*山羊の診療Diary 症例17 足の外傷 ~山羊のトーマススプリント&福木での固定~
今回の症例は・・・
山羊さんが足を骨折しているみたいだから診療してほしいという依頼が来ました。
両足に傷がある山羊。初診は抗生物質の注射
伺って見ると
子牛用のケージの中でうずくまっている山羊さんがいました。
前足どちらも曲げたままで伸ばせません。
両方の足に傷があり、ケガもしているようです。
お話しを伺うと
朝、オーナーさんがケージを覗くと
ケージの隙間に片方の足を挟んで、もう片方の足もケージの柵のところに引っかかって
宙づりの状態になっていたとのことです。
右足は膝のところの傷が
左の前足は脇のところに傷がありました。
まず傷の状態の改善のために
初診は抗生物質の注射を行いました。
2診目。山羊のトーマススプリントでの両足固定
そして、2診目。
傷は完全に治っていないものの
オーナーさんのお薬の塗布や看護のかいあって
快方に向かっていました。
食欲、元気はあって、立つ意欲もあるものの
前足、両足とも曲がったままになっていて、
伸ばせない状態でした。
固まっている膝をまっすぐに伸ばすのは難しい。トーマスプリントを利用する方針に
私は固まっている膝をまっすぐに伸ばすのは
牛の症例をみていいると
とても難しいことを感じていました。
しかし、飼い主さんも私もやれるだけやってみたいという気持ちが
強く、院長先生にどうにかならないかと訴えました。
そして、ただのギブスだけでは足を伸ばすのは難しいから、
トーマススプリントが良いのではという方針を院長先生からいただき、
やってみることになりました。
トーマスプリントとは。手作りしたときの写真
トーマススプリントとは、肢先が床につかないようにして
負傷した部位や手術部位に負荷をかけないように
固定する外副子です。
そして、
牛舎にある材料を集めてオーナーさんの協力の下、院長先生が手作りしました!
固定が終わると・・・
治癒へのおおきな第一歩。
なんとか立つことができました。
このまま様子を見たいただくことになりました。
3診目。トーマスプリントを改良し福木で固定しなおす
3診目は・・・
肢の経過を見るために山羊舎に伺うと、
あたらしいギブスが固定されていました。
オーナーさんにお話しを伺うと、
トーマススプリントだと立った後、立つことはできても
問題として、自分で座れない、
自力で立ち上がれない状態になってしまったとのことでした。
そこで、オーナーさん自身が先生の作ったトーマススプリントを参考に
改良し福木で固定し直したとのことです。
山羊さんの様子を観察してみると、
オーナーさんの工夫によって、
自分で座ったり立ったりできるようになっていました。
山羊さん自身もとても意欲のある山羊さんで一生懸命立とうとしているのを感じました。
福木・ギブスで固定したときに注意をする2つのこと
以下の2つのことを注意していただいてこのまま経過を見ることになりました。
①足がむくんでいないか、足先が冷たくなっていないかを確認すること。
ギブスが強く巻きすぎていると、血流が阻害されてしまい、足がむくんでしまったり、
ひどいときには壊死してしまいます。
②皮膚の状態(褥瘡)に気をつける。
ギブスの端がずっと皮膚にあたったままの状態になると傷ができ感染が起こったり、
褥瘡ができてしまいます。
1ヶ月後…最後にはギブスがなくても立てるように
そして経過を伺いながらの1ヶ月後・・・
元気になりましたー!!
オーナーさんの献身的な看護のおかげで
最後にはギブスがなくても立つことができました!!
動物の治る力を信じて、できることをしっかりやっていく大切さを感じた症例
牛の診療時に
肢や膝がケガや感染でまっすぐにならない状態が続くと、
治療しても、立てないままの状態や足が曲がって固定されてしまう症例をいくつも見てきました。
しかし、今回はじめの状態はなかなか厳しいものでしたが、
山羊さん自身の治る力、オーナーさんの諦めない献身的なお世話の力で立つことができました。
動物の治る力を信じて、できることをしっかりやっていく大切さを感じた症例になりました。
この山羊さんは、もともとこの土地にゆかりのある血統の山羊さんで、
縁がつながり、違う島からオーナーさんのところに来たそうです。
雄山羊さんなのでこのまま元気に大きくなって、
この牧場で子山羊さんたちの誕生に貢献し、また新たな縁が繋がりますように!!