山羊の診療Diary症例42 離乳後の乳房炎

山羊の診療Diary症例4 2 離乳後の乳房炎

今回の症例は・・・
「離乳後、片方の乳房が腫れていて元気がない」というご連絡がきました。
お話を伺うと、離乳後1か月ほど経過しているという事でした。
食欲・元気はあるものの、熱を測ると発熱しており、左側の乳房が拳大のしこりがあり、腫脹している状態でした。


乳を搾ってみると、透明の液体に時々クリーム状のものが詰まりながら出てくる状態でした。

写真 乳頭の先から白いクリーム状のものがでてきました。

これらの症状から乳房炎を疑い治療を開始しました。

ヤギの乳房はどんな構造?
ヤギの乳房は2つ(1対)あり、それぞれ乳区が分かれ独立しています。
乳房内には、上部に乳を産生する多数の乳腺胞があり、その下に乳をためておく乳腺槽があり、
そこから繋がる乳首にも乳をためておく乳頭層があります。

乳房炎とは?

乳房に細菌などの病原菌が侵入し乳房に炎症を起こします。
乳区が独立しているため、病原菌の感染はそれぞれの乳頭からの侵入で起こり左右間をまたいでの感染はありません。
*症状
乳房の腫脹、硬結が見られ熱感を伴う事もあります。また乳汁にも変化が見られます。
(乳汁が薄くなる、ブツブツとした塊が出てくる、クリーム状になるなど)
大腸菌の感染による乳房炎の場合、内毒素のエンドトキシンにより全身症状(元気食欲がなくなる・発熱・起立不能など)があらわれ、
急性に経過が進み乳房の壊死や死亡することがあります。

治療は乳房洗浄と抗生物質の全身投与を行い、熱が下がったところで乳房内に抗生物質の投与を数日間しました。
しこりは残ったものの、乳房の腫脹が減り、全身状態も良くなったので終診としました。

乳房洗浄の方法
①乳を搾る。
②生理食塩水に抗生物質、抗炎症剤を加えて、洗浄液を作る。
③点滴のラインをつけ留置針の外芯のプラスチックの針の部分を乳頭から差し込み洗浄液を乳房内に入れる。
④その後、乳房をやさしくマッサージしながら洗浄液を絞って出す。
⑤②と③を数回繰り返す

はじめに乳を搾ります

乳房洗浄中です

先端はこんな感じです

飼い主さんにできること
・飼育場所を清潔に保つ。
・清潔で適切な搾乳をする。
・乳房炎に罹患した際は、獣医師の指示のもと頻回に搾乳する。
・乳房炎の母ヤギの乳は子ヤギに与えないで人工哺乳をする。

特に、乳房炎の場合は、飼い主さんに乳を搾っていただくことが重要になります。
乳房の中は、体温で温かく、ミルクという栄養があるので細菌が感染すると培養器のように
なってしまいます。
今回も初めは、飼い主さんが一人で難しいという事で、
通いながら一人でも搾乳できるようにヤギの保定の仕方から練習しました。
無事、できるようになり、ヤギさんも元気になりほっとしました。
乳房炎で腫れている乳房の搾乳はヤギが痛がる場合があり、飼い主さんも大変だと思いますが、
これも治療の一環なので、担当の獣医師と相談しながら頑張ってくださいね。

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