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山羊の診療Diary 症例8「子山羊の下痢とアレルギー・中毒症状」

山羊の診療Diary 症例8「子山羊の下痢とアレルギー・中毒症状」

生後34日齢の雌の子山羊のひまわりちゃんが朝から元気と食欲がありません。
そしてお顔を見るとなんだか眼の周りが腫れています。ヤギの目の腫れヤギの下痢気味の便
体温を測ってみると40.1℃。うんちもいつもよりゆるく下痢気味の状態でした。
聴診や体の触診ではほかに異常が見つかりませんでした。

今回の主な症状は2つあります。下痢と眼の周りの腫れです。

前回の症例(山羊の診療Diary 症例7「出産後20日の下痢」)と同様、今回は症状は2つですが原因がはっきりとわからないので
いろいろな可能性を考えてひとつずつ対策を取り体の回復のお手伝いをしていきます。

 

ヤギの下痢の原因をおさらい。色々な可能性を考え、ひとつずつ対策をとる

下痢の原因は前回の症例7でお話ししましたが・・・
もう一度おさらいしましょう!

食餌性 中毒や過食、変質飼料など
感染性 ウィルス・細菌・寄生虫など
環境性 寒さやストレス(神経性)など

はじめに感染性の下痢に対処するために抗生物質とコクシジウムの駆除を行いました。コクシジウムの症状は、感染直後でなくしばらく経ってから現れます。
コクシジウムが感染してから便の中にでてくるまでの期間をプリパテントピリオドといいます。

コクシジウムは、種類によって異なりますが一般に牛では2週齢以上の子牛で下痢を引き起こす病気です。
山羊も同様に考えるとひまわりちゃんは生後34日なのでコクシジウムの感染による下痢の可能性があります。

今回、検便では寄生虫は検出されませんでした。
しかし寄生虫に感染していても検出されないときもあるので、山羊さんの状態や月齢、感染の可能性を考えて必要と判断した場合は治療を行います。

次に食餌性の原因(アレルギーと中毒の可能性)を考えました。

今回、目の周りの腫れという症状が出ています。これはアレルギーや中毒を起こした時の代表的な症状の一つです。ステロイド剤・抗ヒスタミン剤の注射を行いました。

また、子山羊さんが長期間食べないと低血糖や低体温になる可能性がありますので、ブドウ糖添加の点滴を行いました。
これは、さらなる病気の悪化を防ぐ事と共に、自分の力で治っていくことのお手伝いの意味があります。

治療経過は・・・

注射をしてから1時間後、目の上の腫れが徐々に引いてきました。

ヤギの目の腫れが治ってきた

夕方の時点で血糖値を測定したところ少し低めだったのでブドウ糖を腹腔内に投与しました。

しばらくすると食欲が戻ってきて少しずつ乾草を食べはじめミルクも夜には飲むようになりました。次の日の朝にはいつも通りの元気なひまわりちゃんに戻りました。

 

アレルギーや中毒の可能性も。おうちでできる応急処置(獣医に連絡を)

今回はっきりした原因はわかりませんでしたが、
ステロイド剤、抗ヒスタミン剤の投与で改善が見られたことから、何かに対するアレルギーや中毒の可能性が示唆されました。

子山羊さんたちは生後10~15日齢くらいになるとお母さん山羊さんのまねをして葉っぱを舐めたりくわえたりしはじめます。

ひまわりちゃんも最近はミルクだけでなく草を食べはじめていました。
ひまわりちゃんのおうちのごはんは野草を中心としているのでもしかすると体に合わないものが入っていたのかもしれません。

山羊さんたちにとって毒になる草を食べると草によって症状は異なりますが、主な中毒症状として
貧血、便秘、下痢、神経症状や出血(血便、血尿)などが見られます。

おうちでできる応急処置として

  • ミルクをあげてみる(消化管の表面に粘膜面をつくり毒物の吸収を妨げたり、酸やアルカリを中和する。)
  • お湯やスポーツ飲料を飲ませる(消化器の洗浄効果)
  • 木炭末などの吸着剤を与える。
    などがありますが、症状に気がついた時点で食欲や元気もない場合も多いです。

お薬を自分で投与するのが困難であったり、症状が急に悪化する可能性もあるので、中毒の症状が見られたときは獣医さんに連絡することをお勧めします。

山羊の診療Diary 症例7「出産後20日の下痢」

*山羊の診療Diary 症例7 「出産後20日の下痢」

お母さん山羊のあめちゃんが朝、下痢をしているのに気がつきました。

ヤギの固まった下痢
山羊さんの便はコロコロ丸いのが健康なので、このように粒がなくなり固まっているのは
下痢をしていることになります。

さっそく、あめちゃんの診察スタート。
はじめに、ごはんをあげて様子を見てみました。草を口にはするものの食欲は前日より落ちていて、元気もいつもよりありません。
次に聴診をしてお熱を測ってみました。聴診で心臓や肺の音には問題はなく、熱は40.5℃と高めでした。腹部の触診と聴診ではガスがたまっている様子も見られません。おしっこは確認できました。

 

ヤギが下痢を起こす主な原因

ではいったいあめちゃんの下痢の原因はなんでしょうか?
通常、下痢を起こす原因として以下の原因が考えられます。

食餌性 中毒や過食、変質飼料など
感染性 ウィルス・細菌・寄生虫など
環境性 寒さやストレス(神経性)など

今回、問診から食餌性の下痢の可能性は低いと思われました。

次に感染性の下痢について考えてみます。
ウイルスや細菌感染は子山羊さんも大人の山羊さんも可能性があります。一方、コクシジウムなどの寄生虫は通常大人の山羊さんでは寄生していても問題にならないことがほとんどです。しかし免疫が低下したような時は注意が必要です。あめちゃんは産後でいつもより体に負担がかかり免疫力が落ちている状態です。そのため、寄生虫の下痢も可能性も考えられました。

最後の環境性ですが、何日か雨が降り続いている毎日だったのであめちゃんにとってストレスがかかっていたことも考えられました。

 

産後間もない時期は、免疫力が落ち感染しやすい状態。産後特有の病気も

そして今回の症例では「産後間もない」ということは非常に大切なキーワードになります。
先ほどもお話ししましたが、免疫力が下がっている状態なので感染がいつもより簡単に起こる状態です。また、産後特有の病気がいくつかあります。代表的なものに以下の病気があります。

①産褥熱
分娩時に産道の傷から細菌感染が起こりお熱が出ます。出産後、1~7日の間に起こることが多く、
発熱すると食欲がなくなったりおっぱいの出る量が減ります。免疫が下がるのでいろいろな病気にかかりやすい状態になります。

②ケトーシス
いろいろな原因がありますが(妊娠末期に栄養が追い付かない・ホルモンの失調・肝臓の機能の低下など)からだの中にケトン体というものがたまってしまう一種の中毒でです。ケトーシスになると食欲を落としてしまいますので様々な病気を誘引することになります。

③栄養不足
おっぱいを出すためにいつもより栄養が必要ですが、栄養が足りない場合も免疫を落として感染に弱い状態になります。

 

症状はひとつでも、原因は様々で動物の状態もさまざま。(院長追記)

※院長追記〈〈〈〈
今回の症状は「下痢」です。
上記のように、症状はひとつでも、原因は様々で動物の状態も様々なんです。ですから、

①あらゆる原因の中から可能性の高いものを推定し、それらに対する対策を取ります。あくまで推定なので、いろいろな可能性をカバーできるように考えます。どうしても原因を区別しないといけない場合は検査をします。

②動物の状態を観察して、体を元気にする対策を取ります。大雑把に言うと体の弱り具合をみるんです。緊急性が高いほど、この治療が大切になってきます。
〉〉〉〉

 

今回の山羊の下痢ケースでの治療内容

以上のことをふまえて・・・あめちゃんの治療を行いました。

・ごはんの改善(あめちゃんが好きなもの・食べられるものを探して食欲を増進させる・栄養不足を解消する)
※体を元気にする治療、ケトーシスの予防

・整腸剤をごはんと一緒にあげる。
※食餌性下痢の治療

・抗生物質・駆虫剤の投与
※細菌性と寄生虫性下痢の治療、産褥熱の治療

・脱水、食欲のないときは輸液を検討
※体を元気にする治療

・床の掃除
※環境性下痢の治療

幸いなことにあめちゃんは2日後には熱も下がり、食欲、元気もいつも通りになりました。
便も形になってきたので経過を見ることになりました。

このように大人の山羊さんの下痢でも、産後はいつもと体の状態が違うので、考えられる病気が増えてきます。

ただの下痢と思わずに出産後の経過も考慮して見てあげることが大切だと感じました。

山羊の症例Diary 症例6「顔面浮腫」(ふしゅ・むくみ)

山羊の症例Diary 症例6「顔面浮腫」(ふしゅ・むくみ)

朝、山羊小屋でごはんをあげている時、はなちゃんの顔がいつもと違うように感じました。
顔に触ってみると、顔が腫れてほっぺたがつかめる状態になっています。

ヤギの顔面浮腫、むくみ

 

そして、食いしんぼうのはなちゃんなのにごはんも食べません。
しかも足下には吐いたようなものが落ちていました。

ヤギが吐いたもの

はなちゃんが吐くのはよくあることなのでしょうか?

 

ヤギやウシなどの反芻動物は、人間のように吐いたりしない

実は山羊さんや牛さんなどの反芻動物はわたしたち人間や犬や猫ののようには吐きません。
それは、消化のしくみが大きく違うからです。
ごはんとして食べた草は口でもぐもぐ噛んだ後、胃に送られて、再び口の中に戻してもぐもぐ噛みなおすというのを繰り返して消化していきます。
わたしたち人の感覚でいうと吐いたのを飲み込む!!を繰り返しているような状態です。
そう考えると気持ち悪いですが・・・。

まれに口の中の痛みや胃に寄生虫が寄生したときまた胃腸炎の後に未消化のものを口から吐き戻して外に出すことがあります。

 

反芻動物が「外に吐く」という症状は、ほとんどの場合「飲み込めない」という意味。原因の一位は、食道梗塞(院長追記)

※院長追記〈〈〈〈
アン先生の言うように、反芻動物は基本的に吐いたり飲んだりしています。
犬やヒトなんかの単胃動物は、胃腸に不快感があると嘔吐しますが、反芻動物は日常的に吐いてるんです。

だから反芻動物が「外に吐く」という症状は、
ほとんどの場合「飲み込めない」という意味になります。
飲み込めない原因の一位は、食道梗塞です。
草の塊や、胡瓜、大根みたいのを丸呑みしてしまって詰まることを言います。

「よだれが出る」という症状もこれに似ています。
よだれも、常に分泌されています。
でもいつもは飲み込んでいるから、外には流れ出てこないんです。
よだれが外に流れ出てくる場合、

  • 口の中に傷がありうまく舌が使えない。
  • 痛くて口を動かしたくない。
  • 舌に紐みたいのが絡まっている。
  • 口の麻痺を起こす病気。
  • 歯が痛い。
    などが考えられます。
    〉〉〉〉

 

ロープが絡まり、「顔面浮腫」(ふしゅ・むくみ)に

というわけで、はなちゃんの吐いたようなものを見たとき、お口の中に何か問題があるのかな?と頭に浮かびました。でもなぜ顔が腫れているのか?

そこではなちゃんをよく観察してみると・・・

なんとロープがからまって首が絞まっている状態になっていました。

ヤギのロープ事故

どうして首がしまってはなちゃんの顔が腫れてしまったのでしょう?

首には、全身を流れて心臓に帰ってくる「頸静脈」というホースの太さくらいある大きな血管と、心臓から全身に血液を送る出す「頸動脈」という血管があります。
顔が腫れていたのは首にある大きな「頸静脈」という血管が圧迫されて顔に血管から漏れ出した水分がたまり、むくんでいたからでした。むくんでいる部分はロープで圧迫されているところから上の首のところから顔全体に及んでいました。

急いでロープを解いてあげると何事もなかったようにごはんを食べはじめました。
それでも顔のむくみはすぐには戻りませんでしたが、その日の夕方には回復しました。

 

ロープが山羊の首や体に巻き付いて起こる事故は多い。ロープ事故の予防策

はなちゃんはロープで直接首のところを縛っていたので、今回のようなことが起きてしまいました。実はロープが山羊さんの首や体に巻き付いて起こる事故も多いです。

事故を防ぐためにできることは、
①杭や首輪を結ぶところにはヨリ戻しのついたナス環を付ける
②ロープで直接首を縛らず犬の首輪をつけてあげる
などがあります。
さっそくはなちゃんも首輪とロープを取り替えました。

ひとつの症状にとらわれず、「全体をみること」「先入観をもたないこと」の大切さ

わたしは今回の症例で
「全体をみること」と「先入観をもたないこと」の大切さを学びました。
ひとつの症状にとらわれないで体全体、環境や群れの様子・・・など俯瞰すること。(広い視野で物事を見ること)
また、ひとつの症状や状態から先入観をもって決めつけないこと。
この二つを忘れてしまうと、意外と簡単なこと、でも重大なことを見逃してしまうことに気が付かせてくれた症例になりました。

ここちよさ

回復中の子山羊さんの様子も見たいし、
仕事もしたくて、作ってもらった牛舎の中の私のデスク

風通しの良い牛舎はとても快適
ここの牛さんたちが元気なのがよくわかる

ひともどうぶつも心地よい環境は
とても大切
心地よさを無視したらきっと健やかに生きられない

わたしも
子山羊さんに
干し草のふかふかベットを作ってあげた
ここでゆっくり休んでね

それなのに
めーめー足下に来て大きな声で鳴いている

あれ?
もしかして、
くっつきたいの?
あなたがきたいのなら
おひざにどうぞ

ふかふかのベットより
あなたにとったら
ここがここちよいのかな

そのひとの
そのこの
それぞれの心地よさ

わたしも少しひとやすみ

目の前に
風に揺られるサトウキビ
雲が流れる青い空
やわらかい萌黄色の草原
そして
すやすや眠るあなたのあたたかさ

一人でも二人、二人でも一人で・・・

「一人でも二人、二人でも一人で生きるつもり」

河合隼雄さんの「こころの処方箋」の中の言葉。

「一人でも二人」
一人で生きていくためには、心の中にパートナーをもって
生きていくということ。一人でも一人じゃない。

「二人でも一人で」
誰かと二人で生きているときこそ、
一人でも生きていける強さをを前提としてふたりで生きること。
一人でも生きていける人が二人で生きたとき、喜びや楽しみが
生まれる。

ずっと心の中にしまっておいたこの言葉。
仕事の合間に思い出す。
人間関係についてだけでなく仕事においても大切なのかな。

一人で症例を目の前にして心乱れそうになっても、
落ち着いて、心の中で話をしよう。
今までの知識や経験、先生の言葉が声となって私を助けてくれるだろう。

もし、誰かと一緒に仕事をするときは、
まだ自分の力が未熟で及ばなくても
頼りきりでなく、一人で立つ気持ちは持っていたい。

そして…

私の人生でほんとうにこの言葉を心に持てたなら
胸にあるさみしさは淡い雪のように溶けていくのだろうか

誰かと一緒に抱え込みでない自由の中で、喜びを分かち合えるのだろうか

山羊の人工授精チャレンジ しろちゃん自然周期人工授精①

山羊の人工授精チャレンジ しろちゃん自然周期人工授精①

しろちゃんのオーナーさんから人工授精の依頼がありました。

人工授精予定のヤギ
しろちゃんは発情行動が分かりやすいため、自然周期での人工授精からはじめてみることになりました。

前回の発情時、人工授精を一度試みました。
この時、外子宮口が人工授精時にゆるんでいるのが確認できました。
今回、もし発情がこなければ妊娠の可能性が高くなります。
(ノンリターン法による妊娠鑑定)
また、発情が来た場合は残念ながら妊娠はしていませんが、
発情行動と外子宮口の様子を経過を追って人工授精を実施してみることにしました。

妊娠鑑定の方法詳細についてはこちらの記事をご覧ください。
山羊の人工授精チャレンジ 妊娠鑑定方法

 

発情行動と外子宮口の様子を経過を追って人工授精を実施

day20(前回発情から20日目)
18:00
発情行動 なし
外子宮口 開いていない
粘液 透明の粘液があるが膣鏡を入れるときのジェルなのか判別できず

外子宮口

day21
18:00
発情行動 オーナーさんから朝からよく鳴いているというお話あり。
人が近づくとしっぽを振って寄ってくる。
(前日までは見られなかった)
外子宮口 開いていない
粘液   確認できず

外子宮口

day22
7:00
発情行動 人が近づくとしっぽを振って寄ってくる
外子宮口 開いていない
粘液   確認できず

外子宮口

19:00
発情行動 朝より弱くなっている
(寄ってこない、しっぽを振らない)
外子宮口 色が赤みがなくなってきた

人工授精を1回実施

人工授精を実施

わたしはday22の朝、判断迷ってしまいました。
発情行動はしっかりでているものの、前回の発情のように外子宮口が開いていない。
発情行動を信じてすぐに人工授精するべき?それとも外子宮口の方を信じる?

ここで院長先生からのアドバイス

生体内で何がおこると発情兆候が出るのか?
→エストロゲンが増加する。
ということは卵胞が育っているということがわかる。
発情行動があるけど充血がないということは、
普通自律神経その他の反応が総合的に起こるけど、
各器官で反応性に差異が出る場合があるということ。
発情兆候はエストロゲンの量に依存する場合と、
受容体の量や反応性に依存する場合がある。

以上のことと人工授精の適期を考えると(これについてはまたあらためて)
発情行動をみて時期を決めて良かったことがわかりました。
今回の場合、day21の夕方とday22の朝に人工授精を行うのが適期だったと思われます。

 

*まとめと反省*

・発情行動及び発情周期の情報により前回の人工授精では妊娠はしていないと思われる。
・しろちゃんは発情行動が明確でわかりやすい。しかし、外子宮口の開き方と発情行動は
からだとホルモンのバランスにより連動するときとしないときがある。
・発情行動が出ているときは卵胞が育っているので迷わず人工授精を実施する。

 

*今後の予定*

・超音波での妊娠鑑定をday40で行い、ノンリターン法での妊娠鑑定を確定する。
・妊娠していない場合、次回の人工授精にて、再度、自然周期での人工授精を今度は
2回実施して挑戦してみる。

続き: 山羊の人工授精チャレンジ しろちゃん自然周期人工授精②

山羊の人工授精チャレンジ「保定台を作ろう!」

山羊の人工授精をはじめる前に必要なもの「保定台」

山羊の人工授精をはじめる前に必要なものがありました。
それは人工授精をするときの保定台です。
家畜改良センター茨城牧場長野支場に実習に行った際にはこのような三角の保定台を使用して人工授精を行っていました。

(家畜改良センター茨城牧場長野支場にて撮影)

山羊保定台セッティング山羊人工授精のために抑える

とても使いやすかったのですが、この保定台は山羊をおさえておく人が3人必要でした。
実際、現場で使うとき、山羊のオーナーさんとわたしまたは授精師さんしかいない場合を想定すると保定台の改良が必要だと思いました。

 

手作りで改良!スタンチョン付きの山羊授乳ストール&人工授精保定台

そこで、DIYが得意なゆうきさんに相談して保定台を作ることになりました。
せっかくなので育児放棄気味の山羊のお母さんの哺乳ストールとしても使えるようゆうきさんが考案してくれました。廃材を使って見事スタンチョン付きのヤギ授乳ストール&人工授精保定台完成!!

スタンチョン付きの山羊授乳ストール&人工授精保定台
山羊人工授精の保定台とし使用時

ヤギ人工授精のため保定台使用時

山羊哺乳ストールとして使用時

ヤギ哺乳ストール使用時

これで準備万端!

山羊の保定台については、こちらの研修レポートにも書いています。

研修レポート6「手作り山羊の保定台対決」

ぜひ読んでみてくださいね。

 

次回は人工授精にいよいよチャレンジです。

山羊の診療Diary 症例5 乳房炎疑い

「一週間前に出産した山羊のサミちゃんのおっぱいが腫れて痛そうにしている」
という連絡をオーナーさんから受け診察に行きました。

サミちゃんは1週間前に子山羊を1頭出産しました。
オーナーさんにお話を伺うと食欲と元気は変わらずあるとのこと。
生まれた子山羊さんはお母さんの右側のおっぱいしか飲まず左側が腫れているようです。

写真はこちら

お熱を計ると40.1℃で平熱より少し高めでした。
さみちゃんの乳房を触ってみると、左側が浮腫といわれるおっぱいがたまりむくんでいる状態になっていました。

まだ乳房炎といわれる状態になってはいないもののこのままでは進行していく可能性があったので、
炎症を抑えるお薬と抗生物質のお注射、左側の乳房の内に抗生物質を注入しました。
そして、大切なことがもう一つ。オーナーさんに1日1回以上、おっぱいをしぼってもらうことをお願いしました。
乳房炎は乳房のなかに病原菌が入りそこで増える病気です。乳房の中は体温で温かく、そこにあるミルクは栄養がたっぷりなので
菌が増え、炎症が起きます。おっぱいをしぼることで、菌が乳房の中にずっとある状態、増える状態を避けることが出来ます。

また乳房炎にかかっているミルクを飲むと小山羊さんが下痢をおこしたり、乳房炎のミルクは味が変わってしまいますので
小山羊さんが飲みたがらず栄養不足になることがあります。乳房炎になってしまったときや疑われるときは、
お母さん山羊だけでなく子山羊さんの様子も気をつけてあげてくださいね。
さみちゃんはオーナーさんにおっぱいを搾りながら経過を見ていくことになりました。

*乳房炎のまとめ

<原因>
乳房の中に病原菌が入り込み、乳汁中や乳腺で増殖することにより炎症が起きる。

<どんな時にかかりやすい?>
・乳房・乳頭に傷がある場合
・乳汁が長時間乳房内にたまっていた場合。
・死産あるいは子山羊が病気で哺乳出来ないとき。
・離乳後の乾乳期
・機械搾乳時

<症状>
・乳汁の異常(色が変わったり、かたまりが混じったり、悪臭をもつクリーム状。

おっぱいの様子
・乳房が腫れる・熱を持つ・痛みがある
・皮膚が赤色や暗紫色に変色する
・乳房全体が硬く腫れて、乳汁が全く出なくなるときもある。

*乳房に病変があっても食欲・体温など一般状態に変わりないことも多い。
急性の場合は全身性の発熱が見られる。

山羊の人工授精チャレンジ はじめに

山羊の診療にかかわることになって
治療以外にもう一つ
どうしてもわたしが達成したいこと
「現場でできる凍結精液の人工授精」

絶対無理とか必要ない・・・などなど
いろんな声はあるけれど

それでもやってみたいからやってみる
わたしの中に理由がある

牛の人工授精師さんのゆうきさんと院長先生と
挑戦することに決めました

はじめの目標はとにかく1頭受胎

果たしてビールで乾杯できる日はくるのでしょうか・・・

それでは、はじめます!!

山羊の人工授精チャレンジ

わたしたちのキロクとキオク

凍結精液の人工授精を目指して円陣

山羊の診療Diary 症例4「子山羊の跛行」

山羊の診療Diary 症例4「子山羊の跛行」

生後10日齢の女の子、はじめちゃんがあしを引きずっているという連絡がありました。
いつもよりミルクを飲む量が減っています。
最初にお熱を計って、全身状態の確認をします。体温は41.5℃でした。
山羊さんの平熱は39.5℃位なのでお熱があるようです。
次にはじめちゃんに歩いてもらいました。

やはり歩き方がいつもと様子が違います。
足を一本一本触って痛いところや骨折がないか確認します。
股関節が外れていないかも忘れずに確認。
骨折があるときは触ったときに非常に痛がります。
はじめちゃんの場合、
腰を伸ばしたときに痛そうな感じがみられました。
お熱があるので全身の感染症の可能性も考慮して抗生物質と痛み止めを注射しました。
次の日からはお薬を飲んでもらうことに。
足のびっこはまだ残るものの次の日には、食欲・元気が回復していました。

 

子山羊が足を引きずる原因

子山羊さんが足を引きずる原因として以下のようなものがあります。

原因)
①打撲やねんざ
②股関節脱臼
③骨折
④細菌感染による化膿性関節炎
⑤全身的な感染症・栄養障害

打撲やねんざの場合、安静にして消炎剤の塗布で数日で回復することが多いです。
股関節脱臼の場合は股関節をもとの位置に戻すことが必要なので
獣医さんに連絡してください。
骨折は固定できるところは副木などで固定します。骨の位置が大きく
ずれていなければ1か月くらいで骨はくっつき回復します。

 

子山羊はからだが軽く、骨折することが多いので注意が必要

若い山羊さんはからだが軽くて飛び跳ねた際に骨折することがよくあるので
注意が必要です。
また関節や全身の感染症で痛みが出る場合もあるので、痛そうにしている部分だけでを
観察するのでなく食欲や元気、お熱はないかなどからだ全体を観察してあげることが重要です。