Monthly Archives: May 2019

3-3=12? 牛の分娩予定日 算出方法

たまには牛さんのこと。

突然ですが・・・計算問題です。

3-3=?

私が大きな声で0といったら、
農家さんも院長先生も・・・みんなあきれ顔。
ほんとうなら答えはあっているのに!!
なんでー。

牛の農場では

3-3=12
2-3=11
1-3=10

になります。

いったいこれは何の式?

これは牛の分娩予定日の算出方法なのでした。

 

牛の分娩予定日 算出方法

牛の妊娠期間は285日。
えーっと。
今日種付けした牛はいつ生まれるかというと・・・。
普通に考えると頭がこんがらがるので
簡単に出産予定日を算出できる式があります。

牛の分娩予定の算出方法は・・・

種付けの月から3を引いて、日にちに10を足す

です。

だから先ほどの式をよく見ると・・・

3月の3か月前=12月
2月の3か月前=11月
1月の3か月前=10月

なのでした。

たとえば・・・
10月20日に種付けなら?

→10月から3を引いて7月、20日に10足して30日。

答えは7月30日に出産予定になります。

わーい、簡単にできた!

これならすぐに種付け日から出産予定がわかりますね。

それでは早速練習してみましょう~。

 

*練習問題

4月5日種付けなら?

→4月から3を引いて1月、5日に10を足して15日。

答え 1月15日に出産予定

 

*応用問題

2月3日種付けなら?

→2月から3を引いて-1月は11月、3日に10を足して13日。

答え 11月13日に出産予定

 

*さらに応用問題

1月25日種付けなら?

→1月から3を引いて-2月は10月、25日に10を足して35日・・・35日は次の月に繰り上がって4日になります。

答え 11月4日に出産予定

できましたかー?

 

ヤギの分娩予定日 算出方法

そして、最後はやっぱり山羊さんのこと!
山羊さんはというと・・・
妊娠期間が150日(5か月)なので、
種付けした月に5を足すだけで大丈夫です。なんてシンプル!

わたしはやっぱり山羊が好きー。子ヤギ

山羊の診療Diary 症例12-2 山羊の起立不能(経過)~腰麻痺疑い~

*山羊の診療Diary  症例12-2 山羊の起立不能(経過)~腰麻痺疑い~

前回の記事「山羊の診療Diary  症例12  山羊の起立不能(初診) ~腰麻痺疑い~」の続きです・・・

 

腰麻痺の詳細については、山羊の診療note6 ~腰麻痺(脳脊髄糸状虫症)について~ にも詳しく說明をしています。

診療2日目: 腰麻痺の疑いから、駆除剤の注射を継続

腰麻痺の疑いで、立てなくなってしまったみやちゃんの再診2日目です。
今日も駆虫剤の注射を続けます。

腰麻痺は、指状糸状虫によって神経が損傷された部位にもよりますが
神経の損傷が軽いうちに駆虫剤の投与を行えば回復の可能性が高くなります。
その経過は、1日で回復することもあれば、1ヶ月以上経ってから回復することもあります。
しかし、残念ながら、麻痺がそのまま残ってしまうこともあります。

 

回復までの間に飼い主さんができること。看護とリハビリの重要性

治療自体は駆虫剤の投与で終わりですが、
回復までの間に飼い主さんができることがあります。
それは、看護とリハビリです。
座りっぱなしによる褥瘡(床ずれ)や誇張症を防止すること、
栄養状態が悪くならないようにすることが大切です。
また、足腰の筋肉が弱らないようにリハビリも重要になってきます。

今回、みやちゃんの看護とリハビリについていろいろ考えました。
先ほどの理由により、
一日に何度か立たせてあげることが必要ですが、
みやちゃんは70kg体重があり、なおかつ出産前でおなかも乳房も大きくなっています。

 

ロープワークのアイデアを応用し、リハビリに活かすことに

そこで、ロープを使って、お腹や乳房に負担にならないように縛り、
オーナーさんが一人でも滑車などを使って持ち上げるのはどうかと考えました。

はじめに、ゆうきさんにロープワークのアイディアをいただいて、
まずは小さな山羊さんで練習。

山羊ロープワークの練習

その後、院長先生にその縛り方を応用していただいて、
最終的にオーナーさんと一緒に持ち上げることができました。

ロープワークで山羊を持ち上げるロープでリハビリをする山羊
ヤギ腰麻痺のリハビリ
そして、一週間一日3回くらいみやちゃんをも持ち上げてもらい、
リハビリをしていただくことになりました。

 

1週間後・・・自分で立とうとする意欲が生まれる

オーナーさんの懸命な看護とリハビリの結果、
みやちゃんは後ろ足と前足の片方には力が入るようになり、
そして、自分で立とうという意欲が出てきました。

自分で立とうとする山羊

しかし、前足の片方が曲がったままになり伸ばせなくなっているのは続いていました。

前肢の麻痺

みやちゃんは今回、前足に強く症状がでているようです。
腰麻痺という名前から腰や後ろ足が麻痺してしまうイメージを受けますが、
このように前肢の麻痺で立てなくなることもあります。

前足に、義足のような支えになるものがあればもしかしたら立てるかもしれないと
可能性を探っています。

今後もリハビリを続けていただきながら、出産まで頑張れるように
みやちゃんとオーナーさんのサポートを続けられたらと考えています。

*山羊の診療Diary  症例12  山羊の起立不能(初診) ~腰麻痺疑い~

*山羊の診療Diary  症例12 山羊の起立不能(初診) ~腰麻痺疑い①~

今回の症例は・・・

出産を1か月後に控えた山羊さんが立てなくなったという連絡が来ました。

みやちゃんは体重70kgくらいのおっきな山羊さんです。

大きな山羊

まずはじめにみやちゃんのオーナーさんからお話を伺いました。
昨日から急に座り込んでしまい立てなくなってしまったそうです。
食欲と元気はあって、うんちやおしっこも問題ないということでした。
そして、一ヶ月後に出産を控えているとのことです。

診察をしてみると・・・

体温 39.5℃
咳やくしゃみなし
触診で肢に骨折やケガなどなし
右側の乳房腫脹
脱水 なし
聴診異常なし
腹部 妊娠により大きくなっている以外は膨満などなし
便確認 問題なし
陰部からの触診 外子宮口 指1本分開口

 

山羊が「立てなくなった」(起立不能)のときに考えられる病気

山羊さんが「立てなくなった」という症状があるときに考えられる病気は

・腰麻痺
・骨折や捻挫など後ろ脚の異状
・誇張症などの胃腸の病気
・感染症による発熱で全身症状が悪化している
・乳房炎

などがあります。

今回、みやちゃんの問診及び診察から、
腰麻痺が一番に疑われました。

 

腰麻痺(脳脊髄糸状虫症)とは。主な症状

腰麻痺とは指状糸状虫という寄生虫が蚊から山羊さんの脳や脊髄に入り、
神経を損傷する病気です。
感染後、2週間~1か月後に症状があらわれます。
そして症状は神経が損傷された部分によって異なります。

主な症状として・・・

・突然の腰部や後肢の麻痺
・歩様のふらつき
・起立困難
・頭が片方に傾く(斜頸)
・顔面神経麻痺により涎を垂らす、ごはんが食べられなくなる
・前足の麻痺で起立できない

などがあります。

腰麻痺は山羊さんにとって重要な病気の一つなので改めて
下記の「山羊の診療note6 : 腰麻痺(脳脊髄糸状虫症)について」でお話ししますね。

山羊の診療note6 ~腰麻痺(脳脊髄糸状虫症)について~

 

ヤギ腰麻痺の治療内容

今回の治療は・・・
・イベルメクチン注射

腰麻痺の治療のため、駆虫剤のイベルメクチンの投与をおこないました。
これは症状が出ているため3日間続けます。

・抗生物質の投与

乳房に熱感・硬結があり産前の乳房炎の可能性も考えられたので
抗生物質の注射をしました。

・ブドウ糖静脈注射
食欲はあるというもののいつもより量が少ないので食欲刺激のため
ブドウ糖の投与を行いました。

最後に、
オーナーさんに、立てないみやちゃんがごはんを食べやすいように、
お顔の前にごはんを置いてあげることや体の下に乾草などを敷いて、
褥瘡ができないようにしてもらうことをお伝えし初日の診療は終わりました。

続く・・・

続きの記事: 山羊の診療Diary 症例12-2 山羊の起立不能(経過)~腰麻痺疑い~

☆☆書籍のご案内☆☆

書籍「ヤギの診療」 
著 寺島杏奈
出版 日本橋出版
2022.7.31発刊

腰麻痺についてだけでなく、ヤギの飼い方、消化の仕組み、診断の方法、他のよくある病気についても体系的に解説しています。

☆☆☆☆

同じ景色、違う想い

診療の途中…

突然現れた

お花畑

そばのお花が満開でした

お花畑って夢のよう

揺れるお花を見ていたら

昔読んだ

絵本を思い出した

小さな白いお花畑で

ひとりでぽつんと

空を見ていた

迷子の子羊

同じ景色をみても

感じることは

みんな違う

ひとりひとりの

違う世界

同じ景色と違う想い

あなたにはどんな風に

みえますか?

違うからこそ

その想いを

映してみたい

でもね

わたしは信じている

その違いを超えた

ずっとずっと

奥に

普遍的な世界があって

そこでまた出会える人がいる

ことを。

山羊の人工授精チャレンジ ~精液の性状~

山羊の精液についての調査

私の目標は凍結精液での現場でできる人工授精です。
しかし、まずは受胎率の高い液状精液での人工授精も考えはじめたので、
山羊の精液について調べてみました。
(液状精液での受胎率60~70%、凍結液精液での受胎率20~30%)

まずはじめに精液が正常かどうか検査をする

液状精液は、雄山羊から精液採取した後、はじめに精液が正常か検査をします。
そして液状保存用希釈液で薄めて、2時間程度かけて4~5℃に温度を下げます。
その後、遮光して冷蔵庫で保存して、人工授精に利用します。

日数経過による状態変化

1週間保存は可能ですが、3日間以内に使用すると良好な受胎率が期待できるとのことです。
実際、私は長野支場に研修に行ったときに、2頭の雄の精液を、
3日目と5日目に顕微鏡で見せてもらいました。
3日目は2つとも精子の活力が良好でしたが、
5日目は1つは良好、もう一つは活力がかなり落ちていて、
人工授精では使用できない状態でした。

 

精液検査の方法

精液の検査は…

*肉眼的検査

・精液量 1ml (0.5~1.5ml)
・色   白色~クリーム色
・におい 無臭
・PH   6.8(6.4~7.1)
・雲霧状態 +++
・粘稠度 濃厚で粘稠
・活力概観 渦流
・比重 1.032~1.047 (平均 1.039)

*顕微鏡検査

・活力、生存率 90+++,90%以上
・精子数 20億/ml(11~40億/ml)
・奇形率 10%以内

 

*不良精液

・無精子のもの
・血液(精液がピンク)や尿、膿の混入
・精子の生存率、活力が極端に悪いもの
(新鮮精液で生存率が50%以下のもの。活力++以上のものが50%以下のもの)
・奇形率が極端に高いもの(山羊の平均奇形率は22%)
・PHが著しく酸性またはアルカリ性のもの

そして、
山羊さんはは家畜の中で精液量が最も少なく(平均1ml)
逆に最も精子濃度が濃く、精液量の約1/3を精子が占めています。

山羊の診療Diary 症例11 山羊の跛行

*山羊の診療Diary  症例11 山羊の跛行

今回の症例は・・・

ゆうきさんのお家の山羊さんたちに夕方ごはんをあげにいくと、
その中の1頭の山羊さん、ゆきちゃんが右後ろ足を痛そうにしていることに気がつきました。
昨日までは元気にしていたのにどうしたのでしょう。
ゆきちゃんの様子をみていると食欲と元気はあります。

 

ヤギの跛行診察。触診時には「痛くないところから触る」

それではさっそく診察をはじめましょう。

まずは視診。歩く姿を観察してみます。

すると、ゆきちゃんは右後ろ脚をあげて歩いています。

足を挙上(上げる)する病気は

・骨折、捻挫
・背骨、股関節、膝、蹄などの異常
・神経や筋の損傷
・靱帯と腱の損傷
・蹄の間に棘が刺さる

などがあります。

次に触診をしていたい部分を確定します。
触診時気をつけるところは

「痛くないところから触る」です。

なぜかというと、
痛いところから触ると、痛みで動物が嫌がったりびっくりして
その後、どこを触っても痛がる反応や嫌がる反応をするようになり、
本当に痛いところがどこかわからなくなってしまうからです。

ゆきちゃんの肢を触診してみると、
足根骨(踵)の部分が腫れて痛みがあることがわかりました。

ヤギ足根骨(踵)の腫れ

さらにその部位は熱感がありなにか液体が入っているような感触がありました。
そして、腫れている部分の皮膚を見るとごっそり毛が抜けていました。

また、腫れている部分の液体が何か確認するために
針を刺しました。(穿刺検査)

ヤギ足の穿刺検査

吸引された液体はさらさらした薄いピンク色の漿液でした。
もし、膿が出てきた場合は、細菌感染からの化膿性関節炎が疑われます。

もしかしたら、ゆきちゃんはどこかに足を挟んでしまったのかもしれません。
そこから足を外そうとしたときに挟まっていた毛がごっそり抜けてしまった可能性がありました。

 

治療内容。抗生物質と抗炎症剤の注射、鎮痛・消炎効果のあるカンメルブルーを塗布

以上のことから今回ゆきちゃんの治療は・・・

今後の感染を防ぎ痛みや腫れを取り除くために、
抗生物質と抗炎症剤の注射をしました。

抗生物質と抗炎症剤の注射

そして、患部には鎮痛・消炎効果のあるカンメルブルーを塗布しました。
腫れが引くまで1日2回肢にスプレーを続けてもらうことにしましました。

カンメルブルーを塗布

このスプレーは名前の通り青色なので
ちゃんとお薬がついているのかわかりやすいです。

次の日はまだ足を引きずり腫れがありましたが
2日後には元気なりました。
そして、山羊さんは隙間などに足を挟んでしまうことが多いので
この後、ゆきちゃんの小屋に危ない場所がないか確認しました。
山羊さんが隙間に足を挟むとひどいときには骨折などの事故にもつながりますので、
山羊小屋の隙間など山羊さんにとって危ない場所がないか気をつけてあげてくださいね!

メリーとマリー

わたしはメリー。
毎日ここで草を食べてるの。

わたしはマリー。
毎日ここで草を食べてるの。

そこに、女の子のユリちゃんが来ました。

あ、ユリちゃんが来たー!
わーい!あそぼ〜!

ユリちゃんは言います。
メリーちゃんは、白くてきれいね!
だから、美味しいトウモロコシをあげる!

マリーちゃんは、なんか茶色くてきたない!
私はメリーちゃんが好き!
メリーちゃん、あそぼー!

わーい!あそぼー!

…。
わたしは?わたしは?
…。

向こうでメリーちゃんとユリちゃんは楽しく遊んでいます。

めーん。
わたしは…。めーん。

わたしは、ユリちゃんと仲良しのメリー!
毎日ここで、ユリちゃんと遊んでるの。

わたしは、茶色くて汚いマリー。
ユリちゃんに遊んでもらえないの。
めーん。めーん。

だれかあそぼう?だれかー。
マリーちゃんは、丘を登って、
どこまでもあるいて行ってしまいました。
めーん。めーん。と泣いていました。

ある日。今日もユリちゃんとメリーちゃんはなかよく遊んでいました。
日が暮れて帰るとき、ユリちゃんが言います。

メリーちゃん。今日でお別れなの。
わたしはずっと遠くに行くことにしたの。
メリーちゃん、大好き。
楽しかったわ!元気でね!

メリーちゃんはなにも言わず。
ただめーん。めーん。と泣きました。

大好きなユリちゃん。行っちゃったんだ。

だれかあそぼう?だれかー。
メリーちゃんは、丘を登って、
どこまでもあるいて行きました。
めーん。めーん。と泣いていました。

何日も、何日も、あっちの草を食べたり、こっちの草を食べたりして、歩きました。

メリーちゃんはそのうち、どこに向かっていたのか、なにをめーん。と泣いていたのか、忘れてしまいました。

めーん。
ああ。今日も朝日がきれいだな。
青い草のにおいも素敵だな!

めーん。
でも、ひとりはちょっと寂しいな。
だれかあそぼう?だれかー!

あそぼう!
声とともに、向こうの茂みから、何頭かのヤギが出てきました。

そのうちの一頭は、茶色くて、汚いヤギ。

はじめまして!
わたしは、マリー!
毎日ここで、みんなと遊んでるの。
あなたのおなまえは?

はじめまして!
わたしは、メリー!
毎日だれかを、探していたの。

いっしょにあそぼう!
マリーちゃんは、茶色くてかわいいね!

うん。あそぼう!
メリーちゃんは、白くてきれいだね!
あっちの草が、美味しいんだよ!
めーん。めーん。

メリーちゃんは嬉しくて、楽しくて、
めーん。めーん。となきました。

今日もみんなで、
めーん。めーん。

多分、明日もみんなで、
めーん。めーん。

毎日、遠くの山に日が沈むまで、
みんなでなかよくあそびました。

おしまい。