Author Archives: Anne

山羊の削蹄講習会を開催しました

山羊の削蹄講習会を開催しました

12月の終わりに山羊の削蹄講習会を開催しました!

地域の山羊生産流通組合さん主催の勉強会の講師を
ゆうきさんと院長先生とを務めさせていただきました。

山羊の削蹄講習会の会場

今回のテーマは「山羊の削蹄」です。

(前回は「山羊の病気と繁殖について」お話しさせていただきました。)

 

山羊の蹄の構造と解剖について、削蹄の際に出血した場合の対処法、山羊の削蹄の基本と実際についてを実演講義

第1部では院長先生が

「山羊の蹄の構造と解剖について」と
「削蹄の際、出血した場合の対処法」についてお話しさせていただきました。

関連記事:
山羊の削蹄① 山羊の蹄の構造について

山羊の削蹄② 山羊の蹄の解剖について

第2部ではゆうきさんが
「山羊の削蹄の基本と実際について」
実演をしながらの講義を行いました。

はじめはゆうきさんの削蹄の実演。

削蹄の実演

保定法や道具など、いろいろな質問が飛び交いました。

関連記事:
山羊の削蹄③ ~削蹄の道具~

山羊の人工授精チャレンジ「保定台を作ろう!」

次に、実際に参加者のみなさんに削蹄をしていただきました。

参加者のみなさんで削蹄

院長先生と、削蹄をする参加者

実際に、削蹄をしてみると足の持ち方やハサミの角度など見ているより難しい~。

でも、一緒にやっているうちに少しずつできるようになっていき
参加者の皆さんが笑顔になっていきました。

 

講習会をきっかけに「自分の山羊の削蹄をしてみる」との声

診療で、山羊舎に伺うと蹄が伸びすぎて歩きづらそうにしている山羊さんをよくみかけます。

講習会の終わりには「お家に帰って、自分の山羊の削蹄をしてみる」という声があちこちから聞こえてきました。

この講習会がきっかけになり、山羊さんの蹄の手入れに目を向けて頂ければ
うれしい限りです。

良いお天気の中、たくさんの皆さんに参加していただき、
終始、なごやかな楽しい講習会になりました。

削蹄講習会の資料は今後このブログでご紹介していきたいと思います。

山羊の削蹄③ ~削蹄の道具~

*山羊の削蹄③ ~削蹄の道具~

今回は、削蹄の時に使用する道具のお話です。

前回の記事: 山羊の削蹄② 山羊の蹄の解剖について

山羊の削蹄では、ホームセンターなどで販売している
植木用剪定ばさみを使用します。

植木用剪定ばさ

そして、削蹄師のゆうきさんがお勧めなのが
盆栽用のはさみです。

盆栽用のはさみ

盆栽用のはさみで山羊の削蹄

このように、盆栽用のはさみは爪のカーブに沿っていて使いやすいです。
この間、開催された削蹄講習会でも皆さんに盆栽用を試していただいたら
使いやすいと評判が良かったですよー。
ホームセンターやネットで購入できるので探してみてください!

次回は、削蹄の基本についての削蹄講習会ご報告の記事です。

山羊の削蹄講習会を開催しました

山羊の削蹄② 山羊の蹄の解剖について

*山羊の削蹄② 山羊の蹄の解剖について

今回は山羊の蹄の解剖についてです。

前回の記事: 山羊の削蹄① 山羊の蹄の構造について

解剖を理解することで、より本来の蹄の形に近づく削蹄を行うことができます。
また、血管の走行を知っていると、削蹄時の出血に気を付けることができます。
特に先端を切るときに出血させてしまうことが多いです。

蹄の解剖を頭に入れて、削蹄の完成のイメージをしっかりできるようにしましょう。

山羊の蹄の断面図

山羊の蹄の断面図です。

山羊の蹄は、通常の状態では末節骨と蹄底が平行になっています。
これを完成のイメージにして削蹄をしましょう。

断面と通常の状態を並べた図

次に断面と通常の状態を並べた図です。

写真左の赤い部分までが血管が来ています。
ここまで切ると出血してしまいます。
蹄先部を切る長さは外側からは分かりにくいので、
バチンと一気に切るのではなく、徐々に削るように切ってみてください。

また、蹄の先が伸びると血管も伸びるような感じがしますが
正しくはある程度までは血管が伸びた蹄に引っ張られるということです。
だから、魔女の靴のようにとっても長く伸びてしまっても
先端までは血管が来ていないのである程度のところまでは
しっかり一気に切ることができます。

次回は削蹄に使う道具についてお話します。

山羊の削蹄③ ~削蹄の道具~

山羊の削蹄① 山羊の蹄の構造について

*山羊の削蹄① 山羊の蹄の構造について

山羊の削蹄について数回にわけてお話ししたいと思います。

今回は山羊の蹄の構造についてです。

山羊の蹄の構造は外側が硬く伸びが早く、内側が柔らかいお椀型の蹄になっており、
木や岩に登ることも得意です。

山羊の蹄の構造
木に登っている山羊さんや、崖の上に登っている山羊さんの写真をみたことは
ありませんか?

そして、山羊の蹄は、1ヶ月で約2mm伸びます。
そのため、雌は1~2ヶ月に1回、雄は1ヶ月に1回の頻度で削蹄をおすすめします。
これはあくまで目安です。生活環境によって、蹄の伸びる速さは異なりますので
蹄を確認してから削蹄を行ってくださいね。

次回は蹄の解剖についてお話しします。

山羊の削蹄② 山羊の蹄の解剖について

山羊のセリ市に行ってきました!

山羊のセリ市に行ってきました!

先日、沖縄県の南部家畜市場で行われている山羊のセリ市に行ってきました。
こちらの市場では、偶数月に山羊市が開催されています。
年6回の山羊のセリ市。今回は今年最後のセリでした。

上場頭数は248頭!今回は頭数が多いとのこと。
セリ市場に到着すると、車の中からでも
山羊さんたちのメーメーという声が聞こえてきました。
ワクワクする!!
牛のセリは毎月、私の住む島で行われており、仕事で行くことも多いのでおなじみですが
山羊のセリは初めてです。

さっそく、車を降りて市場へ場所へ行くと・・・
はじめに、山羊さんたちは順番に並んで、体重測定をしていました。
体重は番号の下に赤いマジックで書かれていました。

そして、山羊さんたちが繋がれている係留所へいくと・・・

わー。山羊さんがいっぱーい。
うれしくて、大興奮。
一緒に行った、ゆうきさんに「まずは、落ち着いて・・・苦笑」
と言われたものの目の前も頭の中も山羊さんでいっぱいになってしまいました。

深呼吸して、セリ名簿を見ながらセリが始まる前の下見で、
セリ落としたい山羊さんを探します。
今日は、私はボア種が入った女の子を山羊を探しに来たのです。

いろんな山羊さんがいます。

黒山羊さん。とっても可愛くて人に慣れています。
オーナーさんもいいこですよとお話してくれましたが、
男の子の山羊さんでした。

お化粧したみたいな模様の山羊さん。

茶色い山羊さんや大きい子から小さい子までほんとにいろんな山羊さんがいました。

その中で、私が一目ぼれした子はこの山羊さん

ボア種のF1の女の子です。(お父さんがボア種)
とても人に慣れていて、優しい顔をしていました。

オーナーさんにお話を伺うと、中学生の娘さんが大切に育てたとのこと。
成長過程の山羊さんの写真を見せていただきました。
写真をみて、大切に育てられたことがわかり、この山羊さんに1頭目は決めました。

そして、もう1頭。
体は小さめですが、かわいい山羊さんを見つけました。
ボア種のF2の女の子です。
県の畜産研究センターで育てられた女の子でした。

この2頭に決めて、いよいよセリがスタートしました。
セリの様子はこちらです。

順番が近づくと緊張してきました。
そして、はじめはF1のボアちゃん。どきどきしましたが、予算内でセリ落とせました。
次にF2の女の子。思っていたより若干値段が上がりましたが、
ことらもセリ落としました。
なんとか無事2頭セリ落としてほっと一安心。
オーナーさんに声をかけて、購入したことと大事にすることをお伝えしました。

セリが終わると、運搬屋さんが島に運ぶ準備をしてくれます。
トラックに乗せられて港に行き、船に乗って明日到着。

無事に島に来てねと山羊さんたちを送り出し、私たちも飛行機で帰りました。

次の日のお昼には、ゆうきさんのヤギ牧場に到着。
元気にごはんを食べていて一安心。
はやく、牧場のみんなになじめるといいなと思いました。

はじめての山羊のセリ体験でしたが、とっても楽しい一日でした。
山羊さん2頭も仲間に加えることができ大満足。
購入しなくてもいろんな山羊さんがいて、見ているだけでも楽しいと思います。
もし、機会があればぜひ山羊のセリ市に足を運んでみてください!

山羊の診療Diary 症例21 生まれたての虚弱子山羊

*山羊の診療Diary  症例21 生まれたての虚弱子山羊

今回の症例は・・・

今さっき、双子の子山羊が生まれたけど、
小さい方の子山羊さんがおっぱいを飲めていないみたいで、
弱々しいので来て欲しいと連絡がありました。

さっそく、伺って見ると・・・
かわいい子山羊さんが2頭生まれていました。
確かに、大きさに差があり、様子を見ていると大きい子山羊さんは
お母さんのおっぱいを力強く飲んでいますが、
小さい子山羊さんは、近くまで行くものの
おっぱいがなかなか飲めない様子でした。

乳を飲めない虚弱子ヤギ

お母さん山羊さんから、子山羊さんを預かって、
まずは全身状態のチェックからしました。

 

子山羊が低体温・低血糖でないか確認

聴診で心臓や肺の音を確認し、全身状態を確認しました。
大きな問題は見つかりませんでした。
そして、心配していた体温も平熱で、低体温は今のところ大丈夫そうです。
子山羊さんの病気で低体温・低血糖という病気があります。
(詳しくは・・・山羊の診療Diary症例3 子山羊の低体温・低血糖を読んでみてください)

低体温の検査を受ける子ヤギ

子ヤギがミルクを飲めているかどうかを確認する

体温の次は、オーナーさんが心配していた「ミルクを飲めていないのでは?」の確認です。
確認する方法は、お腹を下からからそっと優しく弾むように、揺らすように押してみます。
すると、ミルクがはいる第4胃を確認することができます。
そこが膨らんでいればミルクを飲めていることがわかります。

この小山羊さんは、いっぱいにはなっていませんでしたが、ミルクが入っているのが確認できたので
自分でも少しですが飲めていることがわかりました。

 

大きな子ヤギに負けてミルクを飲めないようなら、補助的に人工哺乳を

治療は小山羊さんにミルクの足りない部分を補い体力の余裕をつけてあげるためにブドウ糖のお注射をしました。
そして、オーナーさんに人工ほ乳のやり方をお伝えしました。

生まれてすぐは、お母さんの初乳をしっかり飲んで欲しいのですが、
大きな兄弟がいて、ミルクを飲めないと衰弱してしまうため、人工ほ乳を補助的にしてあげることもあります。
このこの場合も、小山羊さんを良く観察していただいて、
もし大きな子に負けて飲めないようなら、人工ほ乳で少しお手伝いしてもらうことにしました。

ブドウ糖注射される子ヤギ

ちなみに・・・
体温測定の写真に写っている
ほ乳瓶の赤い乳首は山羊さん用で、人間の赤ちゃん用のよりも長さが長く、細くなっています。
人間用のでも人工ほ乳できますが、
この赤い乳首は小山羊さんにくわえさせやすいです。
もし、人用のほ乳瓶が使いにくい場合は試して見てください!

治療が終わって、子山羊さんをお母さんに返すと、
子山羊さんは自分で懸命におっぱいを探していました。
ちょうど大きな子はお腹がいっぱいになって眠っているので
チャンスです。
オーナーさんと一緒に見守っているとどうにか、おっぱいをくわえられました。
これで一安心。後は、オーナーさんに観察をお願いすることにしました。

次の日、オーナーさんから連絡がありがんばっておっぱいを飲んでいて元気も出てきているとのこと。
このまま経過観察としました。
小さな子山羊さんも大きな子
山羊さんも仲良くこのまま元気に育ちますように。

みんなじぶんをみてほしい

ねこのはっちゃん

やぎぼくじょうにくらしてる

やぎさんのおせわのときも
やぎさんのちりょうのときも
いつも
にゃーにゃーにゃーにゃー
やってくる

やぎさんじゃなくて
ぼくをみて

はっちゃんは
はっちゃんをみてほしい

きっと
あなたもわたしも
みんなじぶんをみてほしい

そして
ほんとうは
じぶんだけをみてほしい

おしごとおわったよ
すわって
すこしやすもうか

はっちゃんおまたせ
おひざにどうぞ

ごろごろごろごろ

すなおになったらいいんだね
すなおにいったらかわいいね

出産ラッシュ

ゆうきさんの牧場では出産が続いています。
11月29日にあめちゃんが、男の子の山羊さんを出産しました。

あめちゃんは、前回の出産ではふたごの男の子を生んで上手に子育てしていた
ベテランお母さん。

今回も、子山羊さんに上手におっぱいをあげています。

子山羊に乳を与える母ヤギ

11月30日には、はなちゃんが、男の子の山羊さんを出産しました。

今シーズン初の子山羊さん誕生。初乳の重要性

はなちゃんは前回、育児放棄をしていたので心配していましたが、
今回はどうやら大丈夫そうです。
そういえば、前回の出産は大きな女の子の子山羊さんで、分娩介助が必要でした。
今回は、出産も自力でがんばりました!おつかれさまー。

乳をやる母ヤギ

現在、ゆうきさんの牧場は3頭の子山羊さんがいます。

南の島も12月に入り、風が冷たくなりました。
今日の夜は冷え込むからと、ゆうきさんが保温ランプをセットしました。
私も、いつもより多めに乾草を床に敷いて寒い夜の準備は完了。
ふかふかの乾草の上ですやすや眠る子山羊さんの顔を確認したら、
今日のお仕事はこれでおしまい。気がついたらあたりはもう真っ暗。
季節がめぐって、みんなと初めて会った冬がきたんだね。

お母さん山羊さんと一緒に子山羊さんたちが元気に育つように、わたしたちもがんばるよ。
明日もみんなの元気な顔が見られますように。

全国山羊サミットin山梨に参加しました。山羊の病気・人工授精・削蹄講習会を発表

11月23日と24日に山梨県で開催された第21回全国山羊サミットに参加しました!!

今回、この1年ブログでまとめていた山羊の病気と人工授精について、
また近々、開催予定の山羊の削蹄講習会の資料を発表させていただきました。
発表に至った経緯には2つの想いがありました。

1つめは山羊の飼い主のみなさまに日常に起こる病気の診療についてお伝えしたいという想いです。

2つめは全国的にも山羊の診療をしてくれる病院や獣医師が少ないということから、
症例や治療を発表することで、病気の山羊さんの治療を受け入れてくれる獣医師や病院が増え
山羊の飼い主のみなさまの安心に繋がればという想いです。

会場の一画にブースを作らせていただいて、ポスター発表のほかに、
「山羊の健康相談」と「山羊の削蹄相談」を設けました。

全国の山羊の研究の先生方、山羊の飼い主様とお会いすることができ
私たちもたくさん学ばせていただきました。
これからの診療、研究につなげていきたいと思っています。
この場をお借りして御礼を申し上げます。
ありがとうございました!!

山羊の人工授精チャレンジ MMNS第1クール③ ついに・・・

山羊の人工授精チャレンジ MMNS第1クール③ ついに・・・

前回の記事はこちら。山羊の人工授精チャレンジ MMNS第1クール②(発情同期化を使った人工授精プログラム)

今回は11月3日までのMMNS第1クールのまとめです。

*山羊Aちゃん
2回の発情同期化(MMNS)と人工受精をするものの残念ながら妊娠していません。
今日から3回目のMMNSをはじめました。
もしこれで妊娠しなかったら、次の方法を検討しようと思っています。

*山羊Cちゃん
1回の発情同期化(MMNS)と人工受精を実施。
今日から2回目のMMNSをはじめました。

*山羊Bちゃん
1回目の発情同期化(MMNS)と人工授精を実施。
その後、30日の妊娠鑑定(-)後に発情が見られたので、
発情同期化はしないでそのまま人工授精を実施しました。

そしてついに!!
11月3日の40日の妊娠鑑定で、妊娠を確認しました。

妊娠確認のエコー写真

人工授精チャレンジ、初妊娠!!

超音波での画像を見たとき、とてもとてもうれしかったです。

Cちゃんの分娩予定日は山羊さんの妊娠期間は5ヶ月なので、2020年の2月25日です。
このように、分娩予定日がわかるとお産の心構えができ観察ができるので、
分娩事故を減らすことに繋がります。

残念ながら、発情同期化での妊娠ではなく自然の発情での妊娠でしたが
何はともあれ、現場での凍結精液での妊娠は一歩前進。

そして、発情同期化のMMNSは、現在経過を見ながら
海外文献を調べてお薬の量を再検討したり、
他の発情同期の論文を取り寄せて新たな方法も検討しています。

全部の山羊さんが妊娠して卒業できますように。