山羊の診療note12 ヤギのお産

山羊の診療note12 ヤギのお産

ヤギの難産の症例をこの後2つご紹介したいのですが、
その前にヤギの正常な出産について今日はお話したいと思います。

ヤギの分娩は難産になることが少なく、安産であることが多いといわれています。
実際、私の住む島のヤギの飼い主さんたちから、「自然に生まれていた」「難産は見たことない」という声をききます。
しかし、診療で難産の依頼を受けることはもちろんあります。
お産の異常に飼い主さんが気がついて対処すれば子ヤギさんを助けることができるので、
まずは、正常なお産を知っておきましょう!

*正常なお産の進み方

①陣痛開始
・ごはんを食べなくなる
・うろうろする
・地面をひっかく動作 など

②1次破水

③足胞(ふうせん)が出る
風船の中に足が2本みえます

④2次破水 重要 *ここから先お産がスムーズに進まないときはすぐに連絡!!

⑤足2本と鼻が出る

⑥頭が出る

⑦体が出る

子ヤギさん誕生!!

これが正常なお産の順番です。

陣痛から1次破水まで、牛や羊は2時間から6時間程度ですがヤギでは12時間かかることもあるそうです。
(家畜改良センター山羊の飼養管理マニュアルより)
私たちの病院では牛では陣痛開始から2時間しても1次破水しない場合は連絡いただくようにしていますが、
ヤギはこのように牛に比べて12時間と陣痛の時間が長いため、ここでの異常の発見は難しいです。
しかし、陣痛が始まって、半日経過しても生まれないときや異常に苦しんでる様子など見られた際は獣医師に連絡してください。

一番注意してほしいのは2次破水してそこからお産が進まないときです。
この時は待たずにすぐに獣医師に連絡するようにしてください。
赤ちゃんが出られない体の向きだったり、体のどこか(頭や腰)が引っかかって出られないことがあります。

また、ヤギさんは双子や三つ子のことが多くあります。
正常な分娩の場合、1頭目から次の赤ちゃんは1~2時間の間に生まれます。
1頭目が生まれた後、まだおなかに入っていないか確認しましょう。
飼い主さんが確認する方法として、妊娠鑑定の時にお話しした、
「おなかを持ち上げる方法」があります。乳房の付け根を上に持ち上げておなかの中にいる子ヤギさんを確認します。
詳しくはこちらの記事を参考にしてください。

そして、ヤギの分娩は日中(早朝から夕方)が多く、夜間は少ないと言われています。
分娩に立ち会うチャンスがあった場合は、このような異常がないか確認しつつ、
そっと見守ってあげてくださいね。

3 thoughts on “山羊の診療note12 ヤギのお産

  1. 浅野桂吾

    はじめまして、こんにちは。
    石川県立大学動物栄養学研究室の助教をやっております浅野と申します。

    貴方のブログを読ませていただき、小中家畜の分娩についてご質問したく連絡差し上げております。
    私共の大学では研究教員目的でヒツジを飼育しております。研究の一環で繁殖も行っており、大学内で自然交配をさせております。

    今年はちょうど現在が分娩シーズンでありまして、学生たちと日夜管理作業を行っております。しかし、先日1頭の妊娠羊が陣痛が始まった(定期的に苦しむ様子を確認しています)にも関わらず12時間以上破水がみられないということがありました。妊娠羊は途中自立できなくなり、首は上げているものの横臥状態でした。確認のため陰部に手を挿入したところ子宮外口部はまったく開いておらず、胎児も初期は動いていたようですが、途中で動かなくなりました。地域の担当獣医に状況を説明すると、できる処置はない様子でした(その獣医師は帝王切開などの経験は乏しいとのことでした)。どうにもならないと思い、外口部を時間をかけて拡張し、どうにか胎児を取り出したものの、残念ながら母子ともにダメでした。
    筋弛緩剤なども有効かとも思いましたが、手元になく試せませんでした。

    ブログでは「陣痛が始まって、半日経過しても生まれないときや異常に苦しんでる様子など見られた際は獣医師に連絡してください。」とありますが、ヤギなどでこのように破水がみられないことがあった場合どのような処置を施すのでしょうか?
    このような分娩事故が今後あった場合の可能な対処を考えたく、何かご助言がありましたらご教示いただければ幸いです。

    突然の連絡で恐縮ですがどうぞよろしくお願いいたします。

    Reply
    1. Uchida

      ご質問いただきありがとうございます。
      院長の内田がお答えさせていただきます。

      まず、このような事故に遭われたことに対して、大変残念だったのではないかと拝察します。また、立て続けの分娩管理もまた大変な事と思います。

      文面から感じられる限り、浅野先生とチームの皆様は最大限に分娩事故を減らすようご尽力されていることと思います。

      さて、ご質問を整理しますと、
      「分娩が長引いても破水が見られない際にどのような対策があるか?」と理解しました。

      先にこのポイントだけのご回答としては、子宮捻転、産道狭小、胎児失位などの異常があれば整復する。整復できないか、正常でも母子が危険な場合は帝王切開する。という事だと思います。
      薬物治療に関しては、牛ではエストロジェン製剤を用いる事で子宮頸管が開きやすくなるという事はありますが、私自身はあまり用いた事がありません。

      これだけの回答だとやや限定的になるので、ご質問内容を少し拡大解釈しまして、
      「分娩を成功させる為に出来ること」についてまとめてみたいと思います。

      分娩の成功を「生きた胎児が産道または切開口を通って死ぬ前に出てくる」事とした上で、どうやってそれを達成するか?です。私のお産に対する考え方について書きますので、ご参考になさってください。

      「分娩を成功させる為に出来ること」には2つのステップがあります。
      1.ひとつめは、正常分娩の経過をよく知ることです。そしてどのタイミングで介助するかです。
      2.ふたつめは、異常があったときに、どう対処するか。その方法を知っているかです。

      そのふたつの基準を決めて、まず正常出産を安全にさせる。産道が通れない理由が見つけられるなら、それを治して通れるようにする。異常が見つからないか、整復不可能で産道が通れないなら、帝王切開で出すしかありません。

      1での具体的な助産方法については、成書や本記事本文で解説されている通りです。

      まず分娩に異常があるか?を疑いチェックするタイミングを、当院では「陣痛2時間、その後30分刻みでなんらかの変化がある事」という事(牛の場合)を基準としています。農家さんが自分でわからない場合はこの時点で連絡をいただくようにしています。

      その時点で異常がなく、母子の体力的に待てる場合は、自然分娩を待つという事でいいと思います。軽い介助で出るなと思えば、介助しても大丈夫です。

      めん羊は山羊ほど陣痛時間が長くないらしいので、山羊のように半日も待たない方がいいかなと思います。めん羊の分娩関しては経験がないので具体的に提示することができませんが、暫定的にこの牛の基準で運用してみてもいいかもしれません。いずれはめん羊に適した時間に調整されるといいかなと思います。

      2について、異常がある場合です。
      前提として、どんな異常があるか知っている必要があります。
      具体的には胎児失位、子宮捻転、産道狭小、過大胎児、多胎による失位、奇形などがあります。
      今回のケースは診ていないのでわかりませんが、頸管拡張不全?または子宮捻転?となりますでしょうか。
      それぞれの対処法は成書に譲ります。おそらく牛の本が参考になると思います。

      異常がある場合は、それを整復してからでないと分娩させる事はできません。
      異常が整復できない場合、または異常がなくても母体や胎児が分娩に耐えられない場合は、産道からの分娩ができないので帝王切開になります。

      まとめますと、
      安全に分娩を成功させるには、
      1.分娩の経過時間に応じて異常の有無を確認する。異常がなければ、待つか出すかは介助者の判断です。
      2.異常を見つけたら、その治療または整復をする。
      3整復ができないか、母体や胎児が危険な場合は帝王切開する。

      という事になります。

      帝王切開という手段がないとなると、1と2を極力頑張るという事になると思います。

      分娩経過は個体による差が大きく、異常もケースごとですので一律の対処基準はありません。
      その中でもなんとか一律で基準化できるのは「正常な時間経過」を知り、チェックするタイミングを設定することです。そして個々の異常の対処については、基礎知識と経験を積むしかありません。

      ひとつつけ加えますと、難産に備えてローションと牽引する為のヒモを用意しておくのはいいかと思います。

      以上、少しでも安全な分娩管理のヒントになれば幸甚です。

      Reply
      1. 浅野桂吾

        内田様

        大変懇切丁寧にご回答をいただき、ありがとうございます。
        恥ずかしながら頸管拡張不全や子宮捻転などの症状は初めて聞いたので、詳しく勉強してみたいと思います。

        内田様のおっしゃる通りで、分娩時は観察を十分に行い、異常をいち早く察知し処置することが重要であると今回のことから痛感いたしました。時間経過という点も重要だとのことで、今一度、ヒツジの分娩について時間の面からの管理指針を検討・整理したいと思います。
        また、本学では通常はノンリターン法から分娩日を予測し、予定日に合わせて準備・観察をしておりましたが、今回の個体は分娩日予測自体が上手くいっておらず不調の兆しの察知や対応が遅れたことも原因のひとつだと考えております。
        今後はそれらの管理も含めて徹底するとともに、今回の事例を担当獣医師とも共有して対策を検討していきたいと思います。

        貴重なご助言を本当にありがとうございました。

        Reply

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