Monthly Archives: October 2019

山羊の診療Diary 症例20 顔にできた膿瘍

*山羊の診療Diary  症例20 顔にできた膿瘍

今日の症例は・・・

夕方、ゆうきさんの山羊牧場にごはんをあげにいくと
けんとくんの頬が腫れているのに気がつきました。

頬が腫れているヤギ

診てみると直径2cm位の腫れがあり
真ん中に穴が開いていました。
全身状態は良く
食欲・元気もあり、熱はありませんでした。

膿が出てきた部分腫れている部分を押してみると膿が出てきたので、
まずは洗浄して、消毒をしました。
そして、抗生物質のお注射をして様子を見ることにしました。

この段階では、膿瘍の可能性が強く疑われました。
膿瘍であれば膿を排出して、消毒した後、数日の抗生物質のお注射で、改善が見られます。

また、膿瘍の原因がコリネバクテリウム属菌の場合、膿瘍から細菌が血流やリンパ系を介して
体内リンパ節や内部臓器に転移すると、乾酪性リンパ節炎を引き起こします。

この病気で亡くなることはまれですが、肺に膿瘍ができると呼吸困難に陥ったり、衰弱するなど
危険な場合があります。
命の危険がない場合でも、体重減少や肺炎、肝炎、繁殖の低下などの症状を呈することがあるので
注意が必要です。

他の山羊さんに感染する可能性もあることから、
治療時に切開して膿を排出するときには膿が飛び散らないようにします。
使った器具はきちんと洗浄をしましょう。
農場を消毒したい場合には石灰が有効です。

もし、状態が変わらない時は、腫瘍などの違う原因が考えられるので、
その場合はバイオプシー検査(細胞を採取して診断する方法)
をして原因を究明していきます。

このように、見た目だけでは皮膚の腫瘤は確定診断ができないので、
治療に対する反応の経過をみて、必要ならば次の検査に進んでいきます。

幸い、けんとくんの頬は膿の排出、消毒と3日間の抗生物質の治療で腫れが引き良くなってきました。
腫れが完全に収まるまで、引き続き経過を観察して行きたいと思います。

その後の経過・・・(2週間後)
だいぶきれいになってきました!!

腫瘍が治ってきたヤギ

山羊の人工授精チャレンジ MMNS第1クール②(発情同期化を使った人工授精プログラム)

山羊の人工授精チャレンジ MMNS第1クール ②

今日は山羊Aちゃんの人工授精後30日の妊娠鑑定のご報告と
山羊CちゃんのMMNSスタートのお話しです。

前回の記事: 山羊の人工授精チャレンジ MMNS第1クール(発情同期化を使った人工授精プログラム)

まず、山羊Aちゃんの30日の妊娠鑑定は・・・

残念・・・赤ちゃんを確認することができませんでした。
この後、人工授精後40日にもう一度確認して、妊娠していなかった場合には
もう一度発情同期化MMNSに入ります。

凍結精液での人工授精の受胎率は20~30%と低めです。
そのため、何度か諦めず繰り返し、チャレンジしていきたいと思います。

そして、山羊CちゃんがMMNS第1クールをスタートしました。

発情同期化MMNSの最終日のお注射と発情確認をしました。

雄山羊に近づけると、寄り添ってしっぽを振る発情行動が見られたので、
人工授精を行いました。(1回目)

また、次の日、山羊Cちゃんを観察してみると、
前日よりはっきりした発情が見られました。
柵越しに雄山羊から離れない様子が見られました。

発情行動を行うヤギ

再び人工授精を行いました。(2回目)

そして、再度夕方、人工授精を行いました。(3回目)

…..

ヤギの発情適期について。発情行動と人工授精のタイミング

ここで、山羊さんの発情適期について復習しましょう。

*雌の発情持続時間は
40時間

*排卵時期は発情末期
30~40時間ごろ

*卵子の受精能の保有時間
排卵後 8時間

*雌の生殖器内での精子の受精能保有時間
40~50時間

以上のことから、
発情適期は、発情開始20~40時間になります。

そして、ぴったり発情を合わせることは難しいので、
1発情中に10~12時間間隔で2回受精するほうが受胎の確立があがります。

発情行動と人工授精のタイミングをまとめると・・・

夕方に発情がみられた→次の日の朝、1回目の受精。夕方2回目。
朝から発情がみられた→その日の夕方に1回目の受精。次の日の朝に2回目。
昼から発情がみられた→その日の夜に1回目の受精。次の日の昼に2回目。

…..

しかし、実際の現場では、正確にいつから発情が始まったかみることは難しいと思います。
そのため、発情同期化と発情確認をうまく組み合わせて、データを集めながら、
定時人工授精ができないか研究していきたいと思っています。

今回の山羊Cちゃんの場合は、
1回目の人工授精は早かった可能性があります。
発情行動からいうと、2回目と3回目が適期であったかもしれません。

今は、まずは受胎させるのが一番なので
できることを一つずつ積み上げていこうと思います。

続き: 山羊の人工授精チャレンジ MMNS第1クール③(発情同期化を使った人工授精プログラム) ついに・・・・

山羊の診療 note8 山羊は水を飲みますか?

山羊の診療note8  山羊は水を飲みますか?

「山羊は水を飲みますか?」

「山羊は水をあげなくても大丈夫?」

飼い主さんからよく尋ねられる質問です。

答えは・・・

はい!!

山羊さんはお水のみます。

お水を飲む様子はこちら。(動画ファイルをダウンロード)

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ごくごくとかぺろぺろではなく
山羊さんはこんなふうにすーっと吸い込むように飲みます。

新鮮な生草を食べているときは草に水分が多く含まれているので、
量をたくさん飲まないこともあります。
しかし、画像のように乾草を食べていると、お水をたくさん飲みます。
どちらにしても、いつでも自由にきれいなお水が飲めるようにしてあげてくださいね。

なぜなら、
お水が飲めなくて、体に足りなくなると、食欲が落ちます。
そこから、体調を崩したり、成長を妨げる原因にもなるからです。

そして・・・
山羊さんはすごいんです。
品種や用途によって違いますが、
肉用の山羊さんは羊さんの半分の水で生きることができます。

最近の環境問題の中の一つ、中東など水不足が深刻な地域では、
家畜に使用できる水が限られてきており、
そのため、
山羊さんの水が少なくても生きられる環境適応性についての
研究が注目されているとのことです。

厳しい環境で生きられる山羊さんはこれからの畜産に重要な存在なのかもしれません。

山羊の人工授精チャレンジ MMNS第1クール(発情同期化を使った人工授精プログラム)

山羊の人工授精チャレンジ MMNS第1クール

しばらく時間が空いてしまった、山羊の人工授精チャレンジ。

あきらめていませんよー!!

(前回までのヤギ人工授精チャレンジ記事はこちらから。)
山羊の人工授精チャレンジ しろちゃん自然周期人工授精①

この間、前回の自然周期の人工授精がうまくいかなかった原因などを一つずつ
解決していました。

そして、あらたに
発情同期化を使った人工授精の研究をはじめました。

院長発案のこのプログラムは「MMNS」と名付けて、先月からスタートしています。

今回の研究に参加してくれる山羊さんは6頭です。

初日は妊娠鑑定をして妊娠していないかを確認しました。
6頭の山羊さんは雄山羊と一緒だった為、すでに妊娠している可能性があったからです。

妊娠鑑定の結果

3頭は妊娠鑑定(+)
1頭は確定できなかったので再鑑定
2頭は妊娠鑑定(-)

妊娠鑑定(-)だった2頭の山羊さん(山羊Aちゃん・山羊Bちゃん)はこの日から
MMNSプログラムの注射をスタートしました。

発情同期化を使った人工授精プログラムMMNSの注射

山羊Aちゃんは順調に第1クールで人工授精をしました。
山羊Bちゃんは再発情が見られたので、再度、MMNSの注射を行い人工授精をしました。

人工授精の際には、凍結精液の精子の状態を確認しました

顕微鏡で凍結精液の精子の状態を確認

人工授精の様子

ヤギに人工授精を行う

現在、山羊Aちゃんと山羊Bちゃんは妊娠鑑定待ちです。

再鑑定の山羊Cちゃんは妊娠(-)だったため、
これからMMNSの同期化の注射からはじめます。

次回、良い報告ができますように!!

続き: 山羊の人工授精チャレンジ MMNS第1クール②