山羊の診療Diary症例39 角結膜炎(ウシとヤギ)

山羊の診療Diary症例39 角結膜炎(ウシとヤギ)

今回の症例は・・・
ウシさんのお話ですが、以前同じ症状の子ヤギさんがいて、
まだお話していなかったので一緒にご紹介したいと思います。

先日、妊娠鑑定に伺った牛農家さんで、
「目が腫れて、目やにが出ているから診てほしい」
との依頼を受けました。

お話を伺うと、昨日から目が開かず痛そうにしていて、
食欲元気は変わらないというお話でした。

早速、ウシさんを繋いで診てみると、
結膜が上も下も腫れて、目やにがでて目がくっついていました。
水でよく洗い、まわりの目やにや汚れをとって目を開けると、
角膜が白く濁っていました。

結膜とは・・・
上はまぶたの裏の赤いところです。
下はあっかんべーしたときの赤いところです。

角膜とは・・・
目の表面の透明なところです。光を目に取り込む役割をしています。
透明で傷つきやすくそして痛みを強く感じる組織です。
角膜の傷が深く一番下の角膜実質まで傷がつくと「角膜潰瘍」という状態になり
この時は、目をしばらく閉じておく手術が必要な時があります。

角結膜炎の原因としては、
一緒にいる牛と遊んでいるうちに目をつついてしまったり、草や床材が目に入ったり、
かゆくて柱や柵で目をかいてしまったり、物理的な刺激で傷がつき感染がおこり
炎症を起こしてしまう事があげられます。

しかし、ウシさんには伝染性のの角結膜炎もあります。
モラクセラ(Moraxella bovis)という細菌で起こる「伝染性角結膜炎(ピンクアイ)」
やウシヘルペスウイルス1型の感染によるIBR(ウシ伝染性鼻気管炎)という病気です。

今回のウシさんは、眼は結膜炎、角膜の表面の白濁、
全身状態は良好でほかのウシさんへの感染もなかったので
抗生物質の注射をして、主に目の局所的な治療から開始しました。

目をはじめにお水で目を洗って汚れを落としました。
そして、抗生物質入りの点眼剤を作って点眼しました。
1日に5~6回の点眼をお願いして1週間後、再診としました。

1週間後、お電話をして様子を伺うと
「目やにもでなくなって、良くなってきているよ!」
というお話でした。

経過を見に伺うと、目がすっきり開いているウシさんがいました。

 

結膜の腫れがなくなり、あと少しで角膜の白いところもきれいになりそうです。

以前、診察した同じような症状の子ヤギさんの写真です。

この時も、同じように目の洗浄と
飼い主さんが、点眼をがんばってくれて、2週間でよくなりました。

山羊の伝染病で角結膜炎での病気はないかと調べたところ
「伝染性無乳症」という病気がありました。沖縄県での発生のようです。
関節炎や他の全身症状も見られるようなので、眼だけの症状ではないときは注意が必要ですね。

今回のような、全身症状のない角結膜炎の場合、
水で目やにや汚れを洗浄して、
1日5~6回の点眼をがんばると2週間ぐらいで改善することが多いです。

ですが!簡単なことではないのです。
1日5~6回の点眼をおねがいしますが、
毎日実行するのはとても大変だと思います。
今回の症例もそうですが、
農家さんや飼い主さんのがんばりで、
このうしさんもやぎさんも改善しました。

1つの病気が治るとき、動物の生命力。
そして、
飼い主さんや農家さんができること。獣医さんができること。
それらが合わさったときに光が見えると私は感じています。

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