下痢とは何か

下痢とは、便中の水分が通常より増えた状態のことです。
ヒトでは「便の量が一定以上になった場合」と定義されることもあるようですが、ここではより一般的に便性状の水様化のこととします。

大量の下痢により水分を失う速度が速い場合、脱水による合併症で死亡することがあるので早期の対応が必要です。

しかし下痢は消化管内の病原体を速やかに物理的に洗い流すという生体レベルでの防御反応であり、重要な防御機構ですから、ただ止めようとするのではなく脱水を補正しつつ原因を改善することが大切です。

下痢の病態生理

生体は消化管の分泌および吸収機能によって、消化液を多量に分泌し、ほぼ同量を再吸収しています。(ヒトでは1日約10L分泌し、9Lを吸収しています。1日摂取量の2Lよりはるかに多いです。)
ですから、この機能に変化が生じると容易にバランスを崩してしまいます。下痢は、腸管で水分の分泌が吸収を上回った場合に起こります。

機能による分類と原因

①分泌の増加または滲出液の漏出

平時より胃や小腸、肝臓、膵臓からは多量の消化液が分泌されていますが、感染症や消化不良により分泌が増加します。

例えば消化管の免疫活動により細菌毒素を感知した時、アレルギーや炎症が起きた時は、ヒスタミン、セロトニン、プロスタグランジン等が放出され消化液と粘液の分泌増加が起こります。
消化不良の結果、腸管内に未消化の脂肪や胆汁酸が増えると、結腸からの分泌増加が起こります。

コクシジウム感染症では、病勢が進むと結腸と直腸粘膜が破壊され漿液の滲出や出血がみられます。
このように腸管の分泌機能亢進だけでなく、腸粘膜の破壊により体液が滲出した場合も、便中水分が増加します。

②吸収の減少

胃、十二指腸、小腸では消化液の分泌が大きな役割ですが、吸収も行なっています。一方で、結腸、大腸では分泌も行いますが水分吸収が大きな役割です。

吸収を減少させる要因は、感染症、消化管の運動亢進、浸透圧負荷などです。

例えば感染性細菌が出す毒素(エンテロトキシン)はナトリウムとカリウムの能動輸送系を障害することで水分吸収を阻害します。

浸透圧負荷とは消化管内の浸透圧が上がることです。ソルビトールやキシリトールなどの消化管より吸収できない物質を多量に摂食すると、浸透圧負荷により腸管の水分吸収が阻害され、下痢の原因となります。
消化不良による便中の乳酸増加も浸透圧に影響を与えることが示唆されています。

細菌性因子や過度の腸管内容物による伸展刺激によって消化管運動の亢進が起こります。そうすると便の通過速度が上がり水分吸収が間に合わなくなるため、結果として水分吸収量の減少が起こります。

また寒冷ストレスや群ストレスも消化管運動を亢進させることがあり、下痢の原因となります。

③複合要因
食事性の浸透圧性下痢や神経性の胃腸運動亢進性下痢のように、単一要因の下痢もありますが、大抵の下痢は一連の生体防御反応として分泌の増加、吸収の減少、運動の亢進が同時に起こります。

例えば大半の感染性下痢では、分泌亢進が主体ではありますが、吸収の減少、蠕動の亢進も同時に起こります。どの機構に大きく影響を与えるかは、それぞれの病原体の特徴によります。

寄生虫やその他の感染により免疫反応としてヒスタミンが放出されることにより、分泌亢進と運動亢進が同時に起こります。感染症でない場合でも、物理的、科学的刺激、アレルギーなどで消化管の炎症が起これば同様です。

消化不良では未消化物質により消化液の分泌亢進、腸内での病原性菌の増殖、それに起因する感染、または未消化物質による浸透圧上昇などが連鎖的に起こり、これもまた同様に複合的な反応となります。

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *