ひとりぼっちのりんりん~自分の居場所~

今回のお話は、獣医としてではなく、いちヤギの飼い主としてのお話です。

ヤギを群れで飼育していると、そこに人間関係ならずヤギ関係が生まれていると感じます。
学術的にも、
「ヤギは群れる習性を持つと同時に、一定の個体間隔を保とうとする習性を持っており、
それらは社会的順位に反映する。群内の敵対関係、親和関係、性的関係、母子関係および人間あるいは他の動物との関係がある」
(ヤギの科学より引用)
また、「女王様ヤギ」という群れのリーダーがいて、飼い主さんが他のヤギに優しくすると意地悪をしてしまうことがあるようです。
飼い主さんは女王様ヤギがさみしい気持ちにならないようにはじめに優しくしてあげるのが対策とのこと。

順位とかやきもち、仲良しグループを作ったり仲間外れしたりとかいじめとか、
みんなと居たいけどひとりがいいとか・・・
ヤギ関係ってまるで人間関係!!

私がヤギの飼育管理の勉強をしているゆうきさんの牧場の、ヤギのりんりんは、小さいころから、のんびりやの女の子のヤギさんです。一緒に生まれた男の子のヤギさんにミルクを飲み負けてしまい、体調を崩したため、しばらく病院で預かり治療。元気になったところでまた、もとの群れで暮らすようになりました。

ヤギ関係は人間関係のように変化しているようで・・・
はじめは、群れに戻ってみんなとごはんを一緒に食べれていましたが、新しいヤギが入ってきたり、仲良しだったヤギのパンダがお引越ししたり、子ヤギたちの誕生・・・など
何かがきっかけで、群れの順位やバランスが変わったようでりんりんが群れになじめなくなっていきました。
ごはんをあげる場所を増やすなど工夫をしてみたものの、りんりんはみるみる痩せてしまい、
どこへいっても頭突きされ、食べる場所が見つけられないでひとりぼっちでたたずんでいることが多くなりました。
そこで、1頭で別に飼育してまずはとにかくりんりんの元気を取り戻すことにしました。

りんりんを元気なふくふくのヤギにするぞー!!
と、私は心に誓いました。

気合十分、毎朝、栄養たっぷりのネピアグラスを刈って、りんりんのところに通いました。
おいしそうに食べる姿をみてほっとしたものの、
しかし!!
タンパク質が多すぎで下痢・・・。そして自分で治療・・・。
バカバカバカー!!なんていうバカな事。初歩的な失敗。
反省し、気持ちを落ち着けて、
今度は、午前中、配合飼料と草地で自由に草を食べれるようにして、
午後は小屋で乾草と配合飼料を食べるようにしました。

そして、朝は私と一緒に牛舎の周りをお散歩。
野草(バナナの葉っぱ、おおばぎ、ガジュマル、センネンボク)を道草しながらいろいろ食べていました。


初めはリードをつけていましたが、リードなしでもついてくるようになり、
帰りは自分で小屋に入るようになりました。
そのうち、
牧場主のゆうきさんが牛のぼろだしで一輪車を押していると一緒についてお散歩するようになりました。

そして、ついに!!
ひとりぼっちだったりんりんに仲良しができました。

牧場猫のみーちゃんです。

一緒に寝たり、ふたりでぶらぶらしたりするようになりました。

りんりんは、
はじめに私やゆうきさんに慣れ、、
次に猫のみーちゃんと仲良くなり
そして、最後には、時々私と一緒に、
私が群れのヤギたちに草を運ぶときに一緒についてきて
自分でもう一度群れに入っていきました。
この時はどいてと他のヤギにどつかれても、負けずに食べていました。

りんりん強くなったねー。

散歩に行けるとはいうものの、元気になったりんりんが、
小さな小屋でなくのびのびと暮らせる環境はないかなと考えていた時、
動物が好きな子供たちのいる牛農家さんがりんりんのことを好きになってくれて
新しい家族のところでお家を作ってもらい暮らすことになりました。

りんりんとの日々で、
所属している場所に居場所を見つけられない時でも
世界は閉じているわけでなく
外の世界に心温まる繋がりを探すこともできる。
ぞして外ではなく自分自身とのつながりを結び直すこともできる。
その中で、受容される気持ち、受容する気持ちを自分の中にもてれば、
戻ることも、そのまま外に出ることも、そして、一人でいることも
人は自分で選んで、進んでいけるのではないかと感じました。

りんりんが元気になり、新しい家族のもとにいったあと、
良かったなと想うと同時に心にぽっかり穴が開いてしまったのも本当の気持ち。
しみじみ、さみしいなー。
元気にしようと頑張ってきたけど、元気にしてもらっていたんだな。

ありがとうね、りんりん。
どうかどうか幸せにね!!

 

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