Monthly Archives: February 2020

山羊の獣医師個別研修の受け入れを行いました

先日、山羊の獣医師個別研修の受け入れを行いました!

今回研修に参加されたのは、
関東で小動物病院を経営されている獣医師ご夫妻です。
山羊さんをご自分で飼育されているということで、
今後地域の山羊さんの診療を受け入れたいというお話でした。

 

今回のヤギ獣医師研修の内容

今回の獣医師研修の内容はこちらです。

1.山羊の飼育で獣医師が知っておく届け出など
2.山羊の保定法・ロープワークの実習
3.山羊の診療
・山羊の往診時の初診症例へのアプローチ法
・身体検査・体温測定
・心臓・肺の聴診
・腹部の触診・聴打診法
4.注射法・採血法・留置針の挿入法の実習
5.経口カテーテル・経鼻カテーテルの挿入方法について実習
6.妊娠鑑定
7.質疑・応答

 

実際の実習風景を写真で

実際の実習風景はこちらです。

山羊の診療や法律についての座学風景
はじめに座学で山羊の診療の基本や法律のお話をしました

 

山羊を追い込む練習山羊を追い込んで捕まえる実習風景

山羊を追い込んで捕まえる実習です

 

ヤギ診療のための保定法・ロープワークの実習風景
ヤギ診療のための保定法・ロープワークの実習

 

点滴の為の静脈留置の実習風景静脈留置の実習を受ける受講者

点滴の為の静脈留置の実習

 

経口カテーテル挿入の実習風景
経口カテーテル挿入の実習

 

妊娠鑑定の実習風景
妊娠鑑定の実習

 

削蹄の実習風景

削蹄の実習

 

山羊のかかりつけ獣医師が増えるには、小動物病院での受け入れが不可欠。より良い診療体制のために

山羊の獣医師の個別実習の受け入れを決めたのは、
山羊のかかりつけ獣医師が増えるには、小動物病院での受け入れが不可欠だと考えたからです。
また、山羊を診療する獣医さんが増えれば、
私たちも、小動物の先生や他分野の獣医さんから学ばせていただくくことができ
診療体制がより良いものになっていくのではと思いました。
山羊の診療に関わる獣医さんの仲間が増える様に今後も個別研修の受け入れをおこなっていきます。

山羊や牛の獣医師研修は・・・
宮古獣医科医院で受け付けています。
(本記事のコメントもしくは研修の案内ページからご連絡ください)

 

日本では山羊の診療や薬用量の専門の本が少ない。山羊の診療を始める人が学びやすいように

山羊科で診療をはじめる体制を作るまで、私ははじめ試行錯誤しました。
日本では山羊の診療や薬用量の専門の本が少ないのです。
ゆうきさんの牧場で山羊の飼養管理から学びはじめ、
家畜改良センターの長野支場の個別研修を経て、現在山羊科のある宮古獣医科医院で院長の指導の下、
現在ひとつずつ症例を積み重ねて今があります。

まだまだ自分自身、勉強の途中ですがですが、次に山羊の診療を始める人が同じ苦労をしないように自分が得てきたものは、
研修やこのブログを通して発信していきたいと思っています。

今回の実習の後、助けていただいてるみなさん、応援して支えてくれているみなさんに
これから少しずつお返ししていきたいと改めて思いました。
たくさんの恵みを私たちに与えてくれる山羊さんたちが元気に暮らせるように
みんなで力をあわせていきましょう。

子ヤギの写真

山羊の診療note9 山羊の血液型

山羊の診療note9 山羊の血液型

先日、山羊さんの治療で輸血を行いました。

輸血を受ける山羊

今日はその輸血のお話の前に山羊の血液型のお話をしたいと思います。

人間の血液型の分類方法

まず、私たち人間の血液型のお話を少ししましょう。

人間の血液型で一番有名なのは、ABO式ですね。
これは血球の表面にある血液型抗原と呼ばれる物質で血液を分けたものになります。

ABO式血液型

赤血球にA抗原を持っている→A型
赤血球にB抗原を持っている→B型
赤血球にA抗原もB抗原もない→O型
赤血球にA抗原もB抗原もある→AB型

Rh式血液型

そして、もう一つ有名なのがRh式です。
Rh式血液型には血液型抗原の数が50種類もありますが、
その中のRhD抗原が輸血で重要な血液型抗原でRhDがあるかないかでRh型の分類をしています。
RhD血液型抗原がある→Rhプラス
RhD血液型抗原がない→Rhマイナス
ちなみに、日本人は99.5%の人がRhプラスとのことです。

 

山羊の血液型の分類方法

そして、肝心の山羊さんですが・・・
山羊さんにはA・B・C・M・R-O・V-Wの6種類の血液型システムがあります。
さらにB血液型システムの中には数十種類の血液型抗原(型)があり、
品種によって血液型の割合が違い、ザーネン種はB15型が多く、アルパイン種はB17型が多いそうです。
次回は輸血のお話をしたいと思います。

今回、参考にさせていただいた本はこちらです!!
「人とどうぶつの血液型」編著 近江俊徳 博士 (医学)緑書房

「人とどうぶつの血液型」編著 近江俊徳 博士 (医学)緑書房

山羊の診療Diary症例24 胎盤停滞

山羊の診療Diary症例24 胎盤停滞

今回の症例は・・・

出産後の母山羊さんが元気がなく、
陰部から胎盤が垂れ下がったままになっているという連絡が来ました。

産後に「陰部から何か出ている」という飼い主さんのお話があったとき、
出産後排出されるはずの胎盤が出ない「胎盤停滞」という病気や、子宮が出てしまう「子宮脱」という主に2つの病気が考えられます。
(子宮脱については、山羊の症例Diary症例1 「子宮脱」参照)

子宮脱の時には、診療に向かうまでの間に飼い主さんにお願いしたいことがあり、
それがその後の治療にとても大切なことになってきます。
そのため、電話でていねいに飼い主さんのお話を聞き取ります。

 

子宮脱を発見したときに、獣医さんが来る前に飼い主さんができること

子宮脱を発見したときに、
獣医さんが来る前に飼い主さんができること(復習)

・山羊を立たせる
・子宮の汚れをお水でそっと流す
・砂糖を振りかけておく
・ビニールでおおう

今回は、電話で確認すると子宮ではなく胎盤の可能性高かったので、
そのまま診療に向かいました。

早速、診療をはじめると・・・

胎盤停滞の症状がある山羊

この母山羊さんは昨日の夜に3つ子の赤ちゃんを出産していました。
残念ながら1頭は亡くなっていました。

熱を測ると38.7℃で平熱でした。
陰部からは排出されきれなかった胎盤がぶら下がっていました。
全身状態は脱水があり、栄養状態はやせていました。

胎盤停滞と診断し、治療を行いました。

 

胎盤停滞とは・・・

胎盤(たいばん)とは、母牛のお腹の中で、赤ちゃん山羊さんとつながって栄養を与えているものです。
胎盤は通常、分娩後1~6時間で排出されます。
これが12時間以上残ってしまうものを胎盤停滞といいます。
胎盤停滞を起こすと子宮に炎症を起こし、食欲不振や発熱することがあります。
また、垂れ下がっている胎盤は細菌感染のもとになるので、お母さん山羊の乳房炎や子山羊の下痢の原因にもなります。

 

胎盤停滞の治療

①垂れ下がっている胎盤は、基本的に自然に排出されるのを待ちます。

乳房を汚して子ヤギの細菌感染の元になるので出ている部分にカバーをつけました。

山羊の胎盤にカバーをかける

この状態で山羊さんの全身状態、検温をしながら数日経過を見ます。
経過を見る際、食欲がなくなったり、熱がある場合は早めに獣医さんに相談してください。

注意 胎盤停滞の時にやってはいけないこと!!

強く引っ張って無理矢理出すことです。
引っ張って胎盤が千切れ、子宮内に残ると子宮の回復が遅れたり、産褥熱や子宮炎の元になることがあります。

②脱水の補正

脱水状態だったので静脈から点滴をしました。

③ブドウ糖・ビタミン剤・カルシウム剤の注射

元気・食欲がなく、栄養状態も良くなくやせていたのでブドウ糖と産後の低CA血症の可能性も考えてカルシウム剤を点滴剤と一緒に投与しました。

④抗生物質の投与

発熱はこの時点でなかったものの、元気がなく全身状態も良くなかったため、子宮炎や乳熱の可能性も考え抗生物質の注射を行いました。

⑤子山羊さん達に初乳の投与

このお母さん山羊さんはおっぱいがかなり下の方に垂れ下がっており、子山羊さん達が上手に飲めない状況でした。おっぱいをしぼってみると乳は良く出る状態でした。
はじめにお母さん山羊さんに台に乗ってもらって、おっぱいの位置を高くしました。

次に子山羊さん達を口を乳頭に近づけて、おっぱいの場所を教えてあげるとなんとか2頭とも吸うことができました。
しかし、口をつけたもののすぐに座り込んでしまう状態だったので、乳をしぼって初乳の人工ほ乳を行うことにしました。

元気のない白い子山羊さんは経鼻カテーテルで飲ませました。
初乳を飲まないと、子山羊さんは病原体から身を守ることができません。生存する可能性が極端に低くなってしまう為、どうしても飲ませる必要があります。

経鼻カテーテルで初乳を飲む子ヤギ茶色の子山羊

茶色の子山羊さんは自分で吸う力があったので、ほ乳瓶で飲ませました。

飼い主さんには、母山羊さんの胎盤と全身状態の観察、子山羊さんがおっぱいを飲めているかの確認、もし飲めなければ人工ほ乳をしてもらうようにお願いしました。

次の日、飼い主さんから胎盤が落ちて、お母さん山羊さんも子山羊さんたちも食欲・元気があるとご連絡いただきました。
ほっと一安心。子山羊さんたちがこのまま元気に大きくなりますように!!

 

胎盤停滞発生の仕組みはまだ未解明。分娩前の栄養管理をしっかりしてあげることが大切

胎盤停滞は、牛では、難産、早産、双子、分娩前の栄養不良等の時に発生が多いといわれていますが、具体的な発生の仕組みはまだ解明していません。
そのため、飼い主さんができる予防策はありませんが、少なくとも山羊でも要因の一つと考えられている分娩前の栄養管理をしっかりしてあげることが大切だと思います。

「山羊の友」第41号に寄稿、掲載されました

全国山羊ネットワークで年2回発行されている会報「山羊の友」の第41号に寄稿し掲載されました。

ヤギの友

内容は山羊サミットでの発表をまとめた「山羊の病気と削蹄」です。

全国山羊ネットワークとは・・・・(ホームページより)

「全国山羊ネットワークは、山羊やその生産物に興味のある方々の集まりです。
山羊を飼っている・いないに関わらず個々の山羊に関する情報を交換し合い、我が国における山羊の振興を図ることを目的としています。」

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