便性状の変化する要因

黒色は上部消化管(胃、十二指腸)からの出血です。赤血球が胃酸により消化された結果です。タール便と表現されることがあります。

赤色や暗赤色は下部消化管(小腸、結腸、直腸)からの出血です。色は出血の部位と量に応じて変化します。量が少なく持続的である場合や腸内滞留時間が長い場合は消化液の影響を受け暗色が強くなります。逆に量が多い場合や結腸以下の出血で排泄までの時間が短い場合は鮮血色に近くなります。

褐色は通常時に見られます。通常時は腸内細菌によって胆汁に含まれるビリルビンが分解されステルコビリンが生成されるため便は褐色になります。

緑色は、胆汁中のビリルビンが分解されず消化管内に残った時に見られます。ビリルビンが腸内細菌の不活化により分解できないか、ビリルビンが増加して分解しきれないと便中に残存することになり、腸内の酸化ビリルビンにより便は緑色になります。

白色は、胆汁の量が少ない時に見られます。胆管閉塞の時は便中に胆汁が排泄されなくなるため、便は白色になります。下痢により水分が増えて薄まることで淡褐色〜乳白色になりますが、程度によっては白に近くなります。さらに水分が増えると透明に近くなります。米とぎ汁と表現されることがあります。
粘液の分泌が多いと便性状が不均一になり、卵スープ状と表現されることがあります。

このように便性状や色は、出血の部位や量、消化管内の分泌と再吸収のバランス、腸運動の変化による食渣の腸内滞留時間、消化管内の細菌叢の活性、生体内のビリルビン濃度の要因が複合的に作用した結果変化するのです。加えて食物自体の色も影響します。

ですからさまざまな疾患に特徴的な便性状というのは確かに存在しますが、必ずしも同じような便が出るわけではありません。病因は同じでも、その障害を受けている部位、範囲、程度と生体の反応の程度により便は変化するからです。

便性状だけでは病因の確定まではできませんが、障害されている部位と程度を推測して診断と治療に役立てることができます。それぞれの病因によって障害されやすい部位が異なるためです。

便性状を見る時は、これら複合的な仕組みが働いた結果であることを理解した上で評価し、診断に利用してください。

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