山羊の診療Diary症例23 牛の残渣過給によるルーメンアシドーシス

*山羊の診療Diary症例23 牛の残渣過給によるルーメンアシドーシス

今回の症例は・・・

牛農家さんから
「朝に牛舎にいる山羊の権兵衛に牛の飼料をあげたらもっと欲しそうだったので
牛の残渣をどーんとあげたらお腹が張って苦しそうにしていた」
という相談を受けました。
応急処置で食用油を飲ませたら、お昼過ぎに見たら少し良くなったというお話でした。
しかし、心配なので診療してほしいとのことで権兵衛くんの診療に伺いました。

さっそく牛舎に伺って見ると、
山羊の権兵衛くんが元気なく、
うーっうーっとうめきながら座り込んでいました。
立たせてもらうと、オーナーさん曰く、
朝よりはお腹の膨らみは改善されているということでした。
そのまま、聴打診という方法でお腹の聴診をしました。
ガスが貯まっていると、金属をたたいたときの音「キーン、キーン」
という音が聞こえます。
権兵衛くんのお腹は、金属音はなかったものの、通常よりお腹が膨らみ張っている状態でした。

うんちは通常の便でしたが、
全身状態は脱水を引き起こしていました。

この時点で、
前回の症例22の山羊のゆかちゃんと同じように
牛の飼料がお腹の中で以上発酵を起こし、鼓脹症になっていることと、
ルーメンアシドーシスを併発していることが疑えました。

参考記事: 山羊の診療Diary症例22 パンの耳給餌による鼓腸症及びルーメンアシドーシス

 

牛の鼓脹症およびルーメンアシドーシス治療方法

①誇張症を改善する治療

オーナーさんが牛農家さんで、鼓脹症をご存じで食用油を朝に飲ませていてくれていたので、
改善傾向ではありましたがまだお腹のがみ張りがみられたので、
口からホースを入れて胃のガスを排出しました。
今回、とても強い腐敗臭のあるガスがホースから出てきました。

牛の口からホースを入れて胃のガスを排出

そして、胃腸のお薬をホースから投与しました。

胃腸のお薬をホースから牛に投与

*注意 : 気管に入っていないか必ず確認すること

口にホースを入れたときは必ず、気管に入っていないか確認することが必要です。
気管にはいったまま投薬をすると誤飲を引き起こし、誤嚥性肺炎から亡くなってしまうこともあります。

*誇張症の復習

山羊さんは4つの胃を持つ反芻動物です。
山羊さんは私たちが消化できない繊維からエネルギーを作り出せる体の仕組みを持っています。
どのように、繊維からエネルギーを作るかというと、
第1胃内には微生物がいて繊維を分解して、エネルギーを作り出しています。
このように、第1胃は微生物が繊維を分解する発酵タンクのようになっています。
誇張症とは第1胃に急に発酵しやすいごはんがはいるとガスが急激に産生され、
お腹がガスでぱんぱんに膨らむ病気です。

 

②ルーメンアシドーシスの治療

脱水補正のため静脈からの点滴と胃炎からの感染を防ぐために抗生物質の注射を行いました。
脱水を改善することがとても重要な治療法になります。

抗生物質の注射を受ける牛

脱水補正のため静脈からの点滴を受けるウシ

*ルーメンアシドーシス(第1胃過酸症)の復習

正常な第1胃(ルーメン)内は中性からやや酸性に保たれています。
今回のように、濃厚飼料をたくさん食べてしまった場合や粗飼料の不足、飼料の急変、
炭水化物をたくさん含む消化の良いもの
(身近なものだと・・・パン、大根、じゃがいも、りんご、ぶどう、とうもろこし)
を急に大量に食べると、第一胃内の発酵が急激に進みます。
すると、乳酸が多く作られたり、酸の吸収が追い付かなくなり、胃の中の酸性化が進みすぎてしまいます。
このように過度に第1胃内が酸性化され障害が出てきた状態をルーメンアシドーシスといいます。
ルーメンアシドーシスになると全身の水分が第1胃内に集まってしまい脱水症状となり生きていくことができなくなってしまします。
死因の多くは脱水によるものなので脱水の補正の治療はとても大切になります。

最後にオーナーさんに半日間の絶食・絶水をお願いしました。
次の日には権兵衛くんはだいぶ回復して、立っていると
オーナーさんから連絡があり一安心。

誇張症、ルーメンアシドーシスは命にかかわる病気で、
私の住む島では診療依頼が多いです。
すぐに気が付いて、治療をすれば助かる可能性が高いので、
疑いがあるときは獣医さんに相談してくださいね。

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