⭐️なぜ獣医の仕事が「つらい」「苦しい」となってしまうのか?
獣医になりたての頃は、自分が如何に獣医としてすごいかどうかが気になってしまう。
「すごい獣医」になるのは確かに難しいかもしれない。
だから、私なんて。。。と自信を失ってしまうのかな。
ある意味難しそうな仕事だからだろうか。
そのままでちょっとすごい仕事なイメージがあるからだろうか。
逆に、「命の責任を自分が負う」みたいに考えて、怯えてしまうのかもしれない。
助けられない自分なんてダメなんだ。と。
自分にできるのか?と言うところで、自信を失ってしまうのかもしれない。
でも、それは誰の役にも立たない独り言だと思う。
「すごい自分」という幻想を壊したくない、自意識過剰なだけ。また、期待されてる事を過大に考えすぎて、怯えてしまっているだけ。
ついつい、誰も気にしてない自分だけの悩みばかりに気を取られてしまう。
ある程度経験を積んでくると今度は、
そこそこ出来てる自分に甘えて、獣医というだけですごいと、傲慢になる。こんなにすごい事してるんだから、ある程度のわがままは当然だと思ってくる。
そこで、自分はこんなにすごくてエライのに、こんなに大変で、なんで文句言われなきゃいけないんだ!言う通りにしないんだ!と苦しくなってしまう。
これも仕事の成果とは無関係の独りよがりで、自分の理想とのギャップが悩みを作ってしまっているだけじゃないかなと思う。
ただ普通に仕事したら、たくさんの人が喜んで、自分も充実していくはずなのに、どうしても苦しくなってしまう。
⭐️獣医に求められているものは何か?
そういう理由で、仕事が怖かったり、苦しくなったりしてませんか?
獣医の仕事はそんなに特別な事ではありません。
獣医も神様じゃなく人なんですから、できることには限りがあります。
生き物は生まれて、何かあればすぐ死んでいくんです。全て助けられるわけじゃないんです。
難病を如何に治すか。どれほど高度な研究をするか。誰より頭がいいかとか。目標のひとつに持っててもいいとは思うけど、獣医に求められていることは、そんなことじゃないんです。
患者さん、農家さんは、真面目に勉強してきた獣医さんに、自分の困った事を真摯に受け止めてほしいんです。できない事をやってほしいんです。それでもし可能なら、解決して欲しいんです。
獣医に求められているものは、ただそれだけなんです。
獣医じゃない人は注射を打つのも怖いんですよ。薬の名前を覚えたり、薬用量を計算したりするのが嫌なんですよ。それができないんじゃなく、できたとしても、決めるのが怖いんですよ。私たち獣医と同じように。
そういう人たちの代わりに、獣医として普通にできることをやったら、ちゃんと喜ばれます。感謝されます。
もし治らなくても、その姿勢に相応の気持ちを返してくれます。そういうものです。
そうしていくつもの事例に対処していくうちに、自然と力がついて、自然と尊敬されていくんだと思います。
⭐️
仕事って、シンプルで自分を輝かせる事ができるものだと思います。
産業動物臨床の仕事だったら、
今、困っている人を助ける。
頑張って金を稼いで、大切な人を助ける。
このひとつひとつの仕事が、薬物の乱用を防いでいる。
この1頭を治す事で、食料資源が増えて社会が豊かになる。
という理由で、ただ、やればいいんです。
だから、僕は今日も仕事します。
もし、僕たちの仕事を見てみたい方や、一緒にやってくれる方がいたら、いつでも連絡くださいね。
特別な才能とか要らないんです。
普通に獣医として試験に受かり、毎日治療してたら、動物の身体に対する理解や知識はついてきます。
要るのは、前の記事: 仕事に向き合う姿勢。獣医師以外の方から学ぶこと のように、仕事にまっすぐな姿勢だけです。
一緒に頑張りましょう。
いつもこのブログに勉強をさせて頂いており、有難うございます。
例えば何となく元気がないヤギに、血液生化学検査をすることがあるのですが、
項目によっては、手元のテキストの正常域があきらかに変なものがあり悩みます。
生化学検査は富士フィルムVETシステムズに依頼しています。
正常域はClinical biochemistry of domestic animalsのものを使っています。
(https://www.merckvetmanual.com/special-subjects/reference-guides/serum-biochemical-reference-ranges) 長野支場で頂いた「山羊の飼養管理マニュアル」にもこれが載っていました。
この正常域だとGOT、クレアチニン、コレステロールが高すぎ、他の項目も信じられなくなってしまいます。
先生はヤギの血液生化学検査の正常域について、どこのものを使っておられますか?
よろしければどうか教えて下さい、お願い致します・・・。
三谷先生
コメントありがとうございます。
正直血液検査の数が少なくあまり深く考えていなかったので、少し調べてみました。
書籍GOAT MEDICINE Mary C. Smith, David M. Sherman
には、
AST
167.0-513.0(general)※Clinical biochemistry of domestic animalsと同じ
23.8-63.4(Ridoux et al 1981)
が併記されておりました。
crea、cholについては概ね近い値でした。
ASTについては論文によるばらつきが大きいようで、他の論文では成ヤギでは20-50程度、4か月の子ヤギでは60-80程度なので、三谷先生がご指摘の通りかもしれません。注意が必要ですね。
この書籍に載っているのはシンプルにまとまった一覧表ではなく、論文ごとの値を併記して公平性に努めているようでした。
他の酵素についてすべてを比較してはいませんが、一般的な値はClinical biochemistry of domestic animalsのものなのかもしれませんね。
おかげさまでいろいろ勉強になりました。ありがとうございます。
内田先生
ご多忙の中、ご回答を誠にありがとうございました。
GOAT MEDICINE を持っていないので、グーグルブックスでチラ見しました。
(自分のタネ本はSHEEP AND GOAT MEDICINE です)
どんなヤギのグループを測った値かも表記されていて、親切な本ですね。
自分は何となく、ASTの正常域は80前後ではないかと思っておりましたが
併記されている値が23.8 – 63.4 と、思っていたより低いので
今後血液検査の結果を判断する時は注意しようと思いました。
お調べ頂きまして、重ねて有難うございました。
今後ともどうぞ宜しくお願い申し上げます。