、ガジュマル、センネンボク)を道草しながらいろいろ食べていました。


初めはリードをつけていましたが、リードなしでもついてくるようになり、
帰りは自分で小屋に入るようになりました。
そのうち、
牧場主のゆうきさんが牛のぼろだしで一輪車を押していると一緒についてお散歩するようになりました。

そして、ついに!!
ひとりぼっちだったりんりんに仲良しができました。

牧場猫のみーちゃんです。

一緒に寝たり、ふたりでぶらぶらしたりするようになりました。

りんりんは、
はじめに私やゆうきさんに慣れ、、
次に猫のみーちゃんと仲良くなり
そして、最後には、時々私と一緒に、
私が群れのヤギたちに草を運ぶときに一緒についてきて
自分でもう一度群れに入っていきました。
この時はどいてと他のヤギにどつかれても、負けずに食べていました。

りんりん強くなったねー。

散歩に行けるとはいうものの、元気になったりんりんが、
小さな小屋でなくのびのびと暮らせる環境はないかなと考えていた時、
動物が好きな子供たちのいる牛農家さんがりんりんのことを好きになってくれて
新しい家族のところでお家を作ってもらい暮らすことになりました。

りんりんとの日々で、
所属している場所に居場所を見つけられない時でも
世界は閉じているわけでなく
外の世界に心温まる繋がりを探すこともできる。
ぞして外ではなく自分自身とのつながりを結び直すこともできる。
その中で、受容される気持ち、受容する気持ちを自分の中にもてれば、
戻ることも、そのまま外に出ることも、そして、一人でいることも
人は自分で選んで、進んでいけるのではないかと感じました。

りんりんが元気になり、新しい家族のもとにいったあと、
良かったなと想うと同時に心にぽっかり穴が開いてしまったのも本当の気持ち。
しみじみ、さみしいなー。
元気にしようと頑張ってきたけど、元気にしてもらっていたんだな。

ありがとうね、りんりん。
どうかどうか幸せにね!!

 

山羊の診療Diary症例42 離乳後の乳房炎

山羊の診療Diary症例4 2 離乳後の乳房炎

今回の症例は・・・
「離乳後、片方の乳房が腫れていて元気がない」というご連絡がきました。
お話を伺うと、離乳後1か月ほど経過しているという事でした。
食欲・元気はあるものの、熱を測ると発熱しており、左側の乳房が拳大のしこりがあり、腫脹している状態でした。


乳を搾ってみると、透明の液体に時々クリーム状のものが詰まりながら出てくる状態でした。

写真 乳頭の先から白いクリーム状のものがでてきました。

これらの症状から乳房炎を疑い治療を開始しました。

ヤギの乳房はどんな構造?
ヤギの乳房は2つ(1対)あり、それぞれ乳区が分かれ独立しています。
乳房内には、上部に乳を産生する多数の乳腺胞があり、その下に乳をためておく乳腺槽があり、
そこから繋がる乳首にも乳をためておく乳頭層があります。

乳房炎とは?

乳房に細菌などの病原菌が侵入し乳房に炎症を起こします。
乳区が独立しているため、病原菌の感染はそれぞれの乳頭からの侵入で起こり左右間をまたいでの感染はありません。
*症状
乳房の腫脹、硬結が見られ熱感を伴う事もあります。また乳汁にも変化が見られます。
(乳汁が薄くなる、ブツブツとした塊が出てくる、クリーム状になるなど)
大腸菌の感染による乳房炎の場合、内毒素のエンドトキシンにより全身症状(元気食欲がなくなる・発熱・起立不能など)があらわれ、
急性に経過が進み乳房の壊死や死亡することがあります。

治療は乳房洗浄と抗生物質の全身投与を行い、熱が下がったところで乳房内に抗生物質の投与を数日間しました。
しこりは残ったものの、乳房の腫脹が減り、全身状態も良くなったので終診としました。

乳房洗浄の方法
①乳を搾る。
②生理食塩水に抗生物質、抗炎症剤を加えて、洗浄液を作る。
③点滴のラインをつけ留置針の外芯のプラスチックの針の部分を乳頭から差し込み洗浄液を乳房内に入れる。
④その後、乳房をやさしくマッサージしながら洗浄液を絞って出す。
⑤②と③を数回繰り返す

はじめに乳を搾ります

乳房洗浄中です

先端はこんな感じです

飼い主さんにできること
・飼育場所を清潔に保つ。
・清潔で適切な搾乳をする。
・乳房炎に罹患した際は、獣医師の指示のもと頻回に搾乳する。
・乳房炎の母ヤギの乳は子ヤギに与えないで人工哺乳をする。

特に、乳房炎の場合は、飼い主さんに乳を搾っていただくことが重要になります。
乳房の中は、体温で温かく、ミルクという栄養があるので細菌が感染すると培養器のように
なってしまいます。
今回も初めは、飼い主さんが一人で難しいという事で、
通いながら一人でも搾乳できるようにヤギの保定の仕方から練習しました。
無事、できるようになり、ヤギさんも元気になりほっとしました。
乳房炎で腫れている乳房の搾乳はヤギが痛がる場合があり、飼い主さんも大変だと思いますが、
これも治療の一環なので、担当の獣医師と相談しながら頑張ってくださいね。