Monthly Archives: February 2019

山羊の診療Diary 症例2「難産」(頭から出てきた場合)

*山羊の診療Diary症例2「難産」(頭から出てきた場合)

 

山羊のゆきちゃん(3歳の女の子)が出産しました。

 

わたしたち人間の赤ちゃんは頭から生まれてきます。

さてさて、山羊の赤ちゃんは頭から生まれてくるのかな?それともあしから生まれてくるのかな?

 

正解は 「前足から生まれる」です

 

山羊の正常な分娩でははじめに2本の前足が見えその間に鼻先が見えてきます。しかし、今回ゆきちゃんの赤ちゃんは頭から先に出てきてしまいました。頭から先に出てしまうとさあ大変。前足が引っかかり上手く生まれてくることができないのです。この場合、出産にお手伝いが必要になります。

 

出産シーンはこちら。

頭でふさがって前足を探せないときは、いったん手で頭を押し戻し前足2本を探り出す

今回、すぐに前足が見つかり引き出すことが出来ましたが、頭でふさがって前足を探せないときは、いったん手で頭を押し戻して前足2本を探り出しましょう。そして、頭が足の間に入るように位置を修正してから前足をつかんで、お母さん山羊の陣痛に合わせて引っ張ります。

そして、子山羊が生まれたらすぐに羊膜を破り、鼻や口のまわりを拭い呼吸を確認します。羊水を飲んでしまい呼吸が確認できない場合は体を逆さまにして軽く振り、鼻や口にたまっている羊水を吐きださせましょう。呼吸が確認できたら一安心。お母さんに赤ちゃんを渡すと体を舐めてお世話をはじめます。

この後ゆきちゃんは2頭の赤ちゃんを無事出産しました。

無事に出産した山羊

ゆきちゃんおつかれさまでした。

たどりつきたいところ

この島に来る前に、病を抱える大好きな恩師に会いに行った。

「あなたに次会える約束はできないの」と優しい声で言われたとき子供みたいに泣いてしまった。

先生の前では最後まで大人になれなかったわたし。

本当は誰とも明日の約束なんてできない。

どうぶつの命の誕生や死とともにある診療を通じていつも思うこと。

それでもなお

山羊小屋を出るとき、診療が終わったとき、最後に顔を見るときは

‘明日も元気に会えますように’

と瞬きとともに小さく祈る。

その日の夜に先生から送られた言葉。

「中略

新しい旅立ち 成功するようにお祈りしています。どこまでもご自分を信じて歩まれてください。きっと道は開かれます。そして、最後には、人のために少しだけ幸せを分けてあげてくださいな。心の母より!」

これが、最後にわたしのたどりつきたいところ。

まずは自分を信じてしっかり1人で立ちたいな。

やさしく、つよく。

山羊の診療Diary 症例1「子宮脱」

山羊の診療Diary 症例1「子宮脱」

今回のお話はオーナーさんからの電話
「出産後いつもと違う肉の塊みたいなのがぶら下がっている」
からはじまりました。

出産後、お母さんがお腹の中で栄養を赤ちゃんにあげるために必要だった胎盤(後産)が出てきますが、赤ちゃんが入っていた子宮がひっくり返って出てきてしまうことがあります。これを「子宮脱」といいます。

子宮脱は緊急を要するのですぐに獣医さんに連絡をしましょう。早ければ早いほど治る可能性が高くなります。

 

ヤギが出産後、子宮脱になったら。オーナーにお願いしたい緊急処置

獣医さんが来るまでにオーナーさんにお願いしたいことは

  1.  山羊を立たせておく
  2. きれいなぬるま湯で汚れを洗い流す
  3.  お砂糖をかけておく
  4. ビニールをかぶせる

です。

 

お砂糖をかけておくと出てきた子宮のむくみが軽減され、戻しやすくなります。

今回はオーナーさんからすぐに連絡があり、洗浄・お砂糖をかけておいてくれたので子宮を戻すことが可能な状態でした。

山羊の子宮脱

 

ヤギ子宮脱に対する獣医師の処置

ここからのわたしたち獣医師の処置は、

刺激の少ない消毒液で洗い、手でゆっくりとお腹の中に戻していきます。途中、痛みで力みますがゆっくりゆっくり戻します。全部の子宮が整復できた後は、再度出てきてしまわないように陰部を縫合します。最後に感染予防のために抗生物質を処方します。

この山羊さんは1週間後、無事抜糸を終え元気に赤ちゃんの子育てを頑張っていました。

 

子宮脱の原因と予防策

子宮脱の原因として太りすぎや運動不足、加齢による赤ちゃんの通り道付近の筋力の衰えなどがあり、これに難産などで強い力が加わることがあげられます。

 

妊娠中に太らせすぎないこと、適度な運動をさせてあげることが予防になります。また一度、子宮脱を起こすと次の出産時にも繰り返すことが多いので、子宮脱を起こしたことのある山羊の出産は特に気をつけてあげてくださいね。

余韻

今日も一日おつかれさまでした!

山羊小屋のおそうじも終わり。

みんな元気にごはんも食べてる。

最後にすることは…

空を見上げて深呼吸。

光の余韻が残る夜のはじまり。