「一週間前に出産した山羊のサミちゃんのおっぱいが腫れて痛そうにしている」
という連絡をオーナーさんから受け診察に行きました。
サミちゃんは1週間前に子山羊を1頭出産しました。
オーナーさんにお話を伺うと食欲と元気は変わらずあるとのこと。
生まれた子山羊さんはお母さんの右側のおっぱいしか飲まず左側が腫れているようです。
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お熱を計ると40.1℃で平熱より少し高めでした。
さみちゃんの乳房を触ってみると、左側が浮腫といわれるおっぱいがたまりむくんでいる状態になっていました。
まだ乳房炎といわれる状態になってはいないもののこのままでは進行していく可能性があったので、
炎症を抑えるお薬と抗生物質のお注射、左側の乳房の内に抗生物質を注入しました。
そして、大切なことがもう一つ。オーナーさんに1日1回以上、おっぱいをしぼってもらうことをお願いしました。
乳房炎は乳房のなかに病原菌が入りそこで増える病気です。乳房の中は体温で温かく、そこにあるミルクは栄養がたっぷりなので
菌が増え、炎症が起きます。おっぱいをしぼることで、菌が乳房の中にずっとある状態、増える状態を避けることが出来ます。
また乳房炎にかかっているミルクを飲むと小山羊さんが下痢をおこしたり、乳房炎のミルクは味が変わってしまいますので
小山羊さんが飲みたがらず栄養不足になることがあります。乳房炎になってしまったときや疑われるときは、
お母さん山羊だけでなく子山羊さんの様子も気をつけてあげてくださいね。
さみちゃんはオーナーさんにおっぱいを搾りながら経過を見ていくことになりました。
*乳房炎のまとめ
<原因>
乳房の中に病原菌が入り込み、乳汁中や乳腺で増殖することにより炎症が起きる。
<どんな時にかかりやすい?>
・乳房・乳頭に傷がある場合
・乳汁が長時間乳房内にたまっていた場合。
・死産あるいは子山羊が病気で哺乳出来ないとき。
・離乳後の乾乳期
・機械搾乳時
<症状>
・乳汁の異常(色が変わったり、かたまりが混じったり、悪臭をもつクリーム状。
おっぱいの様子
・乳房が腫れる・熱を持つ・痛みがある
・皮膚が赤色や暗紫色に変色する
・乳房全体が硬く腫れて、乳汁が全く出なくなるときもある。
*乳房に病変があっても食欲・体温など一般状態に変わりないことも多い。
急性の場合は全身性の発熱が見られる。