山羊の症例Diary 症例6「顔面浮腫」(ふしゅ・むくみ)
朝、山羊小屋でごはんをあげている時、はなちゃんの顔がいつもと違うように感じました。
顔に触ってみると、顔が腫れてほっぺたがつかめる状態になっています。
そして、食いしんぼうのはなちゃんなのにごはんも食べません。
しかも足下には吐いたようなものが落ちていました。
はなちゃんが吐くのはよくあることなのでしょうか?
ヤギやウシなどの反芻動物は、人間のように吐いたりしない
実は山羊さんや牛さんなどの反芻動物はわたしたち人間や犬や猫ののようには吐きません。
それは、消化のしくみが大きく違うからです。
ごはんとして食べた草は口でもぐもぐ噛んだ後、胃に送られて、再び口の中に戻してもぐもぐ噛みなおすというのを繰り返して消化していきます。
わたしたち人の感覚でいうと吐いたのを飲み込む!!を繰り返しているような状態です。
そう考えると気持ち悪いですが・・・。
まれに口の中の痛みや胃に寄生虫が寄生したときまた胃腸炎の後に未消化のものを口から吐き戻して外に出すことがあります。
反芻動物が「外に吐く」という症状は、ほとんどの場合「飲み込めない」という意味。原因の一位は、食道梗塞(院長追記)
※院長追記〈〈〈〈
アン先生の言うように、反芻動物は基本的に吐いたり飲んだりしています。
犬やヒトなんかの単胃動物は、胃腸に不快感があると嘔吐しますが、反芻動物は日常的に吐いてるんです。
だから反芻動物が「外に吐く」という症状は、
ほとんどの場合「飲み込めない」という意味になります。
飲み込めない原因の一位は、食道梗塞です。
草の塊や、胡瓜、大根みたいのを丸呑みしてしまって詰まることを言います。
「よだれが出る」という症状もこれに似ています。
よだれも、常に分泌されています。
でもいつもは飲み込んでいるから、外には流れ出てこないんです。
よだれが外に流れ出てくる場合、
- 口の中に傷がありうまく舌が使えない。
- 痛くて口を動かしたくない。
- 舌に紐みたいのが絡まっている。
- 口の麻痺を起こす病気。
- 歯が痛い。
などが考えられます。
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ロープが絡まり、「顔面浮腫」(ふしゅ・むくみ)に
というわけで、はなちゃんの吐いたようなものを見たとき、お口の中に何か問題があるのかな?と頭に浮かびました。でもなぜ顔が腫れているのか?
そこではなちゃんをよく観察してみると・・・
なんとロープがからまって首が絞まっている状態になっていました。
どうして首がしまってはなちゃんの顔が腫れてしまったのでしょう?
首には、全身を流れて心臓に帰ってくる「頸静脈」というホースの太さくらいある大きな血管と、心臓から全身に血液を送る出す「頸動脈」という血管があります。
顔が腫れていたのは首にある大きな「頸静脈」という血管が圧迫されて顔に血管から漏れ出した水分がたまり、むくんでいたからでした。むくんでいる部分はロープで圧迫されているところから上の首のところから顔全体に及んでいました。
急いでロープを解いてあげると何事もなかったようにごはんを食べはじめました。
それでも顔のむくみはすぐには戻りませんでしたが、その日の夕方には回復しました。
ロープが山羊の首や体に巻き付いて起こる事故は多い。ロープ事故の予防策
はなちゃんはロープで直接首のところを縛っていたので、今回のようなことが起きてしまいました。実はロープが山羊さんの首や体に巻き付いて起こる事故も多いです。
事故を防ぐためにできることは、
①杭や首輪を結ぶところにはヨリ戻しのついたナス環を付ける
②ロープで直接首を縛らず犬の首輪をつけてあげる
などがあります。
さっそくはなちゃんも首輪とロープを取り替えました。
ひとつの症状にとらわれず、「全体をみること」「先入観をもたないこと」の大切さ
わたしは今回の症例で
「全体をみること」と「先入観をもたないこと」の大切さを学びました。
ひとつの症状にとらわれないで体全体、環境や群れの様子・・・など俯瞰すること。(広い視野で物事を見ること)
また、ひとつの症状や状態から先入観をもって決めつけないこと。
この二つを忘れてしまうと、意外と簡単なこと、でも重大なことを見逃してしまうことに気が付かせてくれた症例になりました。