山羊の診療Diary 症例14 子山羊の斜頸 ~腰麻痺疑い~

*山羊の診療Diary  症例14 子山羊の斜頸 ~腰麻痺疑い~

今回の診療は・・・

子山羊のさしみちゃんが立てなくなったという連絡がありました。

さしみちゃんは、生後40日齢の子山羊さんです。

現場に向かいお話をオーナーさんに伺ってみると
食欲はあるものの、立てずにうずくまっているということでした。

うずくまる子山羊

診察してみると・・・

熱 39.3℃
咳やくしゃみなし
触診で肢に骨折やケガなど運動器の異常なし
斜頸(頭が片方に傾いている)
食欲あり(草を手であげると食べる)
脱水 なし

聴診 頻脈
腹部膨満なし
便確認 問題なし

さしみちゃんを支えて立たせてみると・・・
ふらふらとはしていましたが、立って歩くことはできました。
しかし、顔を斜めに傾けている(斜頸)の症状が見られました。

斜頸の症状がある子山羊

 

子山羊に「立てない」という症状があらわれる病気。腰麻痺は斜頸の形で症状が現れることがある

子山羊さんで「立てない」という症状があらわれる病気は

  • 低血糖
  • 腰麻痺
  • 骨折や捻挫など後ろ脚の異常
  • 胃腸の病気
  • 発熱

などがあります。

腰麻痺は名前からイメージすると、腰や後ろ足の麻痺だけのように感じますが、
神経が損傷された部分に症状が出るので、今回のように斜頸という形で症状が現れることがあります。

腰麻痺疑いの子山羊
また、さしみちゃんはまだ40日齢の子山羊さんですが、
腰麻痺は感染してから2週間から1か月で症状が現れるので、
腰麻痺を十分疑える状況でした。

 

腰麻痺の詳細については、山羊の診療noteにて說明をしています。

山羊の診療note6 ~腰麻痺(脳脊髄糸状虫症)について~

 

子山羊の腰麻痺への治療内容。早期の駆虫剤の投与と、神経症状が改善するまで間の看護がとても重要

そこで今回の治療は・・・

イベルメクチンの投与

現時点で可能性が高い病気が腰麻痺のため、
駆虫剤としてイベルメクチンの投与をおこないました。
これは症状が出ているため3日間続けます。

ブドウ糖の静脈注射

食欲はあるというもののいつもより量が少ないので食欲刺激のため、
また、子山羊さんは体調不良の時に低血糖を起こしやすく、
低血糖がさらに病状を悪化させるため、ブドウ糖の投与を行いました。

抗生物質の注射

微熱があったので感染症の可能性も考え注射をしました。

抗炎症剤の注射

腰麻痺による神経損傷の炎症を抑えるため注射をしました。

 

腰麻痺には、早期の駆虫剤の投与と神経症状が改善するまで間の看護がとても重要

症例12の大人の山羊さん同様、
腰麻痺疑いの場合、早期の駆虫剤の投与と
神経症状が改善するまでの間の看護がとても重要になってきます。

*山羊の診療Diary  症例12  山羊の起立不能(初診) ~腰麻痺疑い~

山羊の診療Diary 症例12-2 山羊の起立不能(経過)~腰麻痺疑い~

さしみちゃんの場合、まだ生後40日齢の子山羊さんなので、
栄養状態を維持してあげることが必要です。
頭が傾いている斜頸の状態、そしてふらふらしているので
お母さんのおっぱいを吸えていない可能性が高いです。
また草だけでは、この月齢の子山羊さんは元気ではいられません。
そのため、オーナさんには人工ほ乳をお願いしました。

続く・・・

続きの記事: 山羊の診療Diary 症例14-2 子山羊の斜頸(終診)~腰麻痺疑い~

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