山羊の診療Diary症例26 乳頭損傷

山羊の診療Diary症例26 乳頭損傷

今回の症例は・・・

飼い主さんから「前回の出産の時、ひどい乳房炎になった山羊が朝からおっぱいを蹴って
痛そうにしている」という連絡がありました。

早速、診療に伺うと4月はじめに出産予定のボーボちゃんが、おっぱいを蹴り蹴りしながら山羊舎の中でたたずんでいました。

飼い主さんにお話を伺うと、前回の出産の時に乳房炎になったのでまだ産前だが心配になって連絡をいただいたとのことでした。
食欲と元気は変わらないとのことです。
ボーボちゃんを外に出していただき繋いで診療をはじめました。

お熱を測ると39.8℃で微熱がありました。全身状態は良く、健診での心音・肺音は異常ありませんでした。腹部触診と聴打診でも問題はありませんでした。そして、乳房の状態を診てみました。

はじめに乳房炎に感染していないか確認するために乳房の状態を確認しました。
出産後のおっぱいをあげていない時期でも、乳房炎にかかることはあります。
ボーボちゃんの場合もまだ出産前ですが、乳房炎に以前感染したことがあることから、
乳房炎の細菌がおっぱいの中に残っていた場合、産前やストレスがかかったときに乳房炎が再発する可能性がありました。また、まだ一度も赤ちゃんを産んでいない場合でも乳頭から細菌感染が起これば、乳房炎を発症する場合があります。
ボーボちゃんのおっぱいは、左右の乳房ともに熱感や硬結などの乳房炎の症状はありませんでした。次に乳頭を診てみました。

右側の乳頭は異常がありませんでしたが、左側の乳頭に傷があり、硬くなっていました。
触るととても痛がっていました。ボーボちゃんのおっぱいは大きく下に垂れている形のため、おそらく自分で乳頭を踏んでしまった可能性が考えられました。
以上のことから、乳頭損傷と診断して治療をはじめました。

はじめに傷口をヨード剤で消毒した後に抗生剤と炎症を抑えるお薬の注射をしました。
また、飼い主さんに様子を見ていただいて、乳頭が体のどこかにこすれている場合は、
乳房をおおって傷が保護できるようなブラジャーをつけてもらうように飼い主さんにお願いしました。

飼い主さん次の日ご連絡があり、だいぶ痛みが治まっているということでした。
抗生物質のお薬を処方して経過観察となりました。

*乳頭損傷について
乳頭損傷は乳牛で良く起こる病気です。しかし、山羊さんでも今回のように乳頭を自分で踏んでしまって起こることがありますし、乳用山羊さんではさらに起こりやすい可能性があるので乳牛の乳頭損傷を参考にして、山羊さん用にまとめておきます。

<乳頭損傷とは>
物理的、あるいは科学的な原因により起こる乳頭の障害をいいます。

<原因>
①物理的な損傷
・放牧地の有棘鉄線やワイヤーフェンスで傷つけてしまう
・密飼いや飼育する部屋が狭くて、自分でまたは他の山羊の乳頭を踏んでしまう
・寒冷感作により乳頭の先が傷ついてしまう
・搾乳機でおっぱいを絞りすぎてしまう
②化学的な損傷
・搾乳時の乳頭の消毒の時に消毒剤で皮膚が荒れてしまう

<症状>
皮膚が荒れているだけでも痛みがあります。痛みがあると気になり自分で蹴ってしまいさらに悪化することがあります。

また、傷の深さや場所によってはおっぱいを出すことに障害がでます。たとえば、乳頭の先端の傷では炎症から組織が厚くなり管が狭くなることで、おっぱいが出にくくなったり、乳頭管より上で乳頭が切断された場合はおっぱいが漏れてしまいます。こうした場合、搾乳や哺乳することが難しくなってしまいます。

<飼い主さんにできること>
・山羊舎にゆとりを持たせて自分で踏まないようにする
・1つのお部屋で適切な数の山羊を飼育する(他の山羊の乳頭を踏まない)
・削蹄をして蹄で傷つけないようにする
・乳頭の消毒剤は適切な濃度で使用する
・搾乳機のメンテナンスを行い、整備不良での絞り過ぎを防ぐ
・おっぱいが大きくて擦れてしまう場合は、ブラジャーを作って着せてあげる。
牛さんには牛用ブラジャーというのがあります。
私も山羊用を作ってみたいです!

<獣医さんの治療>
・傷の洗浄・消毒
・軟膏の塗布
(乳頭を保護するため、ただし殺菌作用のあるものでないと感染を広げる場合があるので注意)
・抗生剤の投与
・外科処置(乳頭管拡張、切開、縫合など)

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *