Monthly Archives: November 2020

山羊の人工授精チャレンジ ~膣内クリーム法を現場でやってみよう! 道具編〜

今回は、今年の夏に試してみた、発情同期化のお話です。

今まで、人工授精チャレンジでは、ホルモン剤の注射のみで定時人工授精ができないか試していました。しかし、発情は明瞭にわかるものの妊娠に結びつかず、ホルモンの調整などまだしばらく実用化するのに時間がかかりそうでした。

そこでまずはすでに確立されている「膣内クリーム法」での同期化を現場で活用できるかやってみることにしました。

ヒツジの発情同期化の方法の論文を参考にして行いました。
参考文献はこちらです。

「めん羊の発情誘起 ~膣内クリーム法」河野 博英 著

膣内クリーム法とは、現在牛の繁殖治療で行われているCIDERと原理は一緒です。
CIDERはシリコン製器具の中に黄体ホルモンが含まれています。
黄体ホルモンを膣の中に一定期間挿入しておくと、人工黄体として機能します。
これを除去すると、いくつかのホルモンが作用して、卵胞が発育して発情がおきます。
海外では、ヤギ用のCIDERが販売されていますが、日本では入手することができません。

膣内クリーム法は手作りでこのCIDERを作るような感じです。
クリームの中に黄体ホルモンを練りこみ、このクリームとスポンジを膣内に入れて、一定期間挿入した後にスポンジを抜きます。

今回は、使った器具の紹介をします。

1.アプリケーター
クリームとスポンジを膣に挿入する道具です。
注射のシリンジを使用しました。

2.スポンジ
クリームを膣内にとどめておくものです。

食器用のスポンジの固い部分をはがして使用しました。
スポンジの真ん中にモノフィラメントの糸を巻き付けて、膣から引き抜けるようにしました。

ヤギさんの大きさに合わせていろいろ作ってみました!

3.膣内クリーム
抗菌剤入りのクリームに。黄体ホルモンをすり潰し練りこみました。

完成してクリームを前に入れるだけのものはこちらです。

次回は、実際にヤギさんたちに使用してみたお話と結果についてです!!

産業動物獣医師のやりがいと大変さ、つらさ

産業動物獣医師は、どんな仕事をしているのか。

獣医師になりたい人が知っていなければならない

獣医と言っても、「ヒト」を見ないとダメなんです。

人の気持ちをわかる事が大切なんですよ。

動物の知識や技術は道具です。

どれだけひとを喜ばせることができるのか、どれだけひとを幸せにできるのか。

愛情の半分は動物に。半分は人間にも。

今回もwebマーケティングスペシャリストの中田さんとの対談です。

ついつい28分も喋ってしまいました。

web業界と獣医師には意外な共通点がありました。

お時間のある時にどうぞ。

どうぶつの本と絵本<やぎ> 「やぎのグッドウィン」

これから、時々どうぶつの本や絵本をご紹介したいと思います。
やっぱり、はじめはやぎさんの絵本。

今回ご紹介する本は「やぎのグッドウィン」です。

どんなお話かというと・・・

のうふのマックダッフさんに可愛がられているやぎのグッドウィン。
グッドウィンには秘密があって、
ごみばこのものをくちゃくちゃかむのが大好きなのです。
これが思わぬ騒動を引き起こす・・・というお話です。

獣医としては、
「ごみをくちゃくちゃするのが大好きなやぎ」なんてとてもおそろしい!!
のどやお腹につまらせる・・・とか
中毒になってしまうのではないかなどなどこわーい想像がふくらむところですが、
もちろんそんなことはこの絵本の中では起こりません。
(実際はヤギさんのごみ箱や餌箱のいたずらには気を付けてくださいね!!)

やぎのグッドウィンは物語の始めから終わりまで、
素直に自分の気持ちで動いて、ごきげんに暮らしています。
興味がある、やってみたい、こんなの嫌だ!
いろいろな気持ちをそのままに、もちろん、周りの目なんて気にしないで。

それとは対照的に絵本の中に出てくる人たちは
時に大切なものや価値を自分の気持ちではなく、
周りの評価や基準で決めてしまっているように感じました。

そればかりでなく、
あなたのため、あなたを大切に思っているからと
「あなた」という言葉を免罪符に、
相手を縛り付けてしまったり、
自分の欲求を叶えようとしたり・・・

その結果、大切なものを大切にするつもりがなくしてしまったり、
自分の気持ちと離れたことをやってしまったり…。
でもまたそこに気が付いて、もう一度やりなおしたり、その相手の気持ちを感じて感動するのも人間なんですね。人間はごちゃまぜで時にめんどくさい。

グッドウィンは物語を通していつも変わらず自分の思いに忠実に生き生きとした表情をしています。
ほんとうの気持ちとズレなければこんな風にいられるのかな。
たとえどんなことがおこっても。

「ただの出来事」を「騒動」にするのはいつも人間なのかもしれません。

その他にも、

やぎとの暮らしの中で、やぎってこんなことするよね!とクスッと思わず笑ってしまったり、

だれかに可愛がられていても、「それでも」という言葉に繋がる「ひとりぼっち」に思いをはせてみたり、

仲良くなる、繋がる瞬間だったり、

シンプルな線に色彩がのった絵も素敵で
読み返す度に、
その時々に心に触れる言葉やシーンが見つかり、
また、自分自身にも問いを立ててくれる
何度でも読み返したくなる絵本です。

「やぎのグッドウィン」
ドン・フリーマン さく
こみやま ゆう やく
福音館書店