第21回日本山羊研究会で発表しました!

2020年3月25日(水)に開催されました第21回日本山羊研究会で発表をしました。

本来は京都大学での開催でしたが、コロナウィルスの影響で「ZOOM」というシステムを使用したWEBでの開催となりました。

私たちの病院からは2題発表しました。

・小動物病院と一緒にできる山羊の診療
~日本における山羊の診療体制の確立をめざして~

山羊がいつでもどこでも安心して診療が受けられるようになるには、大動物病院だけでなく小動物病医院での受け入れが必要ではないかと考えています。そのために、診療手技やお薬、薬の薬用量、症例などを発表して山羊の診療体制の確立の一助になればという想いから発表しました。

・山羊のルーメンアシドーシスの事例報告
~沖縄県宮古島において1年間に診療した山羊の病気~

山羊のルーメンアシドーシスを3例の症例発表です。原因として飼い主さんの飼養管理の失宜により容易に発生する病気です。早期発見と牛の治療を準用した治療で回復したので治療法をご紹介しました。

山羊の研究者のみなさんや獣医さん、社会学の研究者の方のお話など「山羊」をキーワードに
様々な分野のお話が聞けて、とても楽しく勉強させていただきました。また、私たちの発表にも、いろいろなご意見やご質問をいただきありがとうございました。
今後の診療に役立てていきたいと思っています。
発表に関することでご質問がございましたら、ブログのコメント欄からお気軽にご連絡ください。

山羊の診療Diary症例26 乳頭損傷

山羊の診療Diary症例26 乳頭損傷

今回の症例は・・・

飼い主さんから「前回の出産の時、ひどい乳房炎になった山羊が朝からおっぱいを蹴って
痛そうにしている」という連絡がありました。

早速、診療に伺うと4月はじめに出産予定のボーボちゃんが、おっぱいを蹴り蹴りしながら山羊舎の中でたたずんでいました。

飼い主さんにお話を伺うと、前回の出産の時に乳房炎になったのでまだ産前だが心配になって連絡をいただいたとのことでした。
食欲と元気は変わらないとのことです。
ボーボちゃんを外に出していただき繋いで診療をはじめました。

お熱を測ると39.8℃で微熱がありました。全身状態は良く、健診での心音・肺音は異常ありませんでした。腹部触診と聴打診でも問題はありませんでした。そして、乳房の状態を診てみました。

はじめに乳房炎に感染していないか確認するために乳房の状態を確認しました。
出産後のおっぱいをあげていない時期でも、乳房炎にかかることはあります。
ボーボちゃんの場合もまだ出産前ですが、乳房炎に以前感染したことがあることから、
乳房炎の細菌がおっぱいの中に残っていた場合、産前やストレスがかかったときに乳房炎が再発する可能性がありました。また、まだ一度も赤ちゃんを産んでいない場合でも乳頭から細菌感染が起これば、乳房炎を発症する場合があります。
ボーボちゃんのおっぱいは、左右の乳房ともに熱感や硬結などの乳房炎の症状はありませんでした。次に乳頭を診てみました。

右側の乳頭は異常がありませんでしたが、左側の乳頭に傷があり、硬くなっていました。
触るととても痛がっていました。ボーボちゃんのおっぱいは大きく下に垂れている形のため、おそらく自分で乳頭を踏んでしまった可能性が考えられました。
以上のことから、乳頭損傷と診断して治療をはじめました。

はじめに傷口をヨード剤で消毒した後に抗生剤と炎症を抑えるお薬の注射をしました。
また、飼い主さんに様子を見ていただいて、乳頭が体のどこかにこすれている場合は、
乳房をおおって傷が保護できるようなブラジャーをつけてもらうように飼い主さんにお願いしました。

飼い主さん次の日ご連絡があり、だいぶ痛みが治まっているということでした。
抗生物質のお薬を処方して経過観察となりました。

*乳頭損傷について
乳頭損傷は乳牛で良く起こる病気です。しかし、山羊さんでも今回のように乳頭を自分で踏んでしまって起こることがありますし、乳用山羊さんではさらに起こりやすい可能性があるので乳牛の乳頭損傷を参考にして、山羊さん用にまとめておきます。

<乳頭損傷とは>
物理的、あるいは科学的な原因により起こる乳頭の障害をいいます。

<原因>
①物理的な損傷
・放牧地の有棘鉄線やワイヤーフェンスで傷つけてしまう
・密飼いや飼育する部屋が狭くて、自分でまたは他の山羊の乳頭を踏んでしまう
・寒冷感作により乳頭の先が傷ついてしまう
・搾乳機でおっぱいを絞りすぎてしまう
②化学的な損傷
・搾乳時の乳頭の消毒の時に消毒剤で皮膚が荒れてしまう

<症状>
皮膚が荒れているだけでも痛みがあります。痛みがあると気になり自分で蹴ってしまいさらに悪化することがあります。

また、傷の深さや場所によってはおっぱいを出すことに障害がでます。たとえば、乳頭の先端の傷では炎症から組織が厚くなり管が狭くなることで、おっぱいが出にくくなったり、乳頭管より上で乳頭が切断された場合はおっぱいが漏れてしまいます。こうした場合、搾乳や哺乳することが難しくなってしまいます。

<飼い主さんにできること>
・山羊舎にゆとりを持たせて自分で踏まないようにする
・1つのお部屋で適切な数の山羊を飼育する(他の山羊の乳頭を踏まない)
・削蹄をして蹄で傷つけないようにする
・乳頭の消毒剤は適切な濃度で使用する
・搾乳機のメンテナンスを行い、整備不良での絞り過ぎを防ぐ
・おっぱいが大きくて擦れてしまう場合は、ブラジャーを作って着せてあげる。
牛さんには牛用ブラジャーというのがあります。
私も山羊用を作ってみたいです!

<獣医さんの治療>
・傷の洗浄・消毒
・軟膏の塗布
(乳頭を保護するため、ただし殺菌作用のあるものでないと感染を広げる場合があるので注意)
・抗生剤の投与
・外科処置(乳頭管拡張、切開、縫合など)

島の「ほうき」と山羊のらぶちゃん

今日は私の住む島の「ほうき」をご紹介します。

私は、この島に来る前に雑誌の雑貨特集でこのほうきをみて一目惚れ。
まるいフォルムがかわいい。
島に住んだら是非使ってみたいと思っていたのでした。

しかし、実際町中で使っている人は見当たらず。
販売しているお店も、少し装飾のあるほうきがお土産屋さんにあるのをみかけただけでした。

いったいどこにあるのかなぁと頭の片隅にいつもありました。

牛の診療にまわりはじめると、牛舎にかかっているのを発見。

このほうきは「すすき」でできていることがわかり、昔はどのお家でも自分で作って使ってたと
お話を伺うことができました。

そしてなんと身近に作れる人がいました。

ゆうきさんもゆうきさんのお父さんも作れるとのこと。

ススキを集めてきてお願いして作っていただきました。

お散歩帰りの山羊のらぶちゃんも興味津々。


作り終わるまで、ときにお口でぱくぱくすすきを引っ張って、おじゃま虫をしながら
じーっと見学していました。

完成したのはこちら。

やっぱり、とってもかわいい。そして細かいゴミも掃くことができて実用的です。

そして、らぶちゃんをほうきで撫でてみるとなんだか喜んでいる?!
新しい使い方「山羊なでほうき」はどうでしょう。

今では、ほうき事態があまり使われなくなったり、ホームセンターに行けば安い値段で購入することができますが、
地域の知恵と伝統がつまったこのようなほうきはこれからも活躍してほしいなと思いました。
私もがんばって作れるようになろう!!

山羊の診療Diary症例25 産後の膀胱炎

山羊の診療Diary症例25 産後の膀胱炎

今回の症例は・・・

飼い主さんより「お母さん山羊が元気がなく寝てばかりいておしっこが赤い。おしっこが出にくく、苦しんでいるので診てほしい。」
という連絡がありました。
早速、伺ってみると、木の下に座り込んでいるお母さん山羊とその周りを元気いっぱいに走り回っている子山羊さんが2頭いました。

そして、少し遠くに強そうなお父さん山羊もつながれていて、こちらをじっと見ていました。体調不良のお母さん山羊がなんとか立ち上がると、子山羊さんたちが飛んできて、おっぱいを頭でぐいぐい押して飲んでいる状態でした。

まずは飼い主さんにお話を伺いました。
お母さん山羊の名前はキキちゃん。2歳。

今回2回目の出産とのことです。

1か月前に双子を出産して、ここ2~3日で元気がなくなってきたとのことです。食欲はあるが、赤いおしっこをしているようだとの事でした。

キキちゃんを診察してみると・・・
全身状態はかなり痩せていました。
眼や口の中の粘膜を見ると真っ白で貧血が疑われました。聴診で頻脈をおこしているのがわかりました。
お熱は39.1℃で平熱でした。
食欲はあるということでしたが、お腹の触診によりお腹いっぱいには食べられていないことがわかりました。

この時点ではおしっこを確認できなかったので血尿なのか、もしくは子宮に感染が起き子宮からのおりものなのかわかりません。また、尿閉といっておしっこが出ないのか、それとも頻尿で残尿感がある状態なのかわかりません。

そこで、直腸からのエコー検査を行いました。すると、膀胱は通常〜やや小さく、星空様のエコーフリー像が確認できました。つまり尿閉ではなく頻尿であり、膀胱内に浮遊物を伴う液体がある事がわかりました。

その直後、
真っ赤なおしっこが出てきました。


ここで一つ注意点があります。
赤い尿がすべて血尿とは限らず、例えばある種の中毒の時などは「血色素尿」という赤いおしっこが出るときがあります。そういった類症鑑別をするため追加で尿検査や血液検査など行う場合もあります。

今回は膀胱炎と仮診断し診断的治療を始めることにしました。

飼い主さんのお話、山羊さんの状態、検査などから総合的に診断しての治療になりますので「赤い尿=膀胱炎」ではないので獣医さんにご相談くださいね。

治療と経過
1日目
・抗生物質の投与、止血剤の投与、輸液
・子山羊さんのほ乳をストップ
(おっぱいは血液から作られるので、血尿が出て貧血状態にあるキキちゃんの状態での哺乳は身体に負担になります。
そこでキキちゃんが元気になるまでは人工哺乳をお願いしました。)
・栄養状態の改善のためにキキちゃんに配合飼料をあげてもらう。

2日目
・抗生物質の投与、止血剤の投与、輸液
・輸血
(おしっこへの出血、貧血の状態に変化なく、活力も改善されなかったので輸血をおこないました。同居の雄山羊さんから採血をして、
事前に輸血適合試験”クロスマッチテスト”を行い、問題がなかったので輸血ができました)

3日目
・抗生剤の投与、止血剤の投与、輸液
昨日まではメリーちゃんの状態がかなり悪く、最悪の事態も考えての治療だったのでお電話で元気が出てきたと飼い主さんからお話が聞けて少しほっとしました。 実際診療に伺いキキちゃんに会うと、 顔色も全身状態も昨日より明らかに良さそうで私たちもうれしく思いました。

4日目
抗生剤の飲み薬を処方
おしっこの色も改善し食欲元気も出てきたとのことで内服薬を処方し経過観察となりました。

勝脱炎の原因は確定することはできませんが、今回は、産後すぐから徐々に症状が出ていたので、出産後の陰部から排出される悪露が感染源になった可能性が高いです。

悪露は母山羊さんの勝眺炎や子宮炎などの感染の元になるだけでなく、子山羊さんの下痢の原因にもなりますので、 産後2週間を過ぎても悪露の排泄が止まらない場合は受診してください。

また、陰部から垂れ下がって落ちない胎盤は、 無理矢理引っ張らないでビニールなどで保護しながら母山羊さんの状態を経過観察します。 (症例24  胎盤停滞を参考にしてください)

産後は体力を消耗しているのでいろいろな病気にかかりやすい状態になっています。

ミルクを出すのにかなりのエネルギーが必要なので、この時期は配合飼料などを上手に使って、母山羊さんの栄養状態や体力が落ちないようにしてあげてくださいね。
牛では、出産後すぐにお味噌汁を飲ませるのも効果的なようです。ヤギにも応用可能かもしれませんね。

診療後記・・・
キキちゃんのふたごの仲良し子山羊さん。 キキちゃんの治療中、お母さんと離ればなれになると、1頭はとっても甘えん坊の子山羊さんで、
キキちゃんを呼んでずっーと、 めーめーめーめ一泣いていました。
もう 1頭の子は草をもぐもぐ食べてみたり、繋がれているロープで遊んでみたり。
子山羊さんも性格はそれぞれですね。
小さな子どもの頃、 みなさんはどちらのタイプでしたか??
ちなみにわたしは めーめータイプでした・・・強くなったのかな。
何はともあれ、キキちゃんが元気になってまたみんなでくっついて暮らせますように。

山羊サミット報告会と勉強会

地域の山羊流通生産組合さんより山羊の勉強会の講師依頼がありました。
去年の8月の勉強会に引き続き第2回目の勉強会です。
また、勉強会と合わせて、山梨の山羊サミット参加の報告会も
合わせて行いました。
ゆうきさん先生と私の3人で講師を務めさせていただきました。

勉強会の内容は以下の通りです。

①第21回 全国山羊サミット参加報告
「みなさん、山羊サミットをご存じですか?
年に1度、全国の山羊の研究者や飼い主さんなど山羊に携わる人たちが集まる会議があります。
今年度、ポスター発表という形で宮古島の山羊の診療や削蹄について発表をしましたので、報告します。」

*山羊サミットで得た全国の山羊の情報や課題をもとに今後私たちの住む地域の
山羊の生産がどのように発展できるかの提案を行いました。

②山羊の繁殖  2年3産を目指すには ~山羊の発情コントロールと妊娠鑑定~

「うちの山羊さん妊娠してると思ったら太ってるだけだった・・・
そんなことがないように山羊の繁殖について一緒に勉強しましょう!」

*山羊の繁殖の基本とさらにその先、2年3産を目指すために必要な発情コントロールのお話をさせていただきました。

③山羊の病気  山羊の胃腸の病気
「あれ?さっきまで山羊のごはんを美味しそうにいっぱい食べてたのに、
お腹がふくらんでぐったりしてる・・・大丈夫?!
さて、この山羊さんのお腹の中はどんなことになっているのでしょう?
山羊の消化と胃腸の病気についてお話しします。」

*山羊の胃と消化の仕組みの基本から、よく見られる胃腸の病気についてお話させていただきました。

たくさんの地域の山羊生産者さんたちとお会いできるので、山羊さんたちが健康に暮らす為に、このような機会に診療で得た知見を飼い主のみなさまに還元していきます。
勉強会では「わかりやすい」と「すぐ実践できる」を一番にお話させていただいています。講師の依頼はご相談ください。

山羊の獣医師個別研修の受け入れを行いました

先日、山羊の獣医師個別研修の受け入れを行いました!

今回研修に参加されたのは、
関東で小動物病院を経営されている獣医師ご夫妻です。
山羊さんをご自分で飼育されているということで、
今後地域の山羊さんの診療を受け入れたいというお話でした。

 

今回のヤギ獣医師研修の内容

今回の獣医師研修の内容はこちらです。

1.山羊の飼育で獣医師が知っておく届け出など
2.山羊の保定法・ロープワークの実習
3.山羊の診療
・山羊の往診時の初診症例へのアプローチ法
・身体検査・体温測定
・心臓・肺の聴診
・腹部の触診・聴打診法
4.注射法・採血法・留置針の挿入法の実習
5.経口カテーテル・経鼻カテーテルの挿入方法について実習
6.妊娠鑑定
7.質疑・応答

 

実際の実習風景を写真で

実際の実習風景はこちらです。

山羊の診療や法律についての座学風景
はじめに座学で山羊の診療の基本や法律のお話をしました

 

山羊を追い込む練習山羊を追い込んで捕まえる実習風景

山羊を追い込んで捕まえる実習です

 

ヤギ診療のための保定法・ロープワークの実習風景
ヤギ診療のための保定法・ロープワークの実習

 

点滴の為の静脈留置の実習風景静脈留置の実習を受ける受講者

点滴の為の静脈留置の実習

 

経口カテーテル挿入の実習風景
経口カテーテル挿入の実習

 

妊娠鑑定の実習風景
妊娠鑑定の実習

 

削蹄の実習風景

削蹄の実習

 

山羊のかかりつけ獣医師が増えるには、小動物病院での受け入れが不可欠。より良い診療体制のために

山羊の獣医師の個別実習の受け入れを決めたのは、
山羊のかかりつけ獣医師が増えるには、小動物病院での受け入れが不可欠だと考えたからです。
また、山羊を診療する獣医さんが増えれば、
私たちも、小動物の先生や他分野の獣医さんから学ばせていただくくことができ
診療体制がより良いものになっていくのではと思いました。
山羊の診療に関わる獣医さんの仲間が増える様に今後も個別研修の受け入れをおこなっていきます。

山羊や牛の獣医師研修は・・・
宮古獣医科医院で受け付けています。
(本記事のコメントもしくは研修の案内ページからご連絡ください)

 

日本では山羊の診療や薬用量の専門の本が少ない。山羊の診療を始める人が学びやすいように

山羊科で診療をはじめる体制を作るまで、私ははじめ試行錯誤しました。
日本では山羊の診療や薬用量の専門の本が少ないのです。
ゆうきさんの牧場で山羊の飼養管理から学びはじめ、
家畜改良センターの長野支場の個別研修を経て、現在山羊科のある宮古獣医科医院で院長の指導の下、
現在ひとつずつ症例を積み重ねて今があります。

まだまだ自分自身、勉強の途中ですがですが、次に山羊の診療を始める人が同じ苦労をしないように自分が得てきたものは、
研修やこのブログを通して発信していきたいと思っています。

今回の実習の後、助けていただいてるみなさん、応援して支えてくれているみなさんに
これから少しずつお返ししていきたいと改めて思いました。
たくさんの恵みを私たちに与えてくれる山羊さんたちが元気に暮らせるように
みんなで力をあわせていきましょう。

子ヤギの写真

山羊の診療note9 山羊の血液型

山羊の診療note9 山羊の血液型

先日、山羊さんの治療で輸血を行いました。

輸血を受ける山羊

今日はその輸血のお話の前に山羊の血液型のお話をしたいと思います。

人間の血液型の分類方法

まず、私たち人間の血液型のお話を少ししましょう。

人間の血液型で一番有名なのは、ABO式ですね。
これは血球の表面にある血液型抗原と呼ばれる物質で血液を分けたものになります。

ABO式血液型

赤血球にA抗原を持っている→A型
赤血球にB抗原を持っている→B型
赤血球にA抗原もB抗原もない→O型
赤血球にA抗原もB抗原もある→AB型

Rh式血液型

そして、もう一つ有名なのがRh式です。
Rh式血液型には血液型抗原の数が50種類もありますが、
その中のRhD抗原が輸血で重要な血液型抗原でRhDがあるかないかでRh型の分類をしています。
RhD血液型抗原がある→Rhプラス
RhD血液型抗原がない→Rhマイナス
ちなみに、日本人は99.5%の人がRhプラスとのことです。

 

山羊の血液型の分類方法

そして、肝心の山羊さんですが・・・
山羊さんにはA・B・C・M・R-O・V-Wの6種類の血液型システムがあります。
さらにB血液型システムの中には数十種類の血液型抗原(型)があり、
品種によって血液型の割合が違い、ザーネン種はB15型が多く、アルパイン種はB17型が多いそうです。
次回は輸血のお話をしたいと思います。

今回、参考にさせていただいた本はこちらです!!
「人とどうぶつの血液型」編著 近江俊徳 博士 (医学)緑書房

「人とどうぶつの血液型」編著 近江俊徳 博士 (医学)緑書房

山羊の診療Diary症例24 胎盤停滞

山羊の診療Diary症例24 胎盤停滞

今回の症例は・・・

出産後の母山羊さんが元気がなく、
陰部から胎盤が垂れ下がったままになっているという連絡が来ました。

産後に「陰部から何か出ている」という飼い主さんのお話があったとき、
出産後排出されるはずの胎盤が出ない「胎盤停滞」という病気や、子宮が出てしまう「子宮脱」という主に2つの病気が考えられます。
(子宮脱については、山羊の症例Diary症例1 「子宮脱」参照)

子宮脱の時には、診療に向かうまでの間に飼い主さんにお願いしたいことがあり、
それがその後の治療にとても大切なことになってきます。
そのため、電話でていねいに飼い主さんのお話を聞き取ります。

 

子宮脱を発見したときに、獣医さんが来る前に飼い主さんができること

子宮脱を発見したときに、
獣医さんが来る前に飼い主さんができること(復習)

・山羊を立たせる
・子宮の汚れをお水でそっと流す
・砂糖を振りかけておく
・ビニールでおおう

今回は、電話で確認すると子宮ではなく胎盤の可能性高かったので、
そのまま診療に向かいました。

早速、診療をはじめると・・・

胎盤停滞の症状がある山羊

この母山羊さんは昨日の夜に3つ子の赤ちゃんを出産していました。
残念ながら1頭は亡くなっていました。

熱を測ると38.7℃で平熱でした。
陰部からは排出されきれなかった胎盤がぶら下がっていました。
全身状態は脱水があり、栄養状態はやせていました。

胎盤停滞と診断し、治療を行いました。

 

胎盤停滞とは・・・

胎盤(たいばん)とは、母牛のお腹の中で、赤ちゃん山羊さんとつながって栄養を与えているものです。
胎盤は通常、分娩後1~6時間で排出されます。
これが12時間以上残ってしまうものを胎盤停滞といいます。
胎盤停滞を起こすと子宮に炎症を起こし、食欲不振や発熱することがあります。
また、垂れ下がっている胎盤は細菌感染のもとになるので、お母さん山羊の乳房炎や子山羊の下痢の原因にもなります。

 

胎盤停滞の治療

①垂れ下がっている胎盤は、基本的に自然に排出されるのを待ちます。

乳房を汚して子ヤギの細菌感染の元になるので出ている部分にカバーをつけました。

山羊の胎盤にカバーをかける

この状態で山羊さんの全身状態、検温をしながら数日経過を見ます。
経過を見る際、食欲がなくなったり、熱がある場合は早めに獣医さんに相談してください。

注意 胎盤停滞の時にやってはいけないこと!!

強く引っ張って無理矢理出すことです。
引っ張って胎盤が千切れ、子宮内に残ると子宮の回復が遅れたり、産褥熱や子宮炎の元になることがあります。

②脱水の補正

脱水状態だったので静脈から点滴をしました。

③ブドウ糖・ビタミン剤・カルシウム剤の注射

元気・食欲がなく、栄養状態も良くなくやせていたのでブドウ糖と産後の低CA血症の可能性も考えてカルシウム剤を点滴剤と一緒に投与しました。

④抗生物質の投与

発熱はこの時点でなかったものの、元気がなく全身状態も良くなかったため、子宮炎や乳熱の可能性も考え抗生物質の注射を行いました。

⑤子山羊さん達に初乳の投与

このお母さん山羊さんはおっぱいがかなり下の方に垂れ下がっており、子山羊さん達が上手に飲めない状況でした。おっぱいをしぼってみると乳は良く出る状態でした。
はじめにお母さん山羊さんに台に乗ってもらって、おっぱいの位置を高くしました。

次に子山羊さん達を口を乳頭に近づけて、おっぱいの場所を教えてあげるとなんとか2頭とも吸うことができました。
しかし、口をつけたもののすぐに座り込んでしまう状態だったので、乳をしぼって初乳の人工ほ乳を行うことにしました。

元気のない白い子山羊さんは経鼻カテーテルで飲ませました。
初乳を飲まないと、子山羊さんは病原体から身を守ることができません。生存する可能性が極端に低くなってしまう為、どうしても飲ませる必要があります。

経鼻カテーテルで初乳を飲む子ヤギ茶色の子山羊

茶色の子山羊さんは自分で吸う力があったので、ほ乳瓶で飲ませました。

飼い主さんには、母山羊さんの胎盤と全身状態の観察、子山羊さんがおっぱいを飲めているかの確認、もし飲めなければ人工ほ乳をしてもらうようにお願いしました。

次の日、飼い主さんから胎盤が落ちて、お母さん山羊さんも子山羊さんたちも食欲・元気があるとご連絡いただきました。
ほっと一安心。子山羊さんたちがこのまま元気に大きくなりますように!!

 

胎盤停滞発生の仕組みはまだ未解明。分娩前の栄養管理をしっかりしてあげることが大切

胎盤停滞は、牛では、難産、早産、双子、分娩前の栄養不良等の時に発生が多いといわれていますが、具体的な発生の仕組みはまだ解明していません。
そのため、飼い主さんができる予防策はありませんが、少なくとも山羊でも要因の一つと考えられている分娩前の栄養管理をしっかりしてあげることが大切だと思います。

「山羊の友」第41号に寄稿、掲載されました

全国山羊ネットワークで年2回発行されている会報「山羊の友」の第41号に寄稿し掲載されました。

ヤギの友

内容は山羊サミットでの発表をまとめた「山羊の病気と削蹄」です。

全国山羊ネットワークとは・・・・(ホームページより)

「全国山羊ネットワークは、山羊やその生産物に興味のある方々の集まりです。
山羊を飼っている・いないに関わらず個々の山羊に関する情報を交換し合い、我が国における山羊の振興を図ることを目的としています。」

ホームページはこちらです↓

全国山羊ネットワーク | プロフィール

会報の「山羊の友」は山羊ネットワークの会員になるとこちらでバックナンバーが注文ができます。山羊の飼い主さん、研究者のみなさん、チーズやミルクの生産者さん、そして私たちのような獣医さんの投稿もあり山羊についてたくさんの情報が載っていますよ!!

お散歩山羊

先月から、ゆうきさんの牧場に仲間入りしたラブちゃん。

生まれたお家で中学生の女の子に大切に育てられ、
人にとても慣れています。

牧場に遊びに来てくれたお友達と一緒に
お散歩をしてみたら・・・

散歩をする山羊

あら、あら、お散歩大好き。

お友達とラブちゃんとのんびりした時間を過ごしました。

ラブちゃん、これからも一緒にお散歩に行こうね!

ヤギ正面