山羊の診療Diary症例40 子ヤギの上腕骨の骨折 (固定の失敗からの治癒)

山羊の診療Diary症例40 子ヤギの上腕骨の骨折 (固定の失敗からの治癒)

今回の症例は・・・
「子ヤギの男の子が牧場の柵に前あしを挟んでいて、
助けたらその後、前あしをぶらぶらしているから診てほしい」

というご連絡が来ました。

さっそく、牧場に伺ってみると、

左の前あしをあげたまま走り回る子ヤギさんを見つけました。
どうやら左の前あしを地面に着けないようです。

子ヤギさんを捕まえて、左の前あしを触診してみました。
足先から触診をします。
蹄問題なし。
中手骨、関節大丈夫。前腕骨も問題なし。
そして・・・
上腕骨を触ったとき、折れているまたはひびが入っている部分が
明らかに触診でわかりました。


骨は皮膚から出ておらず、開放性の骨折ではありませんでした。

動物病院でしたら、レントゲンを撮れば詳細がわかると思いますが、
往診での診療の場合、ここで骨折の治療にはいります。
(参考 山羊の診療Diary症例35 中手骨の骨折)

はじめに「オルテックス」というギブス用包帯を巻きます。
これは、ふわふわした綿のようなもので、
ポリエステルとレーヨンの混紡で、肌触り・吸湿性に優れていてクッションの役目をします。
また、手で簡単に切れるので使いやすく、色が青いのでギブスをとる際に目印になります。

次に「スコッチキャスト」を巻いてギブス固定をします。
これは水で硬化させるキャスティングテープです。
素材はガラス繊維にポリウレタン樹脂を含浸させたもので、水に浸すと固まります。
石膏ギブスのような固定ができます。

ベタベタと接着するので必ず手袋をつけて行います。
そして、袋から出すと、どんどん固まってきてしまうので時間との勝負。
巻き終わったら、お水をつけて完全に硬化させます。

感染予防のために抗生物質を最後に打ちました。
そして、ケージに入れて、安静状態で様子を1週間様子を見ることになりました。

次の日、診てみるとまだあしが地面についていません。
おまけにギブスの上がすれている様子でした。
テープで補強して様子を見ました。

しかし、このまま1週間してもあしが地面についていません。
そこで、院長に再診をお願いしました。

私の、巻き方が甘くて、一番固定したい骨折の部分がしっかり固定されていないことが判明。
大、大、大反省です。
強く巻きすぎて、血流が阻害されて浮腫がおこるのを心配しすぎてしまいました。
骨折部位が固定できてないからいつまでたっても骨折部位が良くならずあしも地面に着けない状態になっていました。

一度ギブスを外して、院長に巻きなおしてもらいました。
前膝の上、なるべく高い位置までギプスを巻き、その上から防汚のためテープを巻いています。

2週間後外してみると、骨折部位は接合し、前からも横からもわかるくらい太くなっていました。

ギブスを巻きなおしてから地面にあしが着くようになり、外してからしばらく経つと元気に走り回れるようになりました。

単純骨折の場合は、骨折部位が動かないように固定することが大切です。もちろん皮膚の血流を阻害しないように注意することも同時に大切です。
子ヤギの場合、成長期でもあり骨も付きやすく予後が良いようです。
ただし、私のように巻きが甘いとくっつくものもくっつきません・・・
とてもとても反省する症例になりました。

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