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山羊のセリ市に行ってきました!

山羊のセリ市に行ってきました!

先日、沖縄県の南部家畜市場で行われている山羊のセリ市に行ってきました。
こちらの市場では、偶数月に山羊市が開催されています。
年6回の山羊のセリ市。今回は今年最後のセリでした。

上場頭数は248頭!今回は頭数が多いとのこと。
セリ市場に到着すると、車の中からでも
山羊さんたちのメーメーという声が聞こえてきました。
ワクワクする!!
牛のセリは毎月、私の住む島で行われており、仕事で行くことも多いのでおなじみですが
山羊のセリは初めてです。

さっそく、車を降りて市場へ場所へ行くと・・・
はじめに、山羊さんたちは順番に並んで、体重測定をしていました。
体重は番号の下に赤いマジックで書かれていました。

そして、山羊さんたちが繋がれている係留所へいくと・・・

わー。山羊さんがいっぱーい。
うれしくて、大興奮。
一緒に行った、ゆうきさんに「まずは、落ち着いて・・・苦笑」
と言われたものの目の前も頭の中も山羊さんでいっぱいになってしまいました。

深呼吸して、セリ名簿を見ながらセリが始まる前の下見で、
セリ落としたい山羊さんを探します。
今日は、私はボア種が入った女の子を山羊を探しに来たのです。

いろんな山羊さんがいます。

黒山羊さん。とっても可愛くて人に慣れています。
オーナーさんもいいこですよとお話してくれましたが、
男の子の山羊さんでした。

お化粧したみたいな模様の山羊さん。

茶色い山羊さんや大きい子から小さい子までほんとにいろんな山羊さんがいました。

その中で、私が一目ぼれした子はこの山羊さん

ボア種のF1の女の子です。(お父さんがボア種)
とても人に慣れていて、優しい顔をしていました。

オーナーさんにお話を伺うと、中学生の娘さんが大切に育てたとのこと。
成長過程の山羊さんの写真を見せていただきました。
写真をみて、大切に育てられたことがわかり、この山羊さんに1頭目は決めました。

そして、もう1頭。
体は小さめですが、かわいい山羊さんを見つけました。
ボア種のF2の女の子です。
県の畜産研究センターで育てられた女の子でした。

この2頭に決めて、いよいよセリがスタートしました。
セリの様子はこちらです。

順番が近づくと緊張してきました。
そして、はじめはF1のボアちゃん。どきどきしましたが、予算内でセリ落とせました。
次にF2の女の子。思っていたより若干値段が上がりましたが、
ことらもセリ落としました。
なんとか無事2頭セリ落としてほっと一安心。
オーナーさんに声をかけて、購入したことと大事にすることをお伝えしました。

セリが終わると、運搬屋さんが島に運ぶ準備をしてくれます。
トラックに乗せられて港に行き、船に乗って明日到着。

無事に島に来てねと山羊さんたちを送り出し、私たちも飛行機で帰りました。

次の日のお昼には、ゆうきさんのヤギ牧場に到着。
元気にごはんを食べていて一安心。
はやく、牧場のみんなになじめるといいなと思いました。

はじめての山羊のセリ体験でしたが、とっても楽しい一日でした。
山羊さん2頭も仲間に加えることができ大満足。
購入しなくてもいろんな山羊さんがいて、見ているだけでも楽しいと思います。
もし、機会があればぜひ山羊のセリ市に足を運んでみてください!

社長は、世界を作れる人。動物病院から、獣医療の新しい「世界」を作っていく

畜産に携わる人のためにと、「自分ごと」としてシステムを語る開発者の方

昨日、薬品会社の営業さんを通じて、とあるシステムを販売している会社と会合があった。

そのシステムは、センサーで牛の動きを感じ取って、行動の記録データを、畜産の生産性向上に利用するものだった。

このシステムの販売会社と開発会社は別会社で、開発側と販売側ひとりずつが席に着いた。

はじめ開発者の方は、いわば外注先のような立場なのだと思っていたが、「私たちが始めた頃は… 」と、このシステムに関する話を完全なる自分ごととして語る。その姿が印象的だったので、僕は聞きました。

「このシステムを着想して始めたのは、○○さんだったんですか?」と。

予想に反して「いや社長は別にいます。」と、彼は言いました。

さらに「社長はどんな人なんですか?」

と聞くと、「社長は、コンセプトを作るのがとても上手な人なんですよ。その社長は前職で、畜産関係の営業をしていました。そこで、いけると思った事業を組み立てるために、必要なパーツを揃えていった。彼の描く世界を実現するために、技術者が必要であり、営業が必要であり、出資者が必要であり、研究者が必要であったんです。

そういうのを組み立てる才能のある人です。社長はパーツを一つ一つ集めて、彼の描いた世界を作っているんです。」

そして続けて言います。

「そしてこのシステムを使ったら、畜産は絶対に良くなるに決まっています。

作りたい世界はみなさんと一緒ですよ。畜産に携わる人が、手間なく成績を上げ、家族との時間を大切にすることが出来るようになる。そういう世界を作ろうとしているんです。」

この言葉には本当に驚いて、目が覚めた。

 

社長とは、世界を作れるひとのこと。ビジョンに人がついてくる

彼の目の前には明らかに、そういう世界が鮮やかに見えている。この会社が目指す世界。世界はこうだという事が、そこで働く人の目の前にありありと見えている。

そしてその世界観の鮮明さで、そこに僕らをも引き込もうとしている。

自然にこんな風になる過程は、どんな道のりだったのだろう。

そう考えているうちに気がついた。

社長とは、世界を作れる人の事だったんだ。

現状の世界に住みながら、次の理想世界を自ら創造し、それを語り、景色を人に見せる。そのために必要なことを整理しその世界に向かっていく手段を実行する。その描いた世界を固く信じることができればこそ大胆な行動もでき、結果も出せる。それが社長であり、事業である。

もしその世界が、個人1人だけが得する世界であれば、そこに向かっていく人に協力する気にはならない。それなら好きにやってくださいと言う事になる。

そうではなくて、もし社長の描くその世界が、聞く人も住みたい世界であれば、自然に協力する気にもなるだろう。そしてその中で自分が豊かに暮らせるのであれば、当然一緒に働きたいと思えるだろう。

今まで僕は、自分の持っているものが誰のどんな役に立つだろうか。と考える事はあったが、僕が新たな世界を創造しそこに連れて行く。と言う視点はまだなかった。口では顧客の為にとか、みんなが良くなるためにとか言っても、現在見えている世界の中で、どう上手くやるかという視点で動いていたのだ。

結局一番関心のある事は、そこで自分が売れるかどうか。自分が他と比べて優れているかどうか。そんな事にしか興味がなく、自分側からしか物事を見れていなかったのだ。相手視点を持とうと努力してはいても、表面的な、対処的なものになっていた。

だから、自分がこれをやって、本当に大丈夫だろうか。誰も賛同してくれなかったらどうしようか。仮に借金をして、その借金だけが残ったりした場合はどうだろうか。などと不安になったりもしたし、確信も持てなかった。

そういう不安は、今のコンセプトは結局自分よがりである事に、無意識下で気づいていたからだと思う。だからこれまでの僕には、なかなか人が集まらなかったのだ。世界観が曖昧だったからだ。

そこに気がついた事で、僕は1つ次のステップに進めた気がした。

 

開業して6年。動物病院から、獣医療の新しい「世界」を作っていく

僕の創造する世界が自分にも、相手にも良いものだと確信があって、その世界を共有できたなら、あとは実行するのみである。自然に協力者も集まるだろう。

ひとつ気がついたものの、まだ完全な世界観を創造できたわけでは当然ない。加えて他者視点より自己視点の方がまだまだ強い。

いきなり完璧にはならなくとも、これからは少なくとも、誰かより優れていて賞賛される「自分」を作るのではなく、自分が住みたい「世界」を作ろうと思う。

これからの僕が作る動物病院は、どんな世界を創れるんだろうか。これからの僕は、どんな獣医療を創れるんだろうか。

開業して6年、今さらながら、世界を創造するスタートに立ったのかもしれない。

山羊の診療Diary 症例21 生まれたての虚弱子山羊

*山羊の診療Diary  症例21 生まれたての虚弱子山羊

今回の症例は・・・

今さっき、双子の子山羊が生まれたけど、
小さい方の子山羊さんがおっぱいを飲めていないみたいで、
弱々しいので来て欲しいと連絡がありました。

さっそく、伺って見ると・・・
かわいい子山羊さんが2頭生まれていました。
確かに、大きさに差があり、様子を見ていると大きい子山羊さんは
お母さんのおっぱいを力強く飲んでいますが、
小さい子山羊さんは、近くまで行くものの
おっぱいがなかなか飲めない様子でした。

乳を飲めない虚弱子ヤギ

お母さん山羊さんから、子山羊さんを預かって、
まずは全身状態のチェックからしました。

 

子山羊が低体温・低血糖でないか確認

聴診で心臓や肺の音を確認し、全身状態を確認しました。
大きな問題は見つかりませんでした。
そして、心配していた体温も平熱で、低体温は今のところ大丈夫そうです。
子山羊さんの病気で低体温・低血糖という病気があります。
(詳しくは・・・山羊の診療Diary症例3 子山羊の低体温・低血糖を読んでみてください)

低体温の検査を受ける子ヤギ

子ヤギがミルクを飲めているかどうかを確認する

体温の次は、オーナーさんが心配していた「ミルクを飲めていないのでは?」の確認です。
確認する方法は、お腹を下からからそっと優しく弾むように、揺らすように押してみます。
すると、ミルクがはいる第4胃を確認することができます。
そこが膨らんでいればミルクを飲めていることがわかります。

この小山羊さんは、いっぱいにはなっていませんでしたが、ミルクが入っているのが確認できたので
自分でも少しですが飲めていることがわかりました。

 

大きな子ヤギに負けてミルクを飲めないようなら、補助的に人工哺乳を

治療は小山羊さんにミルクの足りない部分を補い体力の余裕をつけてあげるためにブドウ糖のお注射をしました。
そして、オーナーさんに人工ほ乳のやり方をお伝えしました。

生まれてすぐは、お母さんの初乳をしっかり飲んで欲しいのですが、
大きな兄弟がいて、ミルクを飲めないと衰弱してしまうため、人工ほ乳を補助的にしてあげることもあります。
このこの場合も、小山羊さんを良く観察していただいて、
もし大きな子に負けて飲めないようなら、人工ほ乳で少しお手伝いしてもらうことにしました。

ブドウ糖注射される子ヤギ

ちなみに・・・
体温測定の写真に写っている
ほ乳瓶の赤い乳首は山羊さん用で、人間の赤ちゃん用のよりも長さが長く、細くなっています。
人間用のでも人工ほ乳できますが、
この赤い乳首は小山羊さんにくわえさせやすいです。
もし、人用のほ乳瓶が使いにくい場合は試して見てください!

治療が終わって、子山羊さんをお母さんに返すと、
子山羊さんは自分で懸命におっぱいを探していました。
ちょうど大きな子はお腹がいっぱいになって眠っているので
チャンスです。
オーナーさんと一緒に見守っているとどうにか、おっぱいをくわえられました。
これで一安心。後は、オーナーさんに観察をお願いすることにしました。

次の日、オーナーさんから連絡がありがんばっておっぱいを飲んでいて元気も出てきているとのこと。
このまま経過観察としました。
小さな子山羊さんも大きな子
山羊さんも仲良くこのまま元気に育ちますように。

みんなじぶんをみてほしい

ねこのはっちゃん

やぎぼくじょうにくらしてる

やぎさんのおせわのときも
やぎさんのちりょうのときも
いつも
にゃーにゃーにゃーにゃー
やってくる

やぎさんじゃなくて
ぼくをみて

はっちゃんは
はっちゃんをみてほしい

きっと
あなたもわたしも
みんなじぶんをみてほしい

そして
ほんとうは
じぶんだけをみてほしい

おしごとおわったよ
すわって
すこしやすもうか

はっちゃんおまたせ
おひざにどうぞ

ごろごろごろごろ

すなおになったらいいんだね
すなおにいったらかわいいね

出産ラッシュ

ゆうきさんの牧場では出産が続いています。
11月29日にあめちゃんが、男の子の山羊さんを出産しました。

あめちゃんは、前回の出産ではふたごの男の子を生んで上手に子育てしていた
ベテランお母さん。

今回も、子山羊さんに上手におっぱいをあげています。

子山羊に乳を与える母ヤギ

11月30日には、はなちゃんが、男の子の山羊さんを出産しました。

今シーズン初の子山羊さん誕生。初乳の重要性

はなちゃんは前回、育児放棄をしていたので心配していましたが、
今回はどうやら大丈夫そうです。
そういえば、前回の出産は大きな女の子の子山羊さんで、分娩介助が必要でした。
今回は、出産も自力でがんばりました!おつかれさまー。

乳をやる母ヤギ

現在、ゆうきさんの牧場は3頭の子山羊さんがいます。

南の島も12月に入り、風が冷たくなりました。
今日の夜は冷え込むからと、ゆうきさんが保温ランプをセットしました。
私も、いつもより多めに乾草を床に敷いて寒い夜の準備は完了。
ふかふかの乾草の上ですやすや眠る子山羊さんの顔を確認したら、
今日のお仕事はこれでおしまい。気がついたらあたりはもう真っ暗。
季節がめぐって、みんなと初めて会った冬がきたんだね。

お母さん山羊さんと一緒に子山羊さんたちが元気に育つように、わたしたちもがんばるよ。
明日もみんなの元気な顔が見られますように。

全国山羊サミットin山梨に参加しました。山羊の病気・人工授精・削蹄講習会を発表

11月23日と24日に山梨県で開催された第21回全国山羊サミットに参加しました!!

今回、この1年ブログでまとめていた山羊の病気と人工授精について、
また近々、開催予定の山羊の削蹄講習会の資料を発表させていただきました。
発表に至った経緯には2つの想いがありました。

1つめは山羊の飼い主のみなさまに日常に起こる病気の診療についてお伝えしたいという想いです。

2つめは全国的にも山羊の診療をしてくれる病院や獣医師が少ないということから、
症例や治療を発表することで、病気の山羊さんの治療を受け入れてくれる獣医師や病院が増え
山羊の飼い主のみなさまの安心に繋がればという想いです。

会場の一画にブースを作らせていただいて、ポスター発表のほかに、
「山羊の健康相談」と「山羊の削蹄相談」を設けました。

全国の山羊の研究の先生方、山羊の飼い主様とお会いすることができ
私たちもたくさん学ばせていただきました。
これからの診療、研究につなげていきたいと思っています。
この場をお借りして御礼を申し上げます。
ありがとうございました!!

山羊の人工授精チャレンジ MMNS第1クール③ ついに・・・

山羊の人工授精チャレンジ MMNS第1クール③ ついに・・・

前回の記事はこちら。山羊の人工授精チャレンジ MMNS第1クール②(発情同期化を使った人工授精プログラム)

今回は11月3日までのMMNS第1クールのまとめです。

*山羊Aちゃん
2回の発情同期化(MMNS)と人工受精をするものの残念ながら妊娠していません。
今日から3回目のMMNSをはじめました。
もしこれで妊娠しなかったら、次の方法を検討しようと思っています。

*山羊Cちゃん
1回の発情同期化(MMNS)と人工受精を実施。
今日から2回目のMMNSをはじめました。

*山羊Bちゃん
1回目の発情同期化(MMNS)と人工授精を実施。
その後、30日の妊娠鑑定(-)後に発情が見られたので、
発情同期化はしないでそのまま人工授精を実施しました。

そしてついに!!
11月3日の40日の妊娠鑑定で、妊娠を確認しました。

妊娠確認のエコー写真

人工授精チャレンジ、初妊娠!!

超音波での画像を見たとき、とてもとてもうれしかったです。

Cちゃんの分娩予定日は山羊さんの妊娠期間は5ヶ月なので、2020年の2月25日です。
このように、分娩予定日がわかるとお産の心構えができ観察ができるので、
分娩事故を減らすことに繋がります。

残念ながら、発情同期化での妊娠ではなく自然の発情での妊娠でしたが
何はともあれ、現場での凍結精液での妊娠は一歩前進。

そして、発情同期化のMMNSは、現在経過を見ながら
海外文献を調べてお薬の量を再検討したり、
他の発情同期の論文を取り寄せて新たな方法も検討しています。

全部の山羊さんが妊娠して卒業できますように。