Author Archives: Uchida

病気じゃない病気について

病気じゃない病気

ヤギも牛も、飼う上で大切なことがあります。
動物の体で見落としがちなこと、間違えやすいことなどをお話しています。

産業動物獣医師の仕事内容とキャリア

産業動物獣医師の仕事内容とキャリアについて

一般の方向けに、

産業動物獣医師ってどんな仕事があるのか?というお話です。

約18分の対談です。お時間ある時にどうぞ。

産業動物獣医師のやりがいと大変さ、つらさ

産業動物獣医師は、どんな仕事をしているのか。

獣医師になりたい人が知っていなければならない

獣医と言っても、「ヒト」を見ないとダメなんです。

人の気持ちをわかる事が大切なんですよ。

動物の知識や技術は道具です。

どれだけひとを喜ばせることができるのか、どれだけひとを幸せにできるのか。

愛情の半分は動物に。半分は人間にも。

今回もwebマーケティングスペシャリストの中田さんとの対談です。

ついつい28分も喋ってしまいました。

web業界と獣医師には意外な共通点がありました。

お時間のある時にどうぞ。

ヤギはなぜ登る?

ヤギはなぜ登る?をキーワードに、ヤギの食性、産業利用などについてお話します。

当ブログの立ち上げから管理をお願いしている、webデザイナー、マーケティングスペシャリストの中田さんとの対談です。

ラジオ形式でお送りします。

ヤギはなぜ登る?の対談

9分くらいのお話なので、お時間のある時にお楽しみください。

あとで調べたところ、カバは複胃だけれど反芻はしないそうです。またヤギは山岳地帯を好んで生息する種が多いそうですよ。

 

中田さんのチャンネルはこちら→

webセキュリティやわらか超入門 by 魔法使いのWebマーケティング【まほウェブradio】 • A podcast on Anchor https://anchor.fm/marketing-wizard/episodes/web-eld7hl

山羊の診療note11 山羊の食餌と栄養

様々な野草と、手差し給与が有効です。
という記事を書きました。

そこで登場した島野草とお芋の茎の栄養成分をのせておきます。

*オオバギ
TDN 65.5
CP 16.4
NR 3.0
タンパクが多めです

*ガジュマル
TDN 56.0
CP 9.6
NR 4.8

タンパクと炭水化物のバランスがとれています

*バナナの葉っぱ
TDN 59.0
CP 15.7
NR 2.7

タンパクが多めです

*センネンボク
TDN 68.9
CP 8.6
NR 6.9

炭水化物が多めです

*センダングサ
TDN 57.7
CP 12.6
NR 3.4

タンパクが多めです

*サツマイモの茎と葉っぱ
TDN 64.0
CP 13.0
NR 3.9
タンパクが多めです。

 

*草の栄養で使われる略号

・CP=粗タンパク    (主にタンパク質の指標)
・TDN=可消化養分総量 (主に炭水化物の指標、CPと炭水化物が混ざっている)
・NR=栄養比 (TDN-CP)/CP

→ヤギでは4.5前後がバランスが良い

値が低いと・・・タンパクが多い

値が高いと・・・炭水化物が多い

栄養学は、英語の略語も多く、少し頭がこんがらがると思います。
まずはじめは、難しく考えず、草を2種類以上あげてみてください。

お家のヤギさんの好きな草を見つけてみましょう。

1種類の草だけで栄養バランスをとるのは難しいけれど、
配合飼料やいくつかの草を組み合わせると

ヤギさんのごはんのバランスが取れますよ。

院長追記>>

飼料設計のガイドになると思うので、ヤギの栄養について詳しい説明のあるページを載せておきます。

ノースカロライナ州立大学のページです。
https://content.ces.ncsu.edu/nutritional-feeding-management-of-meat-goats

ヤギは牛ほど効率よく細胞壁を分解できません。なぜなら食物がルーメンに滞在する時間が短いからです。加えて、消化管のサイズが要求量に対して小さいので、牛より高栄養の飼料を必要とします。牛と比べて体重当たり約2倍の栄養を必要とします。

ヤギは低木類の枝を避けて葉のみを選ぶことができるので、比較的高タンパクの部分のみ食べることができます。また味はあまり気にせず、タンニンを含むものも解毒して食べることができます。

ヤギの栄養要求量自体は他の反芻獣に比べても非常に高いものですが、ヤギはその中から高品質の部分を選びとることができるので、低品質の飼料が多い場合でもよく耐えることができます。

とのことでした。

その場で処理する習慣

その場で処理する習慣。

目に止まったことを、その場で解決して、頭の中から全て消し去ってしまうように心がけている。

そして次のアクションは、その行動の結果から自分の目の前に現れる仕掛けをしておく。

例えば、必要なものがあったときに、その場でアマゾンから発注してしまう。

発注した事は忘れていても、しばらくすると荷物の到着により次の仕事がスタートするように。

例えば誰かから何かをの質問を受けたときに、その場で調べてしまう。または、その場で調べて伝えられる形にまでしてしまう。

そしてそれを、次にその人と会うタイミングの予定表に書き込んでしまう。

覚えておかなければいけないとか、次回に持っていかなければいけないものがあるときは、予定表に書き込んでしまう。

とにかく一度に覚えていられる数には限りがある。そしてその数を超えると、古い方から押し出されて忘れてしまう。

だから、次に思い出すポイントを作ってしまうか、その場でできる事を可能な限りやってしまう。

そうして、自分の頭にものがいっぱいになってしまうのを防いでいます。

どんなに気をつけてても、どうせ一度にいくつも覚えていられないんだから。

プルプルプル

「はい、あ、すみません。今日行く予定でしたっけ?

急いで行きます。」

それでも、予定に入れるのを忘れてしまうと、完全に忘れてしまうのをどうしたらいいのか考え中です。

なぜ獣医の仕事が「つらい」と感じるようになってしまうのか?

⭐️なぜ獣医の仕事が「つらい」「苦しい」となってしまうのか?

獣医になりたての頃は、自分が如何に獣医としてすごいかどうかが気になってしまう。
「すごい獣医」になるのは確かに難しいかもしれない。
だから、私なんて。。。と自信を失ってしまうのかな。

ある意味難しそうな仕事だからだろうか。
そのままでちょっとすごい仕事なイメージがあるからだろうか。

逆に、「命の責任を自分が負う」みたいに考えて、怯えてしまうのかもしれない。

助けられない自分なんてダメなんだ。と。
自分にできるのか?と言うところで、自信を失ってしまうのかもしれない。

でも、それは誰の役にも立たない独り言だと思う。
「すごい自分」という幻想を壊したくない、自意識過剰なだけ。また、期待されてる事を過大に考えすぎて、怯えてしまっているだけ。
ついつい、誰も気にしてない自分だけの悩みばかりに気を取られてしまう。

ある程度経験を積んでくると今度は、
そこそこ出来てる自分に甘えて、獣医というだけですごいと、傲慢になる。こんなにすごい事してるんだから、ある程度のわがままは当然だと思ってくる。

そこで、自分はこんなにすごくてエライのに、こんなに大変で、なんで文句言われなきゃいけないんだ!言う通りにしないんだ!と苦しくなってしまう。

これも仕事の成果とは無関係の独りよがりで、自分の理想とのギャップが悩みを作ってしまっているだけじゃないかなと思う。

ただ普通に仕事したら、たくさんの人が喜んで、自分も充実していくはずなのに、どうしても苦しくなってしまう。

 

⭐️獣医に求められているものは何か?

そういう理由で、仕事が怖かったり、苦しくなったりしてませんか?

獣医の仕事はそんなに特別な事ではありません。
獣医も神様じゃなく人なんですから、できることには限りがあります。

生き物は生まれて、何かあればすぐ死んでいくんです。全て助けられるわけじゃないんです。

難病を如何に治すか。どれほど高度な研究をするか。誰より頭がいいかとか。目標のひとつに持っててもいいとは思うけど、獣医に求められていることは、そんなことじゃないんです。

患者さん、農家さんは、真面目に勉強してきた獣医さんに、自分の困った事を真摯に受け止めてほしいんです。できない事をやってほしいんです。それでもし可能なら、解決して欲しいんです。

獣医に求められているものは、ただそれだけなんです。

獣医じゃない人は注射を打つのも怖いんですよ。薬の名前を覚えたり、薬用量を計算したりするのが嫌なんですよ。それができないんじゃなく、できたとしても、決めるのが怖いんですよ。私たち獣医と同じように。

そういう人たちの代わりに、獣医として普通にできることをやったら、ちゃんと喜ばれます。感謝されます。
もし治らなくても、その姿勢に相応の気持ちを返してくれます。そういうものです。

そうしていくつもの事例に対処していくうちに、自然と力がついて、自然と尊敬されていくんだと思います。

⭐️

仕事って、シンプルで自分を輝かせる事ができるものだと思います。

産業動物臨床の仕事だったら、

今、困っている人を助ける。
頑張って金を稼いで、大切な人を助ける。
このひとつひとつの仕事が、薬物の乱用を防いでいる。
この1頭を治す事で、食料資源が増えて社会が豊かになる。

という理由で、ただ、やればいいんです。

だから、僕は今日も仕事します。
もし、僕たちの仕事を見てみたい方や、一緒にやってくれる方がいたら、いつでも連絡くださいね。

特別な才能とか要らないんです。
普通に獣医として試験に受かり、毎日治療してたら、動物の身体に対する理解や知識はついてきます。
要るのは、前の記事: 仕事に向き合う姿勢。獣医師以外の方から学ぶこと のように、仕事にまっすぐな姿勢だけです。

一緒に頑張りましょう。

仕事に向き合う姿勢。獣医師以外の方から学ぶこと

独立するつもりだったと言う、一人の運転手

元旦、会合の帰り、運転代行さんを利用させてもらった。

10社ほど電話したがどこもお休みで繋がらない中、1社だけ、電話対応も爽やかで、なんの屈託もなく仕事を受けてくれた。

30前後、短髪、まだピアスの跡が残る目尻の鋭い好男子だった。

みんな休みたいところ、快く仕事を受けてもらって、本当にありがとうございます。と感謝の気持ちを伝えるとともに、なぜそんな風に働けるのかを聞いてみた。

「自分、勤務歴は7年あって、本当は独立するつもりだったんですけど、2年前に全て任せてもらえて、今は自分で営業してるようなもんなんですよ。
自分で相方探して、自分で広告して、看板借りて営業してるんです。
やっぱり任されるとやる気が違いますよね。

昼間は介護の仕事してて、夜20時から3時までは代行の仕事してるんです。もう酒飲まないって決めて、覚悟は要りましたけどね。

家族もありますから、休んで酒飲んでグダグダするよりは代行やってた方が全然いいなって思って。
その方がお客さんのためにもなるし、金にもなるし、飲酒運転も減るしって思うんですよ。

だから今日も酒飲まずに、きっと誰か頼んでくれると思うから、電話来たら行こうと待ってたんですよ。」

僕は酔っているにもかかわらず、背筋が伸びる思いだった。
僕はこんなふうに働けていただろうか。

 

誇りをもち、「いつでもやります」というまっすぐな姿勢

仕事に対して誇りを持って、電話が来たらいつでもやりますと言うまっすぐな姿勢。

お酒に酔った人がお客さんなのだから、やはり苦労も多いのではないかと思ってしまうが、この人の言葉には迷いがなく、曇ったところが全く感じられない。

自分の仕事で飲酒運転が減るんだと、お客さんの困ったことを助けることができるんだと。
そして、昼の仕事が終わり、時間が余ったらいくらでも仕事をして、自分が家族を養っていけることに、誇りを持っている。

こんなふうに、迷いなく快活に仕事に臨んでいる人に、今までどれほど出会っただろうか。

この代行の店長さんと話して、

ただ、困ってる人を助ける。
頑張って稼いで家族を助ける。
そのひとつひとつが、飲酒運転を減らすという社会の役に立っている。

そういうシンプルな理解で、気持ちよく働いている事に感動した。

 

ひとつひとつの仕事に、素直に向き合う

僕は顧客の依頼にこんな風に対応できていただろうか。
時間外の依頼や、手遅れの依頼、治療に協力的でない事、そういう時、やはりイライラしたり、優しくできなかったりしてしまっている。
自分の大変さや、権利欲、技術欲、時間ばかり気にしてしまっている事を反省した。

改めて、僕も独りよがりな欲求は側に置いて、素直に仕事に向き合わなければいけないと思った。

仕事で困っている人を助ける。
頑張って金を稼いで、大切な人を助ける。
このひとつひとつの仕事が、薬物の乱用を防いでいる。
この1頭を治す事で、食料資源が増えて社会が豊かになる。

改めて今日から、そういう風に素直に仕事に向き合います。
頑張りましょう。
今年もよろしくお願いします。

つづく: なぜ獣医の仕事が「つらい」と感じるようになってしまうのか?

社長は、世界を作れる人。動物病院から、獣医療の新しい「世界」を作っていく

畜産に携わる人のためにと、「自分ごと」としてシステムを語る開発者の方

昨日、薬品会社の営業さんを通じて、とあるシステムを販売している会社と会合があった。

そのシステムは、センサーで牛の動きを感じ取って、行動の記録データを、畜産の生産性向上に利用するものだった。

このシステムの販売会社と開発会社は別会社で、開発側と販売側ひとりずつが席に着いた。

はじめ開発者の方は、いわば外注先のような立場なのだと思っていたが、「私たちが始めた頃は… 」と、このシステムに関する話を完全なる自分ごととして語る。その姿が印象的だったので、僕は聞きました。

「このシステムを着想して始めたのは、○○さんだったんですか?」と。

予想に反して「いや社長は別にいます。」と、彼は言いました。

さらに「社長はどんな人なんですか?」

と聞くと、「社長は、コンセプトを作るのがとても上手な人なんですよ。その社長は前職で、畜産関係の営業をしていました。そこで、いけると思った事業を組み立てるために、必要なパーツを揃えていった。彼の描く世界を実現するために、技術者が必要であり、営業が必要であり、出資者が必要であり、研究者が必要であったんです。

そういうのを組み立てる才能のある人です。社長はパーツを一つ一つ集めて、彼の描いた世界を作っているんです。」

そして続けて言います。

「そしてこのシステムを使ったら、畜産は絶対に良くなるに決まっています。

作りたい世界はみなさんと一緒ですよ。畜産に携わる人が、手間なく成績を上げ、家族との時間を大切にすることが出来るようになる。そういう世界を作ろうとしているんです。」

この言葉には本当に驚いて、目が覚めた。

 

社長とは、世界を作れるひとのこと。ビジョンに人がついてくる

彼の目の前には明らかに、そういう世界が鮮やかに見えている。この会社が目指す世界。世界はこうだという事が、そこで働く人の目の前にありありと見えている。

そしてその世界観の鮮明さで、そこに僕らをも引き込もうとしている。

自然にこんな風になる過程は、どんな道のりだったのだろう。

そう考えているうちに気がついた。

社長とは、世界を作れる人の事だったんだ。

現状の世界に住みながら、次の理想世界を自ら創造し、それを語り、景色を人に見せる。そのために必要なことを整理しその世界に向かっていく手段を実行する。その描いた世界を固く信じることができればこそ大胆な行動もでき、結果も出せる。それが社長であり、事業である。

もしその世界が、個人1人だけが得する世界であれば、そこに向かっていく人に協力する気にはならない。それなら好きにやってくださいと言う事になる。

そうではなくて、もし社長の描くその世界が、聞く人も住みたい世界であれば、自然に協力する気にもなるだろう。そしてその中で自分が豊かに暮らせるのであれば、当然一緒に働きたいと思えるだろう。

今まで僕は、自分の持っているものが誰のどんな役に立つだろうか。と考える事はあったが、僕が新たな世界を創造しそこに連れて行く。と言う視点はまだなかった。口では顧客の為にとか、みんなが良くなるためにとか言っても、現在見えている世界の中で、どう上手くやるかという視点で動いていたのだ。

結局一番関心のある事は、そこで自分が売れるかどうか。自分が他と比べて優れているかどうか。そんな事にしか興味がなく、自分側からしか物事を見れていなかったのだ。相手視点を持とうと努力してはいても、表面的な、対処的なものになっていた。

だから、自分がこれをやって、本当に大丈夫だろうか。誰も賛同してくれなかったらどうしようか。仮に借金をして、その借金だけが残ったりした場合はどうだろうか。などと不安になったりもしたし、確信も持てなかった。

そういう不安は、今のコンセプトは結局自分よがりである事に、無意識下で気づいていたからだと思う。だからこれまでの僕には、なかなか人が集まらなかったのだ。世界観が曖昧だったからだ。

そこに気がついた事で、僕は1つ次のステップに進めた気がした。

 

開業して6年。動物病院から、獣医療の新しい「世界」を作っていく

僕の創造する世界が自分にも、相手にも良いものだと確信があって、その世界を共有できたなら、あとは実行するのみである。自然に協力者も集まるだろう。

ひとつ気がついたものの、まだ完全な世界観を創造できたわけでは当然ない。加えて他者視点より自己視点の方がまだまだ強い。

いきなり完璧にはならなくとも、これからは少なくとも、誰かより優れていて賞賛される「自分」を作るのではなく、自分が住みたい「世界」を作ろうと思う。

これからの僕が作る動物病院は、どんな世界を創れるんだろうか。これからの僕は、どんな獣医療を創れるんだろうか。

開業して6年、今さらながら、世界を創造するスタートに立ったのかもしれない。

決める痛みと、生まれる希望。臨床獣医の仕事で大切かつ難しい「相手の気持ちを汲む」ということ

 

臨床獣医師として、常に直面する共通テーマ

前回の山羊腰麻痺疑いの記事、山羊の診療Diary  症例16 腰麻痺疑い ~治療をしないという選択~ について、院長の私からも書きたいと思います。

アン先生のまとめが素晴らしいので、読んでない方はぜひどうぞ。

臨床獣医師として常に直面する、共通のテーマなので、僕も書かせてもらいたいと思います。

アン先生の言うように、獣医師は「飼い主の選択に寄り添う」事をしています。そして、「動物との関係は人それぞれ」なんです。

  • 伴侶としてともに生きる人、盲導犬などと助け合って生きる人
  • 動物は好きではないけど、家族の動物をお世話している人
  • 家畜として飼い、動物をお世話する事で、生活資金を得る人
  • 家畜から生活資金を得る一方、飼育自体が生き甲斐であり、ライフワークである人

それぞれの人に事情があり、動物や、その関係に問題が起こることがあります。

 

VETの獣医療サービスが目指すところは、「きぼうをつくる」ということ。治療はひとつの手段に過ぎない

私たちの獣医療サービスが目指すところは、

「きぼうをつくる」です。

飼い主さんが希望を持つには、これからどうするか、自ら選択する事が必要なんだと思います。

そのためにまず目の前にある問題に対処し、飼い主さんが選択できる様な情報を提供します。

治すのはひとつの手段に過ぎないのです。

例えば今回の腰麻痺のヤギのように、交配する目的で飼っている動物が立てない時。

死にはしないけど、立って交配出来る確率は50パーセントか、もう少し低いかも。反面、治療開始したら約2ヶ月は出荷できないので飼育労働費と経費がかかる。

飼い主はもちろん治って欲しいんです。一生懸命お世話してきたんですから。

でもね、このオスヤギが交配できないなら、この飼い主さんにとっては一緒に居る理由がないのです。

諦めるのは心痛が伴います。一方で治療するのは損失も、不安も伴います。

どうしていいか決められないので、獣医が呼ばれているんですね。

 

獣医師には、「飼い主の選択に寄り添う」という役割もある

獣医は治療するだけじゃなく、あるいは科学者のように研究成果をあげたり、真理を追求するだけじゃないんです。

獣医はこの飼い主さんがヤギに求める関係性を汲んで、気持ちを汲んで、動物の状態を診断して、それから手段を提示します。経験や知識、技術を総動員してわかる事を整理して、先行きを示します。

そして飼い主さんの言葉にならない想いを生かす、本当の気持ちを生かす選択をしてもらうのです。

そういう事が「飼い主の選択に寄り添う」なんです。

選ぶ時には痛みが伴っても、次への希望を持てる結論を出せること。これからも悔いなく頑張れること。

それが臨床で行う獣医療のゴールなんです。

ある現実が、その人にとって苦しすぎて、どうしても選択できない時もあるでしょう。そういう時は、その人がそれを受け入れるまで、全力で治療し続けます。飼い主が諦めないなら、一緒に諦めず頑張ります。

でも、本当は諦めた方が楽なのがわかってても言い出せない…。みたいな場合もあるので、そういう時は別の方向性を提示してみます。それでも飼い主が決められないなら、決めないまま一緒に結果を見てあげます。

そういう事も「飼い主の選択に寄り添う」なんです。

決めないという選択でさえ、納得して次に進むためにはとにかく自分で選ぶ事が大切だと思うからです。

 

臨床獣医の仕事で大切・難しいことは、「相手の気持ちを汲む」こと

「治る病気」を治すのなんか、簡単なんですよ。そんなのは、真面目に勉強してたくさん症例にあたって、ちゃんと治療してたらできるんです。

臨床獣医の仕事でもっと大切で難しいのは、むしろ相手の気持ちを汲む事です。いろんな人が命に向き合う時の苦悩なんかを一旦預かって整理して、その人がそれを受け入れられるような、前向きになれるような形で返してあげる事です。

そうして、その人が悲しんだり苦しんだりした後にも、また頑張ろうって思ってもらえることが、治す事よりずっと大切な成果なんです。

ね、共に臨床で頑張ってる獣医の先生方。

そう思いませんか?