牛飼いの基本作業6

6.除角

飼育地域や飼育方法、好みにもよりますが、闘争の予防や人間側の怪我予防のために、除角をすることがあります。

(1)クリームを用いた除角

角芽周囲の半径2cmほどに、角の成長組織を壊すクリームを塗布する方法です。毛刈りした後に塗布し、その後数時間は頭部を擦ったり舐め合ったりしてクリームが取れないよう気をつけて管理します。

http://thms.jp/thms201602-001.pdf

生後1ヶ月以内のまだ角が小さなうちに処置します。

除角クリームとか除角ペーストなどと呼ばれて市販されています。KOHを用いて自作する方法もあるようです。

使用感はケースによりさまざまな意見があります。ストレスが少ないという意見もありますが、皮膚を薬品により壊す方法ですので、ある程度は疼痛もあります。目標部位以外、特に眼などに付かないよう注意が必要です。

(2)角周囲の皮膚を焼烙する方法

広範囲を焼ける焼きごてか、径3〜5cmのパイプのような先端をもつ焼きごてを用います。

生後1ヶ月以内のまだ角が小さなうちに処置します。

ペーストを使う場合と同様に角芽周囲の皮膚を焼き壊すか、角の生える部分の皮膚を皮膚を焼き切る事で角が生えないようにします。パイプ型の場合は皮膚ごと剥がす場合があります。この場合は頭蓋骨が露出しますので、感染予防に抗生物質等を使用します。

いずれの場合も頭部を焼烙するため、脳に熱傷を与える場合があります。

(3)子牛の除角

生後1ヵ月を過ぎたら、伸びてきた角を切り取る必要があります。ニッパーのような除角器で角を切り取ります。

切り取った後、根元の皮膚を焼烙することで、その後角が伸びてこないようにします。

ウシ科の角は頭蓋骨の角突起が芯になって、皮膚が爪のように変化した角鞘に覆われています。

https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E8%A7%92

https://www.shepherd-clc.com/archives/14865

http://jlia.lin.gr.jp/hi_wakaushi/pdf/2-7-1.pdf

皮膚の最下層を胚芽層といい、角の根元の胚芽層が成長して角が伸びます。ですから角の根元の皮膚を深層まで焼烙することで、その後の角の伸長が抑えられます。

資料1 p5
http://www.city.oshu.iwate.jp/htm/ushi/03_back/archives/01/23.pdf

すでに角突起(頭蓋骨が伸びた角の芯)が形成されている場合は、皮膚の切除創からだけでなく角突起の切除創からも出血します。これも焼烙により止血します。

処置後はハエが産卵したり、感染症にならないよう汚染を防ぐため包帯やテープによる被覆を行い、また抗生物質の投与を行います。

(4)成牛の除角

成牛の場合は、かなり太い骨を切る処置になります。

角突起には血管が通り、根元近くでは中が空洞化して頭蓋内と通じています。また角鞘の内側にも血管が通っています。

成牛の除角をする場合、どの部位から切るか目的に応じて選択します。今後完全に生えてこないようにするためなら、かなり頭蓋骨近くの根元から切る必要があります。人の事故や牛同士の闘争を予防するためなら、武器にならない長さまで短くする必要があるでしょう。角が巻き込んで自身の顔面を傷つけるのを防ぎたいなら、先端のみの切除でいいかもしれません。

基本的に頭蓋骨に近いほど血管は太く多く、角突起の内腔は大きくなり、除角した時に与える障害は大きくなります。概ね先端の1/3くらいであれば出血も僅かで空洞もない事が多いです。

角突起内の空洞が大きく開いてしまった場合は、雨水やハエ、埃などが頭蓋内に入れる状態になってしまいますから、当分の間、結合織がその孔を埋めてくれるまでの間は、テープ等で被覆しておく方が安全です。

手順1(保定と麻酔)

首をスタンチョンや柵等から出して、横向きにロープで固定します。

手順2(駆血)

牛の角に向かう血管は、角の根元と耳の根元の間にあります。ですからハチマキのように縛ると、除角後の出血が抑えられます。ビニールテープで強めに数回巻いてください。

手順3(麻酔)

キシロカイインまたはプロカインを用いて麻酔します。こめかみ、角と耳の間、さらにその中間の3ヶ所皮下に注射して神経遮断する伝達麻酔です。それぞれ5ml、2ml、2ml注射します。

手順4(切除)

塩ビパイプ用のノコギリを使います。除角専用の線鋸もありますが、力の入れ方がやや難しいのと、清潔に保つのが難しいです。

大きなニッパーのようなギロチン式の切除器具を使う場合もあります。

スムーズに切除できて、清潔に保てる器具であれば、結果的に疼痛が少なく、感染の可能性が少なくなります。

手順5(止血)

焼烙により止血します。電気ごてを使うか、炭で熱した鉄ごてを使います。出血がない場合は不要です。

手順6(感染予防)

切除部を包帯やテープで被覆します。ハエの産卵や雨水、汚染を防ぐためです。耐水性の素材が望ましいです。

処置時に汚染してしまった場合は抗生物質を使用する場合があります。

手順7(駆血の解除)

除角後半日ほど経過したら、手順2の駆血帯を取ります。これを忘れると、頭の皮膚が広範囲に壊死してしまうため、忘れることのないよう気をつけてください。駆血帯は目立つ色のものを使用することをおすすめします。

駆血帯の除去後、再出血がないか確認し、必要であれば再度止血処置をします。

手順8(治癒確認)

翌日から3日は食欲の低下や発熱がないか確認します。

処置後7日ほどで化膿がないか確認します。

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