Monthly Archives: July 2022

「ヤギの診療」書籍出版のお知らせ

この度、このブログのヤギの診療記録がもとになり、
「ヤギの診療」という書籍が発売されることになりました。

「ヤギの診療」
発売予定 2022年7月31日

価格 3300円送料無料

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書籍「ヤギの診療」の購入方法
このブログのお問い合わせフォームから購入できます。

ご住所、お名前、電話番号を明記してお申込みください。お申込みの返信メールにて、振込先をご案内致します。送料無料。

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ヤギの診療に初めて取り組む獣医師や、ヤギを専門としない獣医師が診療する際の助けになることを願い、実践的な知識を一冊にまとめました。
獣医師向けではありますが、ヤギの身体のしくみや病気のことをより詳しく知りたいヤギの飼育者のみなさまにも、理解を深めていただける内容になっています。

目次
第1章 ヤギの一般知識

第2章 ヤギの診療技術

第1節 捕獲と係留
1.捕獲する方法
2.係留する方法

第2節 治療の基本手技
1.注射法
2.食道カテーテル挿入法
3.外傷処置・麻酔
4.去勢手術
5.除角

第3節 疾病の診断
1.問診法・身体検査
2.心臓・肺の聴診
3.腹部の触診・聴打診法
4.主訴から診断に至る手順
5.畜産のヤギと伴侶動物のヤギの
診療の考え方

第4節 飼料及び飼育
1.ヤギの消化のしくみ
2.ヤギの飼料
3.栄養状態の評価
4.飼育環境(臨床上、特に注意 する点)
5.削蹄

第5節 繁殖と分娩
1.繁殖管理
2.妊娠鑑定
3.分娩

第3章 よくあるヤギの病気と診療20

1.腰麻痺
2.ルーメンアシドーシス・鼓脹症
3.下痢
4.膿瘍 (乾酪性リンパ節炎)
5.膣脱
6.子宮脱
7.胎盤停滞
8.子ヤギの低体温・低血糖
9.乳房炎
10.外傷
11.熱中症
12.関節炎
13.骨折
14.膀胱炎
15.難産
16.呼吸器感染症
17.眼の外傷
18.ロープによる首つり事故
19.乳頭損傷
20.破傷風

第4章 獣医師が知っておきたいヤギに関する法律
1.家畜の監視伝染病について
2.家畜伝染病予防法に基づく飼養報告について
3.家畜伝染病予防法に基づくTSE検査について

ここでみなさまに、私(Anne)からお礼とご挨拶をさせていただきます。

ブログを読んでいただいたみなさまの存在が私の心の支えとなっていました。ヤギのブログを読んでいただき本当にありがとうございます。

私はヤギの診療を受け入れてくれる獣医師がなかなか見つからないという声を受けけて、
未経験でヤギの診療の世界へ飛び込みました。
このブログでもお伝えしていた通り、たくさんのヤギと飼育者の方との出会いがありました。
出会ったみなさまと一緒に向き合った、診療の一つ一つが私を育て、この本の完成に至りました。
あらためて、心から感謝いたします。本当にありがとうございました。

ヤギや助けが必要な飼育者の方がどこでもいつでも安心して診療を受けられることを願い、
また、昔の私のようにヤギの診療に初めて取り組む獣医師の先生が、私が通った苦労をしないように、少しでも参考になればと思い本を製作しました。未熟ながらも私の精一杯が詰まっています。
必要な誰かにこの本が届きますように。

私は動物が好きで獣医師になりました。
これからも動物との暮らしの中にある、ちいさなしあわせを大切に暮らしていきたいと思っています。

みなさまが動物たちが健やかで心温まる日々を送れることを心からお祈りしています。

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酸塩基平衡異常を示す病気

前回までの酸塩基平衡の解説を理解した上で、典型的な病態について理解しつつ覚えていきましょう。

下痢 代謝性アシドーシス

胆汁、膵液、腸液は多くのHCO3-を含みます。
そのため下痢等で消化液の分泌亢進が起こると、普段より多くのHCO3-を消費するため、代謝性アシドーシスとなります。
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/

ヒトの先天性疾患でCl喪失性下痢の場合、又は下剤の乱用による下痢ではアルカローシスになる事がありますが、例外もあるよという程度に付記しておきます。

肺炎、肺水腫等での換気不全 呼吸性アシドーシス

肺換気が障害されると、体内のCO2を効率よく排泄できなくなるので、呼吸性アシドーシスとなります。
慢性では腎性代償として血中HCO3-が増加します。

過呼吸 呼吸性アルカローシス

肺換気が過剰になると、体内のCO2を余分に排泄してしまうので、呼吸性アルカローシスとなります。

ショックと心不全 代謝性アシドーシス

循環機能低下により糖の嫌気性代謝が起こり、結果として乳酸の生成が亢進するため、乳酸アシドーシスが起こります。脱水、出血、薬物中毒による酸素利用障害、貧血など他の理由でも、組織での酸素利用が障害されると、同様に乳酸アシドーシスが起こります。
激しい運動では、筋肉において相対的に酸素不足になり、筋肉でできた乳酸が血中に出て乳酸アシドーシスとなります。

飢餓と糖尿病 代謝性アシドーシス

栄養不足のため脂肪分解が起こり、ケトン体(酸)が過剰となるため、代謝性アシドーシスとなります。

腎不全 代謝性アシドーシス

腎臓は生体内で生産された不要物(H+を含む)排泄する器官です。ですから生体内で物質が余った時に、調節機構を駆使して排泄します。
生命活動を行うと常時酸が生産されます。腎不全になるとH+の排泄能力が減るので基本的にアシドーシスになります。
ただし、腎機能が低下するということは、その他の原因でアルカローシスに陥った時のHCO3-の排泄能力も失うということで、アルカローシスの代償能力を失うため、アルカローシスにもなりやすくなります。

参考

https://www.msdmanuals.com/ja-jp/
MSDマニュアル 代謝性アシドーシス
治療の計算あり

https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/95/5/95_5_859/_pdf
日常臨床に役立つ酸塩基平衡の考え方
代謝性アルカローシス

https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/95/5/95_5_853/_pdf/-char/ja
日常臨床に役立つ酸塩基平衡の考え方
代謝性アシドーシス

http://www.hokkaido-juishikai.jp/wp/wp-content/uploads/2014/05/1310-08.pdf
代謝性アシドーシスを生じた子牛下痢症における
呼吸性代償反応に関する研究
塚野健志