牛を飼うために必要なことは、動物の世話だけではなく、粗飼料を作らなければなりません。粗飼料は購入することもできますが、自給することで安定した飼育ができます。コストを抑えて安定した品質のものを得られるからです。
粗飼料(牧草)にはさまざまな種類があり、地域に適した品種と栽培方法があります。
実際の粗飼料生産作業では、農地の耕作、施肥、種蒔き、刈り取り、反転、集草、梱包、運搬などの作業があります。
適宜、追肥と追加播種をしたり雑草の駆除をしたりします。数年に一度は農地の更新といって再度土から作り直します。作業にはトラクターやロールベーラーが必要になります。
採草地の管理と同様に、放牧を行う場合も、放牧地の牧草がどのように伸びているか、どれだけ減っているか、常時観察しながら効率的に牧草を育てるよう配慮しなければなりません。
これらの粗飼料生産にかかるコストと時間は、地域によりどこまで外注できるかが異なります。
自分の地域に粗飼料生産を請け負ってくれる業者がいるか調べてみてください。
一方、濃厚飼料については日本国内の耕地面積と輸入価格の関係で自給することは少なく、大抵は輸入飼料を購入することになります。飼料会社各社から配合飼料が市販されており、農協等を通じて購入できます。
配合されたものではなくとうもろこしや大豆などの単味飼料を混ぜて給与する場合や、混合飼料(TMR)を用いる場合は、飼料の混合作業が必要になります。
“飼料自給力・自給率の向上に向けた取組
(濃厚飼料の大部分は海外に依存)
家畜の飼料は、粗飼料と濃厚飼料に分けられる。粗飼料には、乾草やサイレージ(飼料作物を乳酸発酵させ、保存性・し好性を高めた飼料)、稲わら等があり、牛をはじめとする草食家畜に給与される。粗飼料の自給率は78%(2007年度)となっている。
一方、濃厚飼料には、とうもろこしを中心とする穀類、糠類(ぬか)、粕類(かす)等があり、豚や鶏のほか、肉用牛の肥育に多く使われている(図1-29)。国土条件の制約等から飼料向けの穀類は国内で生産が困難なため、濃厚飼料の自給率は10%(2007年度)にとどまっている。国内の耕地面積は462万8千ha(2008年)であるのに対し、飼料用穀物等の輸入量を生産するための面積は429万ha(2007年)と試算されている(農林水産省試算)。”
参考までに、畜種によって粗飼料と濃厚飼料の給与比が違います。粗飼料の自給が経営に与える影響が最も大きいのは、繁殖和牛経営だという事がわかります。