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山羊の診療Diary症例24 胎盤停滞

山羊の診療Diary症例24 胎盤停滞
今回の症例は・・・

出産後の母山羊さんが元気がなく、
陰部から胎盤が垂れ下がったままになっているという連絡が来ました。

産後に「陰部から何か出ている」という飼い主さんのお話があったとき、
出産後排出されるはずの胎盤が出ない「胎盤停滞」という病気や、子宮が出てしまう「子宮脱」という主に2つの病気が考えられます。
(子宮脱については、山羊の症例Diary症例1参照)

子宮脱の時には、診療に向かうまでの間に飼い主さんにお願いしたいことがあり、
それがその後の治療にとても大切なことになってきます。
そのため、電話でていねいに飼い主さんのお話を聞き取ります。

子宮脱を発見したときに、
獣医さんが来る前に飼い主さんができること(復習)

・山羊を立たせる
・子宮の汚れをお水でそっと流す
・砂糖を振りかけておく
・ビニールでおおう

今回は、電話で確認すると子宮ではなく胎盤の可能性高かったので、
そのまま診療に向かいました。

早速、診療をはじめると・・・

この母山羊さんは昨日の夜に3つ子の赤ちゃんを出産していました。
残念ながら1頭は亡くなっていました。

熱を測ると38.7℃で平熱でした。
陰部からは排出されきれなかった胎盤がぶら下がっていました。
全身状態は脱水があり、栄養状態はやせていました。

胎盤停滞と診断し、治療を行いました。

胎盤停滞とは・・・
胎盤(たいばん)とは、母牛のお腹の中で、赤ちゃん山羊さんとつながって栄養を与えているものです。
胎盤は通常、分娩後1~6時間で排出されます。
これが12時間以上残ってしまうものを胎盤停滞といいます。
胎盤停滞を起こすと子宮に炎症を起こし、食欲不振や発熱することがあります。
また、垂れ下がっている胎盤は細菌感染のもとになるので、お母さん山羊の乳房炎や子山羊の下痢の原因にもなります。

治療

①垂れ下がっている胎盤は、基本的に自然に排出されるのを待ちます。
乳房を汚して子ヤギの細菌感染の元になるので出ている部分にカバーをつけました。

この状態で山羊さんの全身状態、検温をしながら数日経過を見ます。
経過を見る際、食欲がなくなったり、熱がある場合は早めに獣医さんに相談してください。

注意 胎盤停滞の時にやってはいけないこと!!
強く引っ張って無理矢理出すことです。
引っ張って胎盤が千切れ、子宮内に残ると子宮の回復が遅れたり、産褥熱や子宮炎の元になることがあります。

②脱水の補正
脱水状態だったので静脈から点滴をしました。

③ブドウ糖・ビタミン剤・カルシウム剤の注射
元気・食欲がなく、栄養状態も良くなくやせていたのでブドウ糖と産後の低CA血症の可能性も考えてカルシウム剤を点滴剤と一緒に投与しました。

④抗生物質の投与
発熱はこの時点でなかったものの、元気がなく全身状態も良くなかったため、子宮炎や乳熱の可能性も考え抗生物質の注射を行いました。

⑤子山羊さん達に初乳の投与

このお母さん山羊さんはおっぱいがかなり下の方に垂れ下がっており、子山羊さん達が上手に飲めない状況でした。おっぱいをしぼってみると乳は良く出る状態でした。
はじめにお母さん山羊さんに台に乗ってもらって、おっぱいの位置を高くしました。

次に子山羊さん達を口を乳頭に近づけて、おっぱいの場所を教えてあげるとなんとか2頭とも吸うことができました。
しかし、口をつけたもののすぐに座り込んでしまう状態だったので、乳をしぼって初乳の人工ほ乳を行うことにしました。

元気のない白い子山羊さんは経鼻カテーテルで飲ませました。
初乳を飲まないと、子山羊さんは病原体から身を守ることができません。生存する可能性が極端に低くなってしまう為、どうしても飲ませる必要があります。

茶色の子山羊さんは自分で吸う力があったので、ほ乳瓶で飲ませました。

飼い主さんには、母山羊さんの胎盤と全身状態の観察、子山羊さんがおっぱいを飲めているかの確認、もし飲めなければ人工ほ乳をしてもらうようにお願いしました。

次の日、飼い主さんから胎盤が落ちて、お母さん山羊さんも子山羊さんたちも食欲・元気があるとご連絡いただきました。
ほっと一安心。子山羊さんたちがこのまま元気に大きくなりますように!!

胎盤停滞は、牛では、難産、早産、双子、分娩前の栄養不良等の時に発生が多いといわれていますが、具体的な発生の仕組みはまだ解明していません。
そのため、飼い主さんができる予防策はありませんが、少なくとも山羊でも要因の一つと考えられている分娩前の栄養管理をしっかりしてあげることが大切だと思います。

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