Monthly Archives: April 2019

研修レポート⑤ 山羊の分娩兆候

研修レポート「山羊の分娩兆候」

今回の研修レポートは「山羊の分娩兆候」についてです。

研修期間、分娩予定日の山羊さんがいました。
分娩が近づいているサインの一つを教えていただきました。

それは、
「しっぽの横に線が見えてくる」です。

子山羊の分娩が近づいているサイン・兆候

子山羊の分娩が近づいているサイン・兆候

これはおそらく仙座靱帯が分娩が近づくと産道を広げやすくするために
緩んでくるからではないかと思います。
教科書にのっている「尾の付け根がゆるむ」も同じ兆候を示していると思います。

 

山羊の分娩兆候まとめ。「食欲が落ちる」というところから気づきやすい

*山羊の分娩兆候のまとめ

・尾の付け根がゆるむ
(しっぽの横に線が見えてくる)
・乳房が肥大化する
・陰部の腫脹や粘液が出る
・食欲が低下する
・落ち着きなく歩き回る
・腹部が大きく膨らみ下方に移動する

私が島の山羊さんたちを見ていて、分娩前に一番感じたのは
「食欲が落ちる」ということでした。

また、牛では分娩前約24時間前に体温が0.4~0.5℃低下することが知られています。
分娩予定の7日前から、空腹時の決まった時間に1日2回体温を測定することで分娩予測ができるそうです。
私はこのことが山羊にも当てはまるのか興味があり、人工授精チャレンジで受胎させることが出来たら、
体温による分娩予測をやってみたいなと考えています。

(写真 家畜改良センター茨城牧場長野支場にて撮影)

研修レポート④ シバ山羊ジーンバンク

研修レポート「シバ山羊ジーンバンクについて」

今回の研修レポートは、「シバ山羊ジーンバンクについて」です。

シバ山羊

家畜改良センター茨城牧場長野支場では動物遺伝資源ジーンバンクのサブバンクとして、
シバ山羊を飼育していました。

 

ジーンバンクとは

*ジーンバンクとは
動植物の新しい品種や新しい食料の開発を行う場合、その基礎となる生物が必要となります。
そこで、その基礎資源である生物遺伝資源の収集、特性調査、保存、配布等を実施する業務の総称をジーンバンクといいます。

 

シバ山羊の特徴

*シバ山羊の特徴

・長崎県西海岸および五島列島原産の日本在来種
・被毛は白色がほとんど
・雄も雌も有角
・体重は30~40kgとザーネンと比べると小型
・周年繁殖
・腰麻痺抵抗性
・性格は神経質

シバ山羊2頭

 

シバ山羊についての感想

*感想
シバ山羊さんは小柄でとても可愛いかったです。
メルヘンに出てくる動物のようでした。
これまでは、実験動物として貢献し、小柄なため伴侶動物としても現在は活躍しているそうです。
ただ、もともとの性格が神経質というもあり、ザーネンに比べるとクールな性格に私は感じました。

(写真 家畜改良センター茨城牧場長野支場にて撮影)

研修レポート③ 山羊の気持ち。なぜ気温が低くても、子山羊は低体温にならないのか

研修レポート「子山羊の低体温」について

今回の研修レポートは、「子山羊の低体温」について長野支場で感じて考えてみたことです。

生まれて3日の子山羊さん
広い山羊舎にひとりぼっち。

広い山羊舎にひとりぼっちの子山羊。低体温にならないのか

ここでは、生まれた日齢が近いグループで山羊舎のお部屋にいます。
たまたまこの子山羊さんは出産のピークの終わりに生まれたので、
近い出生の子山羊がいませんでした。
そのため、はじめの3日間、初乳の給与が終わるまで広いお部屋にひとりぼっちでした。
でも元気いっぱい。

 

なぜ気温が低くても、子山羊は低体温にならないのか?

「気温-5℃のなか、広いお部屋に保温ランプ一つで寒くないの?
低体温にならないの?」

頭に「なぜ・どうしての」大きな?マークが生まれました。

私の住む島では、寒い冬でも気温が16℃位までしか下がりません。
しかし、子山羊の「低体温と低血糖」の症例にこの冬、何度も出会いました。

1日目の研修の報告時に院長先生にこの疑問を尋ねると
ヒントを一つくれました。

「そこに行ってヤギになってみるといいと思うよ」

そこで研修2日目に・・・

ヤギの気持ちになってみる私

山羊の気持ちになってみる。

なるほど、なるほど・・・

 

子山羊の気持ちになってみると、子山羊の低体温を改善するヒントがたくさん

空気は冷たいけど風は感じないな。
冬の島は北風がビュービュー吹いている。
風にあたるって寒いんだな。
体温が奪われる感じがするんだ。
下に敷いてある草があったかい。
この草が乾いているからいいんだな。
濡れていたら気持ち悪いよね。
もしコンクリートそのままだったら冷たそう。
ランプは小さいけど思ったよりあったかい。
ランプの下で丸くなったらなんだか眠くなってきたぞ。

しばらく子山羊さんと一緒に感じてみる。
そして、
感じたことがどんどん広がる。

ミルクの時間。

初乳をしっかり3日間1日3回飲んでいる。
これも免疫力をしっかりつけて元気でいる秘訣かな。

このミルクを出している母山羊はどんな状態だろう?
分娩前の山羊たちも搾乳している山羊たちも
みんな体がしっかりしている。
お話を聞くと、分娩前から飼料を増やしたり運動をさせているとのこと。

島に帰って、子山羊の低体温を解決するヒントがたくさん私の中に生まれました。

 

もういくの?と子山羊さん

・・・・・
そして、

子山羊さんの部屋をそっと出る

ありがとうを言おうとふりかえる

寂しそうな子山羊

「もう行くの?」と子山羊さん。

ああ、そうか
ごめんね
最後にひとつ
あなたのきもちをわすれてた
わたしのきもちもわすれてた

ひとりでも
だいじょうぶ
ひとりでも
いきられる

でもやっぱり
寄り添いたい
くっつきたい

自分以外に
もとめるあたたかさ

こんなあなたの気持ちをわすれてた
そんなわたしの気持ちも気づかせた

・・・・・

最後の初乳を飲み終えて
子山羊さんは
おとなりのお部屋に移動した
すぐにみんなとくっついて
すやすやと眠ってた

(写真は全て家畜改良センター茨城牧場長野支場にて撮影)

研修レポート② 山羊のお灸治療。繁殖治療や消化器疾患に効果あり

山羊のお灸治療レポート。お灸は繁殖治療や消化器疾患に効果あり

今回のレポートは山羊さんのお灸の話です。
お灸は牛や山羊など動物たちにも治療の一環として行われています。
繁殖治療(不妊、ホルモンバランスの調整)や消化器の病気などの時に
効果があることが知られています。
長野支場では、主に繁殖治療のひとつとしてお灸をすることが多いとのことでした。

実習のときに、産後10日で陰部から出血がみられるお母さん山羊がいました。
食欲、元気もありお熱はありません。分娩後胎盤(後産)の排出も確認できているそうです。
しかし、まだ産後10日と日が浅く、後産が完全に排出されていない可能性や
子宮がまだ完全に回復していないことが考えられました。
そこで治療の一つとしてお灸を行うことになりました。

ヤギお灸をする場所と、方法について

*お灸をする場所 (全部で7か所)

①最後肋骨をたどった背骨の付け根
②左右の腰角の間
③腰角と②の間 2か所
④しっぽの付け根
⑤等間隔で②と④の間に2か所

*方法

①山羊を柵などに沿わせてつなぐ
②お灸をするところに’味噌’をおく
(味噌の厚さがうすいとやけどの原因になるので注意)
③親指くらいのもぐさを置いて火をつける
(火の管理に注意!必ずそばにいること)
④もぐさが燃え尽きてもまだ中は温かくて効果があるのでしばらく待つ
⑤味噌と燃えたもぐさを取る

*感想
お灸の間、山羊さんはおとなしくしていました。ぽかぽか温かくて気持ちが良いのかな・・・

お灸中の山羊さん。

どんな気持ちですかー?


私自身もお灸を自分にしてみたいなと思いながら山羊さんを見ていました。
そして・・・
今後、治療では人工授精のときのホルモンバランスの調整や繁殖治療で
お灸を取り入れていきたいと思いました!!

(写真はすべて家畜改良センター茨城牧場長野支場にて撮影)