前回までの酸塩基平衡の解説を理解した上で、典型的な病態について理解しつつ覚えていきましょう。
下痢 代謝性アシドーシス
胆汁、膵液、腸液は多くのHCO3-を含みます。
そのため下痢等で消化液の分泌亢進が起こると、普段より多くのHCO3-を消費するため、代謝性アシドーシスとなります。
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/
ヒトの先天性疾患でCl喪失性下痢の場合、又は下剤の乱用による下痢ではアルカローシスになる事がありますが、例外もあるよという程度に付記しておきます。
肺炎、肺水腫等での換気不全 呼吸性アシドーシス
肺換気が障害されると、体内のCO2を効率よく排泄できなくなるので、呼吸性アシドーシスとなります。
慢性では腎性代償として血中HCO3-が増加します。
過呼吸 呼吸性アルカローシス
肺換気が過剰になると、体内のCO2を余分に排泄してしまうので、呼吸性アルカローシスとなります。
ショックと心不全 代謝性アシドーシス
循環機能低下により糖の嫌気性代謝が起こり、結果として乳酸の生成が亢進するため、乳酸アシドーシスが起こります。脱水、出血、薬物中毒による酸素利用障害、貧血など他の理由でも、組織での酸素利用が障害されると、同様に乳酸アシドーシスが起こります。
激しい運動では、筋肉において相対的に酸素不足になり、筋肉でできた乳酸が血中に出て乳酸アシドーシスとなります。
飢餓と糖尿病 代謝性アシドーシス
栄養不足のため脂肪分解が起こり、ケトン体(酸)が過剰となるため、代謝性アシドーシスとなります。
腎不全 代謝性アシドーシス
腎臓は生体内で生産された不要物(H+を含む)排泄する器官です。ですから生体内で物質が余った時に、調節機構を駆使して排泄します。
生命活動を行うと常時酸が生産されます。腎不全になるとH+の排泄能力が減るので基本的にアシドーシスになります。
ただし、腎機能が低下するということは、その他の原因でアルカローシスに陥った時のHCO3-の排泄能力も失うということで、アルカローシスの代償能力を失うため、アルカローシスにもなりやすくなります。
参考
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/
MSDマニュアル 代謝性アシドーシス
治療の計算あり
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/95/5/95_5_859/_pdf
日常臨床に役立つ酸塩基平衡の考え方
代謝性アルカローシス
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/95/5/95_5_853/_pdf/-char/ja
日常臨床に役立つ酸塩基平衡の考え方
代謝性アシドーシス
http://www.hokkaido-juishikai.jp/wp/wp-content/uploads/2014/05/1310-08.pdf
代謝性アシドーシスを生じた子牛下痢症における
呼吸性代償反応に関する研究
塚野健志