ご存知の通り、動物の体には、血液が流れています。
しつこいようですが、勝手に流れているのではありません。生体が流していると意識してください。
さて、生体はどのようにして血液を全身に循環させているのでしょうか。その調節機構を確認していきましょう。
まずは基本的な構造と機能の確認です。
血管の構造
動脈も静脈もゴムホースのような伸展性をもった管ですが、動脈は厚いゴム様、静脈は薄いゴム様で静脈の方が20倍も伸びやすく出来ています。標準生理学486
容量は静脈系が循環血液量の75%、動脈系が20%、毛細血管網が5%を収めており、静脈圧を変化させることで循環血液量の調節を行っています。標準生理学P543
静脈流
心臓から一番遠く、心臓に戻る血管が静脈ですが、静脈環流の主な駆動力はやはり心臓が押す力です。血液は心臓の圧力に押されて心臓に流れ込みますが、それを補助する力として①筋ポンプ②呼吸ポンプ③心臓の吸引作用があります。
静脈には逆流防止の弁がついており、筋肉の隙間を走る静脈を筋肉の運動によって圧迫すると、弁のおかげで血液は1方向にのみ流出します。そして筋肉の圧迫が解けると、1方向からのみ流入します。こうして筋肉少しずつ血液が運ばれていく構造が筋ポンプです。
腹腔内の圧力は息を吸うとき上がります。この時腹腔内にある静脈では、筋ポンプで押されるのと同様に心臓方向、胸腔方向に血液流出が起こります。続いて息を吐くとき、腹腔は圧力が下がり、末端からの血液流入が起こります。同時に胸腔では圧力が上がり、き胸腔内の血液は心臓にむかって流出します。この作用を呼吸ポンプといいます。
心臓が血液を駆出するのは心室の心筋が収縮する力によりますが、その収縮が解けると、心筋の弾性により静脈からの血液を吸引します。この力が心臓の吸引作用で、これも静脈環流を助ける力として働きます。標準生理学p545
心拍動を引き起こす信号
心臓には、周期的に電気信号を発して拍動のタイミングを決める洞房結節という場所があり、その信号をどう伝えるかを決める房室結節という場所があります。この信号の発射と伝達を調節することで、心臓の拍動を調節しています。
心臓は拍動するたびに、心筋の強い収縮とともに血液を動脈に押し出しています。
動脈流
全身から集まった血液は心臓から肺に向かって拍出され、ガス交換を終えて一旦心臓に戻ります。それから改めて大動脈内に拍出され、一気に全身の末梢組織に流されていきます。血液が動脈に入ると、動脈内の血液は心臓の力で流されます。
大動脈は弾性血管とも呼ばれ、全身に血液を届けるために心臓が強く収縮する圧力を血管の弾性で受け止めています。血管の弾性がなければ心拍出が直接血管内に伝わり、高圧と低圧の差が激しく繰り返すことになりますが、この弾性により内圧の変動を減らすことができ、結果として末梢組織への血流が平滑化されます。標準生理学486
心臓から血液が出てしばらくはこの弾性血管が拍動を受けとめて平準化していますが、組織の直前まで拍動は完全になくなるわけではありません。
動脈は大動脈から分岐を繰り返し、遠くの組織に行くほど細くなり、抵抗が増します。血管が細くなるということは、それだけ血液が通り難くなるということで、この通り難さを血管抵抗といいます。
心臓から遠くなり組織に近づくにつれ、動脈はさまざまな組織に血液の分配を調節することができる構造になり抵抗血管と呼ばれます。抵抗血管には平滑筋が増え、内腔を拡げたり狭めたりすることで通り難さを調節することができます。動脈が心臓から一番遠く細いところを、細動脈といいます。
毛細血管
その先は組織内を走る毛細血管です。
毛細血管には平滑筋がありません。
毛細血管は赤血球がギリギリ通れるくらいの細さで、組織細胞の間を通ります。血流の速さは毛細血管で最も遅くなります。
毛細血管における血流の速さと血管内外の物質交換速度は動脈血圧と静脈血圧の差に影響を受けます。
リンパ流
リンパ管は組織間質(細胞の間、毛細血管の外)に開口して、血管壁を通過できない高分子の老廃物や細菌などの不要物を回収します。また血圧によって毛細血管から滲み出た血漿(血球以外の液体部分)を回収し、リンパ管を伝って心臓まで運びます。
このリンパには、血管内に入れたくない大きな老廃物や、外傷などで感染した細菌などの病原体が含まれます。リンパ管には要所ごとにリンパ節が設置されており、ここに免疫細胞が待機して危険なものを通過させない関所のように機能しています。
例えば後肢の外傷により細菌が侵入すると、膝下リンパ節、鼠径リンパ節において感染が身体の中心部に拡大するのを防いでいます。
心臓と血管の構造を理解したら、次回は血圧と循環の調節についてお話しますね。