生体機能を調節するために、全身的に情報を伝達する方法が2種類あり、それが神経系と内分泌系です。
前記の体温調節の仕組みもたくさんの臓器が協調的に働いていますが、そういう協調のための連絡方法です。
生体はこれら2種類の伝達方法を駆使して、体を元気に保つために常時調節を行っているのです。
・神経系の働きとその経路
神経系はさまざまな情報を電気で伝達する電線のようなものです。この神経は全身に張り巡らされていて電気信号を伝えます(神経伝達)。
神経は感覚器で受けた情報を脳に伝え(感覚神経)、逆に脳からの指令を運動器に伝えます(運動神経)。これによって生体は、生体内外の状況を的確に把握することができ、体内の恒常性を維持したり適切な行動を起こしたりすることができます。
感覚器に受けたさまざまな刺激のうち、あるものは脳(中枢)に送られて感覚器に固有の感覚を生じますが、あるものは感覚として認識されずに運動神経に直結して特定の生体反応を起こします(反射経路)。
・感覚神経と運動神経
感覚神経が伝える情報は、さまざまな感覚器からの情報です。感覚器とその感覚には以下のようなものがあります。
①特殊感覚(嗅覚、視覚、聴覚、平衡感覚、味覚:脳神経が関与する感覚)
②体性感覚(触覚、圧覚、冷覚、温覚、痛覚、運動感覚、位置感覚)
③内臓感覚(内臓痛覚と臓器感覚)
標準生理学p199-200
運動神経が伝える情報は、脳の運動中枢各部からの指令です。その情報ひとつひとつは主に筋肉を収縮させることができるという単純なものですが、脳がいろいろな場所の筋肉を同時に制御できるよう統合的な指令を出すことで、結果的に生体は目的の動作を達成できるようになります。
・内分泌系の働き
一方内分泌系は、神経系のように個別に繋がる通路を使う伝達ではなく、仲介物質(ホルモン)を全身に浸透させることで、さまざまな臓器に情報を伝達します(内分泌伝達)。
情報を送る側が体液中に情報(ホルモン)を放出し、受け取る側は情報(ホルモン)濃度の変化を感知する、というような伝達方法です。
体内でホルモンが多くなったり少なくなったりすると、それぞれのホルモンに特有の生体反応が出ます。しかしホルモン自体は情報を伝える道具に過ぎず、生体反応はホルモンを受け取った臓器(標的細胞)が行っています。情報を受け取った臓器がその機能を発現することで、ホルモンの作用が現れます。
内分泌系は主として、体液の恒常性の調節(電解質、血糖値、浸透圧)、発育と成長の調節、性行動の調節、のために利用されています。
今回はここまでです。生体調節のために情報を伝達する仕組みが理解できたら、次は神経系の中の自律神経系について解説します。