山羊の診療Diary症例34 熱中症&呼吸困難(鼻腔拡大手術)①

山羊の診療Diary症例34 熱中症&呼吸困難(鼻腔拡大手術)①

今回のお話は・・・

「雄ヤギが餌を食べなくて元気がないから診療してほしい」
という連絡を飼い主さんからいただきました。

早速、伺ってみると、大きな雄ヤギのたつくんがヤギ舎の中に雌ヤギさんと一緒に居ました。

飼い主さんにお話を伺うと、
たつくんはここ最近、以前より食欲がなく、特にここ数日餌をたくさん残すようになった。
一緒にいる雌ヤギさんに餌をほとんど食べられてしまっている。」
というお話でした。

たつくんの様子を見ると、ヤギ舎の中で普通に歩いてはいますが、
時折、鼻からいびきのような音を鳴らしていて、少し呼吸が苦しそうに見えました。
そのことを飼い主さんに尋ねると、
「このこは小さいときから、鼻をこんな風に鳴らしていて、他の場所にいる兄弟もこんな感じだよ。ボアの系統が入っていて顔の形が違うからかな?」と教えてくれました。
確かに、ザーネン種より鼻のところがいわゆる鷲鼻(鼻筋が途中から隆起し、鼻筋が湾曲した鼻の形)のようになっています。
また、この日は数日間、夏の暑さが続いていました。
ヤギ舎の中も蒸し暑い状態でしたが、一緒にいる雌やぎさんや、隣のお部屋のヤギさんたち3頭は呼吸は荒くなく元気にごはんを食べていました。

まずはロープで縛って診療をはじめました。
この時、たつくんは大きな体で捕まえられるのは嫌だーとヤギ舎の中を
ぐるぐる逃げ回っていました。
100kgくらいある雄山羊さんをいつもより元気がないからといっても捕まえるのに一苦労。
ようやく縛って、診察をはじめると、呼吸が先ほどよりもだいぶ苦しそうになっていました。
熱を測ると41.0度まで上がっており、ひとまず熱中症の可能性があったので、
飼い主さんに濡れたタオルとお水、扇風機を用意してもらいました。
はじめに首周りを濡れたタオルで冷やしながら、静脈輸液のための留置をとろうとすると、
さらに暴れてしまい、呼吸の状態が悪化しそうなので、皮下補液に切り替え、
安全に保定をしながら診療を続けるのが困難と判断して、院長にも助けを求めました。

皮下補液をしながら、飼い主さんには扇風機を設置してもらい、
その間に、便の異常はないこと、おしっこは出ていること、
聴診で心音・肺音の確認、聴打診で腹部に異常がないことなどを確認しました。

冷やしすぎないように体温を測りながら、皮下補液を続けていました。
体は少しづつ冷えてきましたが、相変わらず呼吸の苦しさは改善されませんでした。

そこに、院長が到着して、たつくんの顔をみるなり
「鼻の穴がふさがっているよ」と。

よくよく正面からたつくんの顔を見ると、
息を鼻から吸うごとに、鼻の穴の上の皮膚がふたのように鼻をふさいでいる状態になっていました。

たつくんの顔は、鷲鼻の鼻の形でさらに最後の鼻の上の皮膚が垂れ下がっていて
普通にしてても、鼻の穴が線の細さで、他のヤギさんたちの様に鼻の穴が開いていませんでした。
逃げ回ってさらに苦しくなったことで、
吸うたびに鼻がピタッと穴をふたのように閉じるのが顕著になっていたのでした。

ここまでの症状やたつくんの診療で考えられることは、
もともと鼻腔が狭かったところに、暑さが重なり、呼吸で熱を下げることがほかのヤギさんより難しく、熱中症や食欲不振などの症状で元気がなかったことが考えられました。
その他の原因があるとしても、まずは呼吸の状態を改善することが必要でした。

横から押さえながら、診療するのに精いっぱいで
すぐに気が付かなくてごめんねとたつくんと思いながら、
急いでたつくんの鼻の上を上向きに豚さんのように押し上げました。

そのまましばらくすると呼吸がどんどん改善されていきました。
鼻の穴さえ開いてさえすれば、熱中症もおそらく食欲不振なども改善されそうでした。
しかし、私がずっと鼻を押しているわけにもいかないので、鼻の穴を拡張する手術が必要です。

しかし、今のたつくんは熱中症を併発しており、数日間の食欲不振もあり、
長い時間鎮静をかけるのは危険な状態と判断し、
短い時間の鎮静で応急処置で糸で鼻を持ち上げることになりました。

処置の様子はこちらです。

処置が終わり、鎮静が覚めたころには、体温も安全なところまで下がり、呼吸も楽になっていました。
良かったーとほっと一安心。

そして、むくっと立ち上がったたつくんは・・・

ごはんを食べに行くのかと思いきや
雌ヤギさんのおしりのにおいをかいで
フレーメン!!
それから草を食べ始めたのでした・・・。

えー。まずはそこなの!?たつくん・・・。
本能だからしょうがないのかもしれませんが、
助かったと思ったらまず女の子・・・

緊急事態で緊張した現場でしたが、
たつくんの行動に思わずみんなで笑ってしましました。

そして、
飼い主さんには、たつくんのヤギ舎を涼しい環境に整えていただくことと
呼吸の状態の観察をお願いしました。
食欲が改善されたら、鼻の整形手術をすることになりました。

数日後、飼い主さんから、
すっかり元気を取り戻し、鼻の音も消えて、
ごはんをもりもりたべて、雌ヤギさんをを追いかけまわしている・・・
というご連絡をいただきました。
たつくん良かったね。今までいろいろ苦しかったのかもしれません。
根本的な改善を目指して次に鼻腔拡大の手術に踏み切ることになりました。
たつくん、あともう1歩、一緒にがんばろう。

手術の様子は次回へつづきますー。

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