山羊の診療Diary症例31 皮下膿瘍 2例
今回の症例は・・・
皮下にできた2つの膿瘍の症例をご紹介します。
①おしりにできた皮下膿瘍
初めの症例は、下痢の治療で往診治療を依頼された際に、
おしりのところにできものがあることに気がつきました。
おしりの左側のしっぽの斜め下にピンポン大の腫瘤がありました。
初めに針を刺す検査(バイオプシー検査)を行いました。
すると、針先に白いチーズ様のものが吸引できました。
この時点で、細菌感染の膿の可能性が大きくなった為、はじめの治療は、
1週間抗生物質の投与をして経過を見ることになりました。
病院に戻り、バイオプシー検査でとれた白いチーズ様のもので塗抹を作り
、染色して顕微鏡で確認しました。はっきりとした好中球の像は見られなかったものの、
異形の細胞なども見つかりませんでした。
1週間後の再診で、下痢はすでに治り、食欲・元気も元にもどったもののできものの大きさは
そのままだったので、切開して洗浄することになりました。
やはり、白いチーズ様の膿がたくさん排出されました。
ヨード剤にて洗浄しました。
その後、飼い主さんからきれいに治りましたと連絡いただきました。
②顔にできた膿瘍(乾酪性リンパ節炎疑い)
飼い主さんが右側の耳の下が腫れていることに気が付き往診に伺いました。
女の子のヤギのくにちゃんの診療をしてみると、
右側の耳の下にピンポン玉よりやや大きめのできものができていました。
食欲、元気もあり全身状態は良好でした。
顔、特に耳の下にこのような腫瘤ができる場合、耳下リンパ節に細菌が感染して膿の入った腫瘤ができる
乾酪性リンパ節炎が疑われます。
*乾酪性リンパ節炎とは・・・
膿瘍の原因がコリネバクテリウム属菌の場合、膿瘍から細菌が血流やリンパ系を介して
体内リンパ節や内部臓器に転移すると、乾酪性リンパ節炎を引き起こします。
症例20のヤギのけんとくんも同じ場所に膿瘍ができ、この病気が疑われました。
詳しくは・・・
くにちゃんは、体の大きなヤギさんで穏やかですが、治療が安全にできるように軽い鎮静をはじめにかけました。
次にくにちゃんを横に寝かせてから、
腫瘤をイソジンで消毒し、針を刺す検査(バイオプシー検査)をして白い膿を確認しました。
そのまま、メスで腫瘤を切開し
膿の排出と洗浄を行い
最後にヨード剤で洗浄・消毒を行いました。
抗生物質のお注射と1週間の抗生物質の処方をして経過観察をしました。
10日後です。きれいに治りました。
ヤギさんの膿瘍は、固いカッテージチーズ様のものが多く、
なかなか自然には排出されずこぶのようになってしまう場合が多いので、
見つけた時には、獣医さんに相談して洗浄や消毒、お薬の処方の相談をしてくださいね。