Monthly Archives: August 2020

山羊の診療note12 ヤギのお産

山羊の診療note12 ヤギのお産

ヤギの難産の症例をこの後2つご紹介したいのですが、
その前にヤギの正常な出産について今日はお話したいと思います。

ヤギの分娩は難産になることが少なく、安産であることが多いといわれています。
実際、私の住む島のヤギの飼い主さんたちから、「自然に生まれていた」「難産は見たことない」という声をききます。
しかし、診療で難産の依頼を受けることはもちろんあります。
お産の異常に飼い主さんが気がついて対処すれば子ヤギさんを助けることができるので、
まずは、正常なお産を知っておきましょう!

*正常なお産の進み方

①陣痛開始
・ごはんを食べなくなる
・うろうろする
・地面をひっかく動作 など

②1次破水

③足胞(ふうせん)が出る
風船の中に足が2本みえます

④2次破水 重要 *ここから先お産がスムーズに進まないときはすぐに連絡!!

⑤足2本と鼻が出る

⑥頭が出る

⑦体が出る

子ヤギさん誕生!!

これが正常なお産の順番です。

陣痛から1次破水まで、牛や羊は2時間から6時間程度ですがヤギでは12時間かかることもあるそうです。
(家畜改良センター山羊の飼養管理マニュアルより)
私たちの病院では牛では陣痛開始から2時間しても1次破水しない場合は連絡いただくようにしていますが、
ヤギはこのように牛に比べて12時間と陣痛の時間が長いため、ここでの異常の発見は難しいです。
しかし、陣痛が始まって、半日経過しても生まれないときや異常に苦しんでる様子など見られた際は獣医師に連絡してください。

一番注意してほしいのは2次破水してそこからお産が進まないときです。
この時は待たずにすぐに獣医師に連絡するようにしてください。
赤ちゃんが出られない体の向きだったり、体のどこか(頭や腰)が引っかかって出られないことがあります。

また、ヤギさんは双子や三つ子のことが多くあります。
正常な分娩の場合、1頭目から次の赤ちゃんは1~2時間の間に生まれます。
1頭目が生まれた後、まだおなかに入っていないか確認しましょう。
飼い主さんが確認する方法として、妊娠鑑定の時にお話しした、
「おなかを持ち上げる方法」があります。乳房の付け根を上に持ち上げておなかの中にいる子ヤギさんを確認します。
詳しくはこちらの記事を参考にしてください。

そして、ヤギの分娩は日中(早朝から夕方)が多く、夜間は少ないと言われています。
分娩に立ち会うチャンスがあった場合は、このような異常がないか確認しつつ、
そっと見守ってあげてくださいね。

ヤギ飼育の基本講習会を開催しました in まいぱり宮古島熱帯果樹園

先月、ヤギ飼育の基本講習会を開催しました。

今回の講習会は、ヤギの健康管理でいつも診療にお伺いしています「まいぱり宮古島熱帯果樹園
のスタッフの皆さんに向けての講習会でした。

まいぱり宮古島熱帯果樹園さんでは、現在9頭のヤギさんたちが暮らしています。

スタッフさんの方の中には、はじめてヤギをお世話する方もいらっしゃるとのことで、ヤギの基本をみんなで勉強することになりました。

この機会に、普段の診療では伝えきれなかったことをお話したり、管理する上での悩みや質問などをお受けしたりしました。

第1部は院長、第2部は私が講師としてお話させていいただきました。

第1部 ヤギってどんな動物?
・動物の分類からみたヤギ
・ヤギの消化の仕組み
・成ヤギの基本のごはんについて
・島でよくヤギにあげる野草の栄養について

第2部 ヤギがどんな時獣医さんを呼ぶ?
・ヤギでよくみられる3つの病気のお話
(下痢・鼓脹症とルーメンアシドーシス・腰マヒ)
・ヤギの健康チェック
・事前にいただいていた質問の回答
「ヤギの仲間はずれといじめについて」

第3部は削蹄師のゆうきさんに講師をお願いし、
実際にまいぱりのヤギのはなこちゃんの削蹄をしながらの実技講習を行いました。

第3部 ヤギの削蹄

みなさんとても勉強熱心で、質問もたくさんいただいた講習会でした。
普段、診療に行った際もいつもたくさん質問をいただきます。

また何か問題が出た時は、皆さんで話し合われてヤギたちが健康に暮らせる努力をしていらっしゃいます。先日はヤギの健康チェツクシートを作成されていました。

わたしたちも勉強会や診療を通して、ヤギの健康管理をこれからも一緒にがんばっていきます。

まいぱり宮古島熱帯果樹園のホームページはこちらです。

きれいな南の島のお花やくだものが園内にたくさんあり、お散歩するのにもとても素敵な場所です。
そして、かわいいヤギさんや宮古馬に会うことができます。
この春に生まれた子ヤギのハイジちゃんやクララちゃんもすくすく成長中。
まいぱりのスタッフの方が大切に愛情をもって人工哺乳を頑張ったヤギさんなのでとても人に慣れています。
宮古島にいらっしゃった際には、まいぱり宮古島熱帯果樹園で、「ハイジー!」「クララー!」と声をかけてみてくださいね。

また、講習会開催などのご希望はお気軽にこちらのブログのコメント欄よりご連絡ください。

山羊の診療Diary症例31 皮下膿瘍 2例

山羊の診療Diary症例31 皮下膿瘍 2例

今回の症例は・・・
皮下にできた2つの膿瘍の症例をご紹介します。

①おしりにできた皮下膿瘍
初めの症例は、下痢の治療で往診治療を依頼された際に、
おしりのところにできものがあることに気がつきました。
おしりの左側のしっぽの斜め下にピンポン大の腫瘤がありました。

初めに針を刺す検査(バイオプシー検査)を行いました。
すると、針先に白いチーズ様のものが吸引できました。
この時点で、細菌感染の膿の可能性が大きくなった為、はじめの治療は、
1週間抗生物質の投与をして経過を見ることになりました。
病院に戻り、バイオプシー検査でとれた白いチーズ様のもので塗抹を作り
、染色して顕微鏡で確認しました。はっきりとした好中球の像は見られなかったものの、
異形の細胞なども見つかりませんでした。

1週間後の再診で、下痢はすでに治り、食欲・元気も元にもどったもののできものの大きさは
そのままだったので、切開して洗浄することになりました。

やはり、白いチーズ様の膿がたくさん排出されました。
ヨード剤にて洗浄しました。
その後、飼い主さんからきれいに治りましたと連絡いただきました。

②顔にできた膿瘍(乾酪性リンパ節炎疑い)

飼い主さんが右側の耳の下が腫れていることに気が付き往診に伺いました。

女の子のヤギのくにちゃんの診療をしてみると、
右側の耳の下にピンポン玉よりやや大きめのできものができていました。

食欲、元気もあり全身状態は良好でした。

顔、特に耳の下にこのような腫瘤ができる場合、耳下リンパ節に細菌が感染して膿の入った腫瘤ができる
乾酪性リンパ節炎が疑われます。

*乾酪性リンパ節炎とは・・・
膿瘍の原因がコリネバクテリウム属菌の場合、膿瘍から細菌が血流やリンパ系を介して
体内リンパ節や内部臓器に転移すると、乾酪性リンパ節炎を引き起こします。

症例20のヤギのけんとくんも同じ場所に膿瘍ができ、この病気が疑われました。
詳しくは・・・

山羊の診療Diary 症例20 顔にできた膿瘍

くにちゃんは、体の大きなヤギさんで穏やかですが、治療が安全にできるように軽い鎮静をはじめにかけました。
次にくにちゃんを横に寝かせてから、
腫瘤をイソジンで消毒し、針を刺す検査(バイオプシー検査)をして白い膿を確認しました。

そのまま、メスで腫瘤を切開し

膿の排出と洗浄を行い

最後にヨード剤で洗浄・消毒を行いました。

抗生物質のお注射と1週間の抗生物質の処方をして経過観察をしました。

10日後です。きれいに治りました。

ヤギさんの膿瘍は、固いカッテージチーズ様のものが多く、
なかなか自然には排出されずこぶのようになってしまう場合が多いので、
見つけた時には、獣医さんに相談して洗浄や消毒、お薬の処方の相談をしてくださいね。

「ヤギの友」第42号に寄稿、掲載されました

全国山羊ネットワークで年2回発行されている会報「ヤギの友」の第42号に寄稿し掲載されました。

今回私たちは、前回の第41号に引き続き
「山羊の病気と削蹄」について寄稿しました。

削蹄は、削蹄師のゆうきさんと一緒にお隣の島のヤギのくになかちゃんにモデルになっていただき、削蹄したときの事例を紹介しました。

病気については、
・産後の膀胱炎
・ルーメンアシドーシス2例
についてまとめました。

特に、ルーメンアシドーシスを理解するために、ヤギの胃や消化の仕組みを図解しました。
ヤギは人間と違い、胃が4つもあるのでなかなか理解が難しい部分でもありますが、
消化の仕組みを理解すると、ヤギの食事や病気に対する理解が深まると思います。
また、治療のための「経口チューブの挿入法」やそのときに使用する手作りの道具についてご紹介しました。

「ヤギの友」は全国ヤギネットワークの会報です。
ご興味がある方は、ホームページはこちらです↓

https://japangoat.web.fc2.com/