1)呼吸

ここでは呼吸運動に影響を与える要因を整理したいと思います。呼吸の調節は、ほぼ神経系により行われています。

呼吸の機能と副作用

まず、呼吸の機能を4つ覚えましょう。
①組織に送るための酸素を肺から取り入れる

②組織から受け取った二酸化炭素を肺で排泄する

③血液phの調節

④体温調節

生体は、血液ガス、血液PH調節、体温を感知して、呼吸数と深さを変化させているということです。

これらの調節がうまくいっているときは呼吸数が安定しており、うまくいっていない時は呼吸数が増減します。

ここで、生体は呼吸というひとつの動作を、複数の目的のために利用している事実に注目してみましょう。同時に複数の調節を行っているので、ある1つの異常を感知して呼吸数を調節すると、異常のない方にも影響を与える(異常を作ってしまう)ということです。

例えば、呼吸数を増やせばCO2が減るという目的を達成しますが、同時に体温を下げてしまいます。逆に体温を下げる目的で呼吸数を増やせば、CO2が減ってしまいます。
低酸素状態は呼吸数の増加を引き起こしますが、同時にCO2の過剰放出し、血液PHの上昇(アルカローシス)になります。逆にアルカローシスは呼吸数を減少させますが、換気量が低下しますのでCO2の蓄積と放熱の減少が同時に起こります。

実際にはその、副作用的に起こしてしまった異常は別の仕組みで速やかに解決されています。(代償機構)

ひとつの仕組みではなく、その代償的な仕組みを知ると、生体内で何が起きているのか知ることができるのです。

呼吸数に影響する要因

呼吸数に影響する要因は、
・換気量
・呼吸に関わる筋肉(吸息筋と呼息筋)
・気道抵抗
・肺と胸郭の膨らみやすさ(コンプライアンス)
・肺及び組織の血流量
・ヘモグロビンと酸素や二酸化炭素との結合しやすさ
などがあります。
それぞれを一応軽く説明すると、換気量が少なければ、ガス交換がうまくいきません。呼吸筋がうまく働かなければ胸郭をうまく拡張できません。気道抵抗が高いと空気の移動が大変になります。肺が硬くなって膨らみ難くなると、うまく換気できません。換気量はうまく働いていても、肺血流が足りないと血液ガス交換ができません。ヘモグロビンがうまく働かないか、量が少ない時は、ガス交換がうまくできません。

反射性調節機構にはどんなものがあるか

・肺伸展受容器→呼吸中枢→吸息性活動停止(ヘーリングブロイエル吸息抑制反射)
・CO2増加→呼吸刺激で肺の拡張速度の増加、吸息時間が短くなると、呼息時間も短くなるよう影響する。
・低酸素→呼息時間の短縮(速く吐こうととする)
・鼻粘膜への機械的刺激と低温刺激→くしゃみ反射と無呼吸反射を誘発
・上咽頭粘膜への機械的刺激→吸引反射、嘔吐反射、嚥下反射。嚥下反射は咽頭閉鎖と呼吸停止の反射を含む。
・上気道の陰圧刺激(上気道(鼻腔から喉頭までの間)に閉塞が起きた時)→気道の虚脱(代償的に上気道拡大筋の活動増加して、完全なる虚脱も防いでいる。)
・四肢の筋肉、関節からの固有受容器→運動時に呼吸数を上げる
・皮膚の痛覚→呼吸促進、同時に頻脈と血圧上昇
・腹部内臓痛→呼吸抑制、同時に徐脈と血圧低下
・動脈圧受容器→吸息、呼息ニューロンの抑制 (要調査)
・末梢の低O2→呼吸促進が起こると血圧上昇と頻脈
→呼吸促進が起こらないか、人工呼吸下では血圧低下と徐脈
・肺鬱血、肺塞栓①→肺伸展受容器が刺激される→吸息の抑制と呼息時間の延長
肺鬱血、肺塞栓②→肺侵害受容器も興奮→咳、無呼吸、気道収縮などが起こる
・無気肺→肺伸展受容器の閾値低下。無気肺領域の中枢側の気道が過伸展になるため
・アナフィラキシー→肺侵害受容器の過剰興奮により、気管支収縮
標準生理学P604-607

症状からみた原因と代償機構

さて、では呼吸が速い時、他の症状を合わせて観察して、どこに問題があるのか探してみましょう。

初めに書いたような呼吸の目的から考えると、呼吸が速い時は、O2不足、CO2過剰、高体温、低PHのどれかです。それ知るために、直接原因と代償機構による症状をチェックして振り分けていきます。

・高体温、皮温上昇→暑い(体温の産生が多い、放熱が少ない)
・努力性呼吸(吸う時にも吐く時にも力を入れている)→気道抵抗が高い、肺の膨らみが悪い
・心音の異常、頸静脈怒張→循環が悪い(心臓の拍出が悪い、肺の血流が悪い)
・心拍が強く速い、粘膜蒼白→血液ガスの運搬が悪い(貧血)
・下痢→代謝性アシドーシス(消化管からのhco3-喪失)

・浅速呼吸(極端に速い呼吸)→胸郭の運動障害や疼痛、または速い呼吸でも調節しきれない時(熱中症、co2の極度低下など)

・元気あり→運動による酸素消費

放熱目的で呼吸数を上げた場合、同一目的の他機構として末梢血管の拡張や皮温上昇、開口呼吸などが同時に見られます。

肺血流の低下が原因なら、それを補おうと心臓がたくさん働きます。

心臓がうまく動かないことが原因なら、呼吸数の増加が代償機構とも言えます。

アシドーシスで呼吸促進されているなら、代償機構としての呼吸数の増加です。その原因となる症状(下痢、ケトーシスなど)をみつけます。

このようにひとつの作用(今回は呼吸)の目的と副作用を理解し、代償機能を観察することで、原因を絞り込むことができます。

対処の方法

原因をきちんと推定することができれば、対処の仕方は自動的に分かってきます。

呼吸数が速く、呼吸を抑えたい時は、運動は呼吸数をあげる要因ですから、まず安静は必要です。なるべく暴れさせないようにします。原因がO2不足であれば安静にして消費を抑えます。呼吸運動や換気量の問題であれば、換気量を増やすため気管拡張、人工呼吸、酸素吸入、ということになります。放熱の異常であれば送風や水冷で放熱を助けてあげます。PHの異常であれば、点滴で補正します。

貧血、心疾患、肺水腫、肺炎など、さまざまな疾患で呼吸数の増加は起こりますが、そうした疾患が原因ならそれらの治療をします。

呼吸数が少なく、呼吸促進したい場合は、鼻粘膜、皮膚に対する刺激をします。

通常の状態ではO2不足の刺激は呼吸促進に働きますが、麻酔、意識不明など他の原因で呼吸停止してしまった場合は、反射そのものが働いていません。ですから人工呼吸を行い正常な呼吸リズムが出てくるまで強制的にガス交換を行います。

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