*山羊の診療Diary 症例19 眼のふちのけが
今回の症例は・・・
山羊さん同士がけんかしてケガをしているので診察して欲しいという連絡がありました。
現場に行き、オーナーさんにお話しを伺うと、
月齢が近い山羊さん同士を同じケージに入れたところ、けんかをして眼をケガしてしまった
のではないかということでした。
診察してみると、左目の下眼瞼(まぶたの下側)が縦に切れて、めくれ上がっている状態でした。
幸い出血は止まって、眼には今のところ角膜などに傷はありませんでした。
次に飼育環境、一緒にした山羊さんを観察してみました。
ケガをしてしまった山羊さんは無角で、もう一方の山羊さんは角がありました。
確かに、けんかや遊んでいるうちにケガをした可能性もありますが、
飼育環境がワイヤーのケージのため、ワイヤーの端などでケガをした可能性も考えられました。
眼のふちの怪我に対する2つの治療法
治療法として、下記の二つの方法をお話しさせていただきました。
①外科治療
麻酔をかけて傷を皮内縫合法という方法で縫う
②内科治療
抗生剤のお注射、内服で傷の感染を防ぐ。
点眼によって眼の乾燥を防ぐ。
オーナーさんと相談した結果、
この山羊さんは性別が雄でも雌でもない間性で、今後、出荷を考えているということで、
内科治療を選択され、出荷までの間、点眼で様子を見ながらケアしていくということになりました。
(間性については後日あらためて記事にしたいと思います)
注意点として傷自体は治っても、
瞬きが以前のようにできない場合、眼の乾燥が起こります。
眼が乾燥するということは、眼の表面の角膜に傷がつきやすくなったり、感染の可能性が増加します。
そのため、傷が回復した後も、経過を見ながら、今後も点眼が必要になる可能性をお話ししました。
また、ワイヤーケージは思わぬところで足をはさんだり、今回のようなケガを引き起こすことがあるので、
むき出しになったワイヤーを直したり、隙間を点検して、今後、ケガが起こらないようにお伝えしました。
院長追記 : 動物だけを診るのではなく、畜産コストや飼い主さんの目的・目標や気持ちを汲み取ることも大切
今回のように畜産業として飼育している場合、治す事は出来ても、最低限の処置に留まる事があります。
アン先生のように、獣医は動物だけでなく飼い主さんの目的、目標をきちんと受け取って治療方針を決める事が大切です。
間性のため今後繁殖させる事が出来ないという事、傷の状態は全身状態に大きな問題は起こさない事、畜産業なので治療コストを抑えた方がいい事、飼い主さんの気持ち。動物との接し方や飼育している目的は、飼い主さんごとに様々です。
総合的に最善の方法を選択して、さらに再発予防をします。
獣医師は獣医学的な知識や技術が必要なのはもちろんですが、人と接して話を聞く力、飼い主さんのことを理解する力がそれにも増して大切なんです。